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「デートの朝」

 昨日はあのまま眠りについた……と、いっても。  快斗が、明日は元気に遊びたいから早く寝ようと言って、先にほんとに寝てしまって。  オレはといえば、バクバク音を立てた心臓が戻らなくて。  なかなか寝付けなかったけど。  何されてもいいなんて。  ……布団で押し倒されたあの状態で、あの瞬間、そう思っちゃったなんて。  ……やばいなー。オレ。  告白に答えてないオレに、何も言わず、快斗がそんなことするわけないじゃんね……。  快斗に大分遅れて、一応眠りはしたけど、ちょっとだるい……。  目が覚めたら、快斗はもう布団には居なかった。  着替えて、リビングのドアを開けた時。ちょうどこっちに来ようとしてた快斗と、鉢合わせ。 「今起こしに行こうと思ってたんだ」 「……おはよ」  快斗を見上げた瞬間。頬にちゅ、とキスされた。 「おはよ」 「――――……」  よしよし、と撫でられて。固まる。快斗の優しい瞳をただ見つめ返す。  あ。「恋人として一日」って。こういうことか。  甘い感じが、さらに増す訳か……。  ついて行けるかな、オレ。    ドキドキが半端ないんだけど……。 ◇ ◇ ◇ ◇  オレの家で、朝食を食べ終えた。自分の水着とか、色々用意してから、快斗と二人、玄関で靴を履いていると、母さんが玄関に歩いてきた。 「これ、お小遣いね。お昼と夜の食事はこれで二人で食べていいからね」 「ありがとー」 「ありがとうございます」  二人でお礼を言って、行ってきます、と続けようとした瞬間。 「愁、プール溺れないでね」  言われた瞬間、またかーと、苦笑い。 「母さん、オレもう溺れないってば……大丈夫、気を付けるから」  大昔、小学生の頃に、プールでちょっと沈んだ話。  毎年言われ続けている事を、また言われた。  横で、快斗が苦笑いを浮かべて。 「おばさん、ちゃんと、愁の事見てるから大丈夫」  なんて言って、「お願いね」と母さんに、頼まれている。  その時。 「おー、お前らどこか行くの?」  今起きてきた、とばかりの姿で階段を下りてきた兄貴がそんな風に聞いてくる。 「おはよ、宗兄。プール行って、遊園地で遊んでくる」  快斗が答えるのを聞いて、兄貴がふ、と笑う。 「楽しんでこいよなー」  自分たちの現状を知ってるのだと思うと。そんな言葉にも、深い意味があるとしか思えない。 ニヤニヤしてるようにも、思える。 「うん。楽しんでくるよ」  そんな快斗の言葉にも、意味を勝手に感じてしまう。  快斗と一緒に、適当にうんうん頷いて、笑っておくことにした。  いってきまーす、と、家を出て、一回、快斗の家に戻った。

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