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「恋人として」
夕食を終えて、快斗の家に戻ってきてすぐだった。
シャワーを浴びに行く準備をしてたら、快斗が、オレを呼んだ。
「なあ、愁」
「ん?」
「ちょっと来て、座って」
「うん」
ソファに座ってた快斗の目の前の床に、すとん、と座った。
「明日のこと、決めた」
「あ、うん。 なに?」
嬉しそうに笑う快斗に、なんだかワクワクする。
「――――……オレと、デートしてよ」
「……デート?」
「遊園地、行こ。朝からプールで遊んで、遊園地で遊んで……一日、デート。 それでいい?」
「いいよ。楽しそう。あ、快斗、水着持ってきてないでしょ? いまから駅前、買いにいく?」
「プールに売ってるだろうからそれでいいよ」
「そっか」
「愁、お願いがあってさ」
「うん?」
マジメな顔をするので、じーっと、見上げると。
「オレとさ。一日だけ、恋人になってよ」
「――――……恋人?」
「明日、一日だけでいいから。付き合ってたらこうする、みたいな感じで、オレと過ごして?」
「――――……えっと…… どう、すれば……??」
「んー…… まあそこは臨機応変に。 オレにあわせてくれればいいよ」
「……」
「ほら、なんかこう……エロイ事して考えさせなくするのもありとか言っちゃったけど……なんか、もっと健全にいこうかなと」
「うん……?」
「オレと付き合ったらこんな感じでデートするって。イメージしやすくして、帰ろうと思ってさ。愁が嫌がることは絶対しないから」
優しく笑う快斗を見上げて。
嫌がることはしないなんて、わざわざ言わなくてもいいのに、と思う。
「そんなの、分かってるよ。――――……うん。分かった。じゃあ、明日は、恋人として、デート、する」
「ん」
ふ、と快斗が瞳を緩める。
「キスだけ、解禁にしてくれると嬉しいんだけど」
「んーと……。うん、いいよ」
「……いいの?」
「だってキスは、もう何回かしちゃってるし。……嫌じゃないから」
思ったままに答えると、快斗はふ、と笑って、オレの頬をすり、と撫でた。
「ん。じゃあ明日、よろしく」
「うん」
「とりあえず、お風呂はいっといで」
「うん」
ぐりぐり、と頭を撫でられて、送り出された。
シャワーを浴びながら、考える。
えーと……恋人?
……キス解禁?
――――……今と、何が違うんだろ。
今だって、快斗はずーっと優しくて、ずーっと好きとか言ってて。
くっついてて……。
快斗に合わせればいい、とか……
オレ、どうすればいいのかな?
快斗と――――……恋人か。
ちょっと、ドキドキする。
「恋人」という、表現に。
……恋人、かあ。
――――……だから、今と……何が違うんだろ???
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