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第19話

「もしかして瑞樹料理出来るの?」 「あ、あぁ…ただの趣味だけど…良かったら料理作ろうか?」 「わーい!!もううるさい食堂行かなくて済むなら朝昼晩お願いしたいな!!」 子供のようにはしゃぎキッチンに急いで来て俺に抱きつく玲音を微笑ましそうに見てうるさい食堂ってなんだろうと思った。 玲音は先輩なのに後輩のように俺を慕っていて、本人に直接言うと失礼だから言わないけど可愛いワンコのように思えた。 キッチンを見終わって廊下に戻り俺のプライベートルームに案内してもらった。 右側の扉が玲音の部屋で左側が俺だと説明してくれた。 部屋に入るとベッドと机とダンボールが置かれていた。 服とかしか荷物がないから段ボール二つでおさまってしまい、とても少ない。 「さて、やるか」 「あ!俺も手伝うよ!瑞樹のご飯早く食べたいから!!」 玲音は俺以上にやる気で袖を捲り部屋に入ってきた。 二つしかないからすぐ終わるから待っててくれと言うと個室の入り口で待っていた。 リビングのソファーに座って待っていてくれという意味だったが、まぁいいか。 そんなに期待されると緊張するな、玲音の口に合えばいいんだが… 荷物を片付けた後、俺達は夕飯の食材を買いに部屋を出て寮に設備されてる何でも揃うらしいスーパーに向かった。 スーパーはエントランスの端にあるらしく、エントランスに戻るために廊下を歩く。 「何でも売ってるのか?」 「うん、必要なものはね…追加してほしい商品は言えば入荷してくれるよ」 便利なものだな、俺が通っていた学校ではなかったからこれが普通か分からないが… 魔物だから街を出て買い物とか出来ないだろうからこういう店が必要なのかもしれないな。 玲音は「何を作ってくれるのかなぁ~」と鼻歌混じりで歩いていた。 そして寮のエントランスの入り口近くにあるスーパー…というか見た目は老舗の骨董品店みたいな薄暗い店内の「チェルシー堂」が見えた。 入ろうとすると誰かに後ろから抱きしめられて驚いて止まった。 ……こんな事する奴は知り合いで一人しか知らない。 「………英次、無事だったのか?」 「瑞樹ひでぇよ!置いてくなんて!!」 「…ご、ごめん」 メソメソ泣く英次に申し訳なく謝ると、英次の首根っこを掴み飛鳥くんが引き剥がした。 二人共、何だか疲れた顔をしていて心配になる。 追いかけられただけであんな顔になるのか謎だ。 玲音は何故か英次に対抗してか俺に抱きついてきた。 飛鳥くんは物凄い顔で俺達を睨んでいて、ソッと玲音を離す。 男同士でベタベタしたものを見せてしまった、自分の兄がそんな事してたら嫌だよな。 「飛鳥くん」 「瑞樹は悪くねぇよ、コイツは嫌いだが瑞樹を兄貴の突撃に巻き込みたくなかったし…それより何処に行くんだ?」 「そうだ!瑞樹一緒に食堂行こうぜ!!」 英次は飛鳥くんの言葉で思い出して暴れて飛鳥くんの手から逃れて俺の手を握った。 食堂か…一度行ってみたいが今日は玲音と約束したからな。 それにうるさい食堂というのが少し気になった、あまり騒がしいところで食事はしたくない。 玲音達と楽しい食事なら苦じゃないんだけどな。 二人にも今日は俺が作るために買い物に来た事を伝えた。 俺がチェルシー堂を指差すと英次は目を輝かせた。 「俺も!俺も久々に瑞樹の手料理食いたい!!」 「瑞樹の料理は美味しいからな、俺も…」 「お前は家でいくらでも食えただろ!!」 「あ?お前は一人で食堂にでも行けば良いだろ」 何故か英次と飛鳥くんは喧嘩を始めてしまった。 通る生徒達に注目されてるが、二人には見えてないみたいだ。 本当は二人仲がいいんだろうな、じゃないと言い合いの喧嘩なんて出来ない。 止めなきゃならないとは分かっているが微笑ましく眺めていた。 食事は大勢で食べた方が美味しいよなと思い睨み合う飛鳥くんと英次の肩を叩く。 二人は面白いくらいピタリと仲良く動きを止めた。 「皆で食べよう、玲音もそれでいい?」 「……うん、瑞樹がそれでいいなら」 玲音の方を見て同意を求めるが、玲音は俯いていて声も小さい。 あれ?玲音なんか元気ない?さっきははりきっていたのに… 食事が残んないのが気になるのか?ちゃんと多めに作るのに… しかしそれは一瞬で、すぐにいつもの玲音に戻り俺の手を引いて歩き出した。 二人も俺の考えに渋々頷き、一緒に着いて行く。 俺達は改めてチェルシー堂の中に入った。 チェルシー堂は見た目老舗骨董店のような時代を感じる見た目だったが中に入るとスーパーのような品数が豊富だった。 生徒も結構利用するみたいで、買い物をする生徒が何人かいた。 こう見ると、人間と変わらないな… 「瑞樹、何を作るの?」 「えっといっぱいいるからカレーにしようと思ったんだけど」 「…さすがにルーは置いてないよな」 一通り見るが、野菜はあるがルーは見当たらなかった。 カレーは食べないのか? 魔物からどういうものを食べるのか気になった。 英次も飛鳥くんも俺の知ってるかぎりでは普通に人間の料理を食べていた。 チェルシー堂にもカレーはないが豚肉とか置いてあるから人間の料理が食えないわけではなさそうだ。 中には何に使うのか分からない見た事がない食材もある。 「吸血鬼と魔法使いって何を食うんだ?」 「魔法使いは分からないけど、吸血鬼は基本的に血などの体液とか……花?」 「えっ!?花なんて食うの?」

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