12 / 110

第12話

「我らは誇り高き魔族だ人間、あまり調子に乗ると殺すぞ」 理事長は何もない空間に手をかざすと何処からか魔法陣が現れたと思ったら、魔法陣が消えて手には木の杖が握られていた。 ……マジック? 目の前で起きた信じられない現象に固まる。 殺すと言った理事長の目は本気のようだった。 ………これほどまでに怖いと思った事はない。 理解が追い付かず頭が混乱する。 「この学院は魔法使いと吸血鬼が通う学院だ…姫は唯一特別な人間として入学を認められている…そこにいる初瀬英次くんもまた魔法使いとして呼ばれた、貴様は場違いなんだよ」 「…吸血、鬼?魔法…使い?」 俺は訳が分からず周りを見た。 英次の顔は可哀想なほど白くなり俺と目が合えば目を逸らす。 飛鳥くんも聞かれたくないのか俯いていた。 …二人のこの行動に俺は理事長が冗談を言ってるわけではないと思った。 そんなテレビや本でしか聞いた事がない魔物が実在するなんて驚きだ。 …俺はまだまだ無知だったのか。 しかし、俺はこの学院を追い出されたらどうなるんだ? 元の学校に戻れるのか?こんな秘密を知ってしまって? いや、それよりも俺がここに行かないとあの少年との約束を破る事になる。 英次が、俺のせいで殺されてしまう。 俺と英次の命を天秤にかけてどちらが重いかなんて言わなくても分かる。 「…俺はこれからどうすればいいんですか?」 「そんなもの、私が知るわけ…」 理事長の言葉は不自然に止まった。 そしてなにか考えていた。 学兄さんだけが特別な人間なら俺はいったい何故この学院に呼ばれたんだ? あの少年にもう一度会って聞くしかないだろう、そのためにもここを追い出されるわけにはいかない。 さっきまで不機嫌だった理事長の顔が笑みで歪んだ。 …何でもいい、無事に高校を卒業出来るなら… 「そんなに居たいなら入学を許可しよう、ただし…君は標的として入学する事になるが…我らの秘密を知ったからには生きて帰すわけにもいかないんだよ」 学兄さんは納得出来ないと怒りを露わにして理事長に詰め寄るが、理事長は学兄さんをとびきり甘やかせて落ち着かせていた。 飛鳥くんと英次は標的の意味が分からず首を傾げた。 あまりいい響きではないが、俺には元々選択肢なんてなかった。 それに理事長には断ったら殺すとでも言いたげなオーラを感じた。 思ったより深刻に嫌われているな。 理事長は一度理事長席に戻り、一枚の紙を取り戻ってきて机にボールペンと一緒に置いた。 「これにサインをすれば正式に君を我が学院の学生だと認めよう、森高瑞樹くん」

ともだちにシェアしよう!