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「優しい」

 それから、視線を感じることなく、しばらく一生懸命勉強する。  なんだろ、この問題。  ――――……うー、わかんないな……。  肘をついたまま、しばらく悩んで。  がく、とうなだれた瞬間。 「……どれ?」  クスクス笑いながら言って、快斗が隣に来てくれた。 「――――……愁がやった式、途中まではあってるよ」 「どこまで?」 「どこまであってると思う?」  うーん、としばらく考える。 「――――……ここからよく分かんないで書いてるから……ここまで?」  シャーペンで指すと、ふ、と快斗が笑う。 「そう。何が違うと思う?」 「……んー……それがわかんない」  快斗が教科書を持ち出してきて。  この問題やってみて、と言う。言われるまま解く。  そしたらこっち。と。 それも解いて。  やってる途中で、あ、と思って、さっきの問題に向き合う。 「――――……できた」 「ん、おっけ」   快斗がよしよし、とオレを撫でて、また席に座った。  快斗の教え方ってほんと優しい。  ……快斗が居て、一緒に勉強してたから、快斗と同じ高校入れた気がするもん、オレ。  もしかしたら快斗ならもっと上の高校行けたんじゃないかと思うのだけど。オレの希望校を最大限上に設定させて、でもって、そこを、二人で決めて、受けた。まさかその高校を、一緒に卒業できないとは思わなかったけど。 「ありがと、快斗」 「ん。その後ろの一問、やってみな?」 「うん」  頷くと、ふ、と笑う快斗。 「……できたよ」 「ん」  視線をこちらに流して、頷いてくれる。  あ。こういう時。  いっつも快斗のこと、好きだなって、思う。  快斗が、めちゃくちゃ優しい瞳でオレを見て、笑顔な時。  安心する。  快斗が友達でよかったなー、と思い続けてきた。  のだけれど。  ――――……今は。  どき、と胸が震える。  自分のこの自然な、反応だけで。  ――――……快斗のこと、どう思ってるか。  変わってきてるのが、自分で嫌と言うほど、分かってしまう。

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