45 / 58

「受験」

 あ。そういえば。  なんとなく気になってたけど、聞かずにきたこと。聞いてみる事にした。 「なあ、快斗?」 「うん?」 「快斗って、受験、どこで受けるの?」  そう言ったオレに、 ふっ、と視線を上げて。  快斗がまっすぐ、見つめてくる。 「それも、やっと聞いたなー……」  快斗のセリフに、え。と首を傾げる。 「……気になんないのかなーとか。いつ聞くのかなーって思ってた」  クスクス笑って。 「今んとこ、どっちの大学も志望に入れてるよ」  快斗はそう言った。 「……こっちにくる……かもしれないの?」 「大学生になれば、一人暮らしオッケイくれそうだから。この家に住めばいい訳だし」  何だか急に、すごく嬉しくなる。  だって、てことは、来年の春には、この家に、快斗が帰ってくるかもしれないってことだし。 「……でもちょっと迷ってる」 「……?」 「向こうで受けるかもしんない」 「……そうなんだ……」  ……そっか。……うん。  ――――……父さん母さんは向こうだし。今の友達は向こうだし。  ……そうだよな。  特に、何も言えないまま、再び、勉強に向かう。  ……けど。全然、身が入らない。  ……迷ってる。 ――――……何を?  こっちに帰ってくるか、向こうで受けるか。それって……。 「……快斗」 「ん?」 「……迷ってるのって、オレのこと、関係ある?」  ふっと顔をあげた快斗が、じっとオレを見つめて。  ――――……クッと笑いだした。 「直球すぎ」  何が面白いんだか、めちゃくちゃ笑われてる。 「なんでそんな笑うんだよ」 「オレ、お前のそういうまっすぐなとこが好き」 「……ちょっと馬鹿にしてるでしょ」 「してないよ?」 「そんな笑いながら言われても」 「……してないって。 大好きだよ、愁」  快斗が、もう、息を吸うみたいな。ものすごく自然な感じで、「大好き」と言ってくる。  クスクス笑って気が済んだらしい快斗は。  ごめん、と言いながら、ふ、と息をついた。 「まあ、愁のことも、色々考えはするよ。当たり前だろ?」  すこし、まじめな声で、快斗が言う。 「だめだった時のことも、オッケイだった時のことも考えるし。いつ返事が決まるかもあるし。あとは、行きたい大学と、親とかのこともあるし。全部一緒に考える感じ」 「――――……オレ返事できてないけどさ……」 「……ん?」 「オレは……快斗に帰ってきてほしいな」 「……またそういうこと、言うからな」 「だって……」 「オレだってずーと、愁のそばに居たいけどさ……まあ。色々考えるの、わかるだろ?」 「うん……」 「まあとりあえず……そっちはまだ考える時間あるからさ。また話そ」 「……ん」  頷くと、にこ、と笑う快斗。  やっぱりオレ、この笑顔と  ずっと、居たいって。  いつも思っちゃう、な。

ともだちにシェアしよう!