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考えない方」

「――――……?」  ふと気づくと、快斗が隣に来てて。  見上げた頬に、触れられた。  どき、と心臓が弾む。 「まあさ、考えてほしいけど――――……考えすぎて、訳わかんなくなるなら……」 「――――……」 「……逆に考えない方に行く?」 「――――……?」  考えない方……?  見上げてた唇に、ゆっくり、唇が触れてきた。 「――――……嫌? 好き? どっち?」 「――――……っ」  ちゅ、とまた触れる。 「――――……どっち?」 「……好き……」  快斗が、すごい近くで、優しく、笑う。  ……こんなの、好きに決まってるじゃんか。 「オレ……本気で手出さないって決めてきたんだけど…… こういう感覚で決めてもらうんでも、良い気がしてきた」  ふ、と色っぽく、笑う。 「もう何も考えられなく、してあげようか?」 「――――……」 「考えられないまま、ずーっと、オレと居れば、良いんじゃない?」 「――――……」  優しい瞳を見てると、それも、いいかもしれない……。  なんて思ってしまう。 「――――……なんてな」  快斗は、くす、と笑いながら、オレから少し離れた。 「……そんなことは、できないけど、ね」  その言葉と、離れた体温に、ドキドキしてた心臓が急に、静かになった。 「……快斗……?」 「それで愁がオレのになってくれて、一生居てくれるならいいけどさ。――――……これ、きっと、うやむやにしちゃ、ダメだよな?」 「――――……」  快斗はそんな風に言って、柔らかく笑って、オレの頭を撫でた。 「――――……快斗、あの……オレ……」 「ん?」  それで快斗のになって、快斗の側に一生居ても……良い気が……。  うやむやとかじゃなくて――――……  ほんとにオレ達が、そんな行為が出来て、それで本当に快斗が、オレでいいなら、それでも、良いって……。 「あの――――オレさ……」  その瞬間。 チャイムとともに、兄貴の声。 「愁ー!快斗―! 飯だってよー」  ……チャイム鳴らして、インターホン出てないのに、何で叫ぶんだ。  そして全部聞こえるでっかい声。  く。兄貴……。 「宗兄、ありがと、勉強道具片づけたら、すぐいくね」  快斗が玄関を開けて、兄貴にそう言いに行き、すぐ戻ってきた。机の上に広がったものを片付けながら、快斗はオレを振り返り。 「愁、今何言おうとしてた?」  ……邪魔が入って、こんながちゃがちゃした雰囲気で言えるようなことじゃない……。 「――――……忘れちゃった……」 「そっか。じゃ思い出したら教えて」  苦笑いとともに快斗がそう言って。  オレは、なんかどっと疲れて、頷いた。

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