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「受験」
あ。そういえば。
なんとなく気になってたけど、聞かずにきたこと。聞いてみる事にした。
「なあ、快斗?」
「うん?」
「快斗って、受験、どこで受けるの?」
そう言ったオレに、 ふっ、と視線を上げて。
快斗がまっすぐ、見つめてくる。
「それも、やっと聞いたなー……」
快斗のセリフに、え。と首を傾げる。
「……気になんないのかなーとか。いつ聞くのかなーって思ってた」
クスクス笑って。
「今んとこ、どっちの大学も志望に入れてるよ」
快斗はそう言った。
「……こっちにくる……かもしれないの?」
「大学生になれば、一人暮らしオッケイくれそうだから。この家に住めばいい訳だし」
何だか急に、すごく嬉しくなる。
だって、てことは、来年の春には、この家に、快斗が帰ってくるかもしれないってことだし。
「……でもちょっと迷ってる」
「……?」
「向こうで受けるかもしんない」
「……そうなんだ……」
……そっか。……うん。
――――……父さん母さんは向こうだし。今の友達は向こうだし。
……そうだよな。
特に、何も言えないまま、再び、勉強に向かう。
……けど。全然、身が入らない。
……迷ってる。 ――――……何を?
こっちに帰ってくるか、向こうで受けるか。それって……。
「……快斗」
「ん?」
「……迷ってるのって、オレのこと、関係ある?」
ふっと顔をあげた快斗が、じっとオレを見つめて。
――――……クッと笑いだした。
「直球すぎ」
何が面白いんだか、めちゃくちゃ笑われてる。
「なんでそんな笑うんだよ」
「オレ、お前のそういうまっすぐなとこが好き」
「……ちょっと馬鹿にしてるでしょ」
「してないよ?」
「そんな笑いながら言われても」
「……してないって。 大好きだよ、愁」
快斗が、もう、息を吸うみたいな。ものすごく自然な感じで、「大好き」と言ってくる。
クスクス笑って気が済んだらしい快斗は。
ごめん、と言いながら、ふ、と息をついた。
「まあ、愁のことも、色々考えはするよ。当たり前だろ?」
すこし、まじめな声で、快斗が言う。
「だめだった時のことも、オッケイだった時のことも考えるし。いつ返事が決まるかもあるし。あとは、行きたい大学と、親とかのこともあるし。全部一緒に考える感じ」
「――――……オレ返事できてないけどさ……」
「……ん?」
「オレは……快斗に帰ってきてほしいな」
「……またそういうこと、言うからな」
「だって……」
「オレだってずーと、愁のそばに居たいけどさ……まあ。色々考えるの、わかるだろ?」
「うん……」
「まあとりあえず……そっちはまだ考える時間あるからさ。また話そ」
「……ん」
頷くと、にこ、と笑う快斗。
やっぱりオレ、この笑顔と
ずっと、居たいって。
いつも思っちゃう、な。
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