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「パンク」

「――――……昔からだよな」 「え?」 「愁が、オレを、じーっと見てんの」 「――――……うん」  そうだね。だって、好きなんだもん。  ……って、はっ。 ……気持ち悪い? 「え、何その顔。どした?」  快斗がクッと笑いだす。 「……見すぎで、気持ちわるいかなって一瞬……」 「んな訳ないじゃん。バカだなー、愁」 「……気持ち悪くない?」 「それ、本気で言ってんの?」 「――――……だって、見すぎだったかなって」 「あのさー。愁がオレの顔好きだっていうから、オレ、この顔で良かったなーとかまで思ってるのにさ。 愁が見てる事を気持ち悪いなんて思う訳ないじゃん」 「――――……」  ………いや。  なんか、快斗って、ほんと、たまに何言ってるか、分かんない。 「……オレがもしも、快斗の顔に生まれてたら」 「うん?」 「モデルとか芸能人とか、目指したなー、絶対」 「――――……オレに、そういうのになってほしいの?」  快斗は、ん?と首を傾げて聞いてくる。 「……いや。なってほしくない」  今まで以上に、快斗の事を好きな奴が増えてしまう。 「ふうん?まあ、オレはなりたくないから、いいけど」  ……ほっ。よかった。   「つか、ほんと、全然集中してないだろ、愁」 「……うん。してなかった」 「休憩いれる?」 「今もやってなかったから休憩の続きって感じだけど……」  言うと、快斗は苦笑い。 「愁、何考えてたの?」 「んー……快斗のこと見てて……」 「うん。見てたのは知ってるけど」 「――――……快斗……」 「うん」 「――――……オレ考えすぎなのかな……」 「うん?」 「……頭で考えすぎてて、もう意味が分かんなくなってるのかも」 「――――……?」 「……快斗、オレのこと、ほんとに、好きなの?」 「うん」 「……これからもずっと、好きでいてくれると、思う?」 「もーすでに、10年位好きだからな……愁以上に好きになれる子、出てくると思わないんだけど……」 「……会った時から数えてる?」 「うん」  ふ、と、笑う快斗。 「会った頃のは違うだろ??」 「……まあどう好きかに気づいたのはずっと後だけど、ずっと一番好きなのは愁だったよ。だから10年以上」 「――――……」  ……なこと言ったら、オレも、10年以上、ずっと快斗が一番好きだな。 「……なあ愁?」 「ん……?」 「オレ、ずーと、友達の振りして、一緒にいることも考えたよ」 「――――……」 「……別れる事もないし。振られる事だってないし。それもありかなとも思ったからさ」 「――――……」  うん。友達の方が楽。だよね。  分かる。 「……でも、愁に恋人とか結婚相手ができるのが、絶対無理って思って。  そしたら、オレが恋人になるしかないじゃんて、思ってさ」 「……んーー……んーーー…… ……   ……なんかますます考えることが増えたー……」  快斗に恋人。結婚。  ……オレ、おめでとうって思っちゃうかも。  よかったね、って思うかも。  でも、寂しいのは、確実。  でもその寂しいは、友達でもある気持ちな気がする。  ……もう無理だー。  頭がパンクするー……。  ――――……快斗がカッコよくて、優しくて、一緒に居ると安心して、楽しくて、もう好きすぎて、ずっと一緒に居たい。  て、気持ちに従えばいいのか。  ――――……現実問題として、こんなカッコいい人と、これから先ずっと居れる訳ないと思っちゃうし、だとするなら、最初から始めない方がいいんじゃないだろうかっていう、 臆病すぎる自分に従った方がいいのか。  後者を言ったら、怒られちゃうかな。  快斗を信じてないというよりは  ……オレが自分にそこまでの価値を見いだせない、というか。

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