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「好きすぎ」
「快斗いつまで居んの?」
兄貴が聞くと、快斗はんー、と考えて。
「一応、来週の水曜に帰る予定」
「りょーかい。夕飯うちで食べんの?」
「そう」
「じゃそん時またな。オレちょっと出かけてくるから」
「はーい」
「じゃあな、愁」
兄貴はぐしゃぐしゃとオレの頭を撫でてから、部屋を出ていった。
「……んー……快斗?」
「うん?」
「兄貴て……どういう意味で、言ってるの?」
「好き?てやつ?」
「うん」
「宗兄はねー――――……」
「……」
「ほんとさすがでさ――――……ずっと昔から、知ってんだよね」
「え゛」
「結構前にバレたっていうか」
「……結構前って?」
「……中3だったかな? オレが考えて悩んでる時に突っ込まれて……」
「――――……」
「まあそん時はオレ、認めてないけど」
「……」
兄貴には勝てない。どうしても逆らえない。なんでもバレる。という感覚がちっちゃい頃から、ずっとある。まあ……その分、助けてもくれるんだけど。
にしたって、そんなのまでバレる……?
もう、兄貴、怖いな。
「兄貴って……今どうなってるかも知ってんの?」
「うん。 さっき聞かれた」
「……何て言ったの?」
「もう宗兄には隠せないから…… 告白して、返事待ちって言った」
「――――……キス……したとかは?」
「それは言ってないよ」
「兄貴は…… 賛成してる?」
「まだ返事待ちだっていってあるから――――……でも、反対はしてない。 頑張れって」
……弟が男に告られてるのに、その相手に頑張れって。
やっぱり兄貴は謎すぎる。
まあ……相手が、快斗だから、なんだろうけど。
「兄貴って……頼りになるけど……やっぱり怖いなー……きっとオレのことなんて、全部バレてる……」
快斗は、ぷ、と笑って、よしよし、とオレを撫でた。
「……オレの気持も、もしかしたら兄貴のが分かるかも?」
「んん?」
「オレが分かんないのも、兄貴なら、ズバって答え出してくれそう」
「そうかもだけど…… オレは愁に考えてほしいからな?」
クスクス笑う快斗に、あ、それはそうだよね、と頷く。
兄貴は…… オレが、快斗と付き合うの、頑張れって思うんだ。
――――……てことは、オレが快斗を好きだと思ってるのかなやっぱり。
……まあさ、ほんとにほんとにほんとに、大好き……なんだけどね。うん。
「……ね、快斗、おなかすかない?」
「ん。何か食べる? 買いに行く?」
「うん。いこ。なんか朝の散歩しか動いてないし」
「OK。いこ」
すぐ立ち上がる快斗。
「ほら、愁」
手を差し出されて、その手を掴むと、ぐい、と引かれて、立ち上がらせてくれる。手、繋がれてるから、立ち上がるとすぐ近くに快斗の顔。一瞬、ちょっと、どき、として、退くと。
「――――……愁、可愛いな……」
ふ、と笑われて。
くしゃ、と頭を撫でられる。
ごく自然に言われるちょっと恥ずかしいセリフと、頭撫でられるのも、ただ嬉しいだけの自分。
うーん。オレって……快斗、好きすぎる気が……。
二人で階下に降りて、飲み物のトレイを、リビングの母さんに渡す。
「ごちそうさまー、母さん、ちょっと出てくるね」
「ごちそうさまでしたー」
「はいはい。どこいくの?」
「ちょっとおやつ?買いに」
「いってきます」
母さんに見送られて、二人玄関から外に出た。
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