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「優しい空間」
シャワーを浴び終えて、快斗の元に戻る。
「オレも浴びてくるね。水飲んで」
水の入ったグラスがテーブルに置いてある。
「……ありがと」
「ん」
返事しながら快斗がバスルームの方へ消えていく。
椅子に腰かけて、水を飲む。
「――――……」
快斗はいっつもオレと居て、オレに優しく構いながら生きてきた気がする。
――――……いつからだったんだろ。オレの事、好き、とか。
出会った頃の事は、そんな細かいことまで覚えてない。でも快斗の印象は、出会ってからずーっと、同じ。
ずっと側に居てくれて。
ずっと、優しい。
喧嘩したこと……あったかなあ。 オレがなんかぶつぶつ言ってたことはあった気がするけど。
快斗に怒られたこととか。あったっけ。
さすがにこんだけ居たらあったよな? ……思い出せないけど。
忘れちゃったのかな、オレ……。
うーん……思い出せない。
お互いシャワーを浴び終えてから。
明日の為に勉強開始。
さっきちゃんとしてなかったから、必死で。
途中、ふと、快斗が自分を見てることに気がついた。
「なに?」
「……ン、別に」
短い会話のあと、また勉強してたら、快斗がまた見てる。
顔を上げると、目が合う。
「……快斗?」
「――――……気にしないで、勉強してて」
「……気になるし」
「ちょっと、見てるだけだから」
「……」
少しだけ、なんとか耐えて、勉強に集中しようと試みたのだけれど、結局無理だった。
「あの、快斗。 ……見ないで」
言うと、快斗は、クッと笑いだした。
「愁だって、さっきオレのこと見てたじゃん。おあいこ」
なこと言ったって、こっちは。緊張するし、しょうがないじゃん。
「――――……勉強できないから、見ないでよ」
「……はいはい」
快斗が優しく笑って頷く。
快斗と居ると。
いっつも、空間が優しくて。
大好き。だったよなぁ。ずっと。
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