48 / 58

「何されても?」

「愁、手、貸して」 「え? 手?」  そっと手をあげて、快斗の方に向けたら。  きゅ、と手を握られた。 「……これ、嫌?」 「――――……ううん。 ……ドキドキ、する」  そう言うと、快斗はオレをマジマジと見て。それから、苦笑い。 「……ドキドキするとか、言っちゃうんだもんな……」  あ、確かに、と思って黙るオレに、クスクス笑う、快斗。  手をつないだまま、しばらく、無言。 「あのさあ、愁」 「……うん?」  快斗を見るけど、快斗はオレを見ずに、天井の方を見たまま。 「愁はさ、謝んなくていいよ。オレが勝手に言い出した事で、お前はただ一生懸命考えてくれてるだけだし。何も、悪くないよ」  きゅ、と手を握られる。  何も悪くない、てことはないよな、と思う。  覚悟が決められないくせに、でも、ただ、快斗が好きすぎて、言ってることが一貫してないのも、分かってるし……。  困って黙っていると。 「……でもさ」 「――――……」  手がそっと離されて。快斗が動く気配がした。  動けないでいると。  顔の横に手がついて。  そのまま、ゆっくりゆっくり近づいてきた快斗に、そっと、頬に、キスされた。  仰向けに寝てるオレを、上からじっと見つめて。   「そこで、謝ってくれる愁のことがさ――――……すっごい好きなんだよ」  そう言われた瞬間。  どく、と。  ものすごい、鼓動。  じっと、まっすぐ、見つめられる。  布団の上で。  どんな意味でも大好きな人に、こんな風に好きって言われてキスされて、こんな風に見つめられて。  ――――……拒否できる奴なんて、居るのかな……?  もうなんかオレ……。  このまま何されても、全然良いような気が、してしまう。  そんな風に自分の思った事に、ますます胸がドキドキしてくる。 「――――……」  黙ったまま見つめ合っていると、快斗は、ふ、と瞳を優しく緩ませて。 「――――……ほんと、愁、大好き」  最後にもう一度、頬にキスして。オレからそっと離れた。 「……ダメだ。一緒の布団はヤバいからやっぱ、戻るね?」  ――――……なんて、言いながら、快斗が自分の布団に戻っていく。  オレ、めちゃくちゃ、覚悟したのに。  ドキドキドキドキ。  ……離れても、心臓がヤバい。 「――――……っっ」  ……オレ今。何されても良いって、覚悟しちゃったじゃないかー……。  もう……ドキドキが収まらないし。  ……って。  ……やっぱり、快斗に、何されても、いいんだな、オレ。  もしかして、そうなんじゃないかなとは、ちょっと思ってたけど……。  なんか、顔から、火が出そう。

ともだちにシェアしよう!