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第23話

「そうですか?」 「…うん、君が例の森高学くんの弟さんでしょ?彼をよく知ってるからてっきり性格も似てるのかと」 俺達三兄弟は三つ子なのに顔も性格も全然違うから言われなきゃ兄弟だと分からないレベルだから無理もない。 分かっていても末っ子の飛鳥くんが一番大人びていて長男に間違われたりしている。 俺は美形二人と違い醜い顔だからよく捨て子だとからかわれていた。 もう俺も高校生だからそんな事じゃ落ち込まないから大丈夫だ。 帝さんは学兄さんと似てないと分かった途端花のような笑顔を見せた。 こんな美しい笑顔もするのかとドキドキした。 「飛鳥くんを見た時も全然似てないなって思って、似ないんだね」 「よく言われます」 お互い微笑むと玲音達がジッと見つめていた。 何だか玲音と英次の頬がほんのり赤い。 飛鳥くんはジト目で二人を見ていた。 俺は寮長が「ちょっと待ってて!」と言われ待っている。 寮長は寮長室らしき場所に入っていった。 そして玲音と英次はヒソヒソとなにか話し出した。 「二人並ぶと花が咲くなぁ」 「えー、瑞樹の方が癒し系だよー」 「…というか二人共ジロジロ見るなよ」 三人がそんな会話をしてるとは知らず、帝さんは戻ってきて、手になにかを持っていた。 それは外の世界でお馴染みの大福だった。 帝さんは俺と英次に大福を配っていた。 大福なんてしばらく食べていないな。 いつも家では俺のおやつはなくてお母さんにバレないように飛鳥くんに分けてもらっていたな。 俺のためのおやつは初めてであまり顔に出ないが目をキラキラさせた。 「……食べていいんですか?」 「うん、僕甘いものが大好きで今は大福にはまってるんだ…これは編入祝いだよ」 「ありがとうございます」 ここの人達は個性的な人が多いなと思いながら英次と二人で食べた。 すっきりした甘い味が口いっぱいに広がる。 甘いものは好きでも嫌いでもないが、この大福は美味しいと思った。 食べ終わり帝さんにお別れして寮から学院に続く並木道を歩く。 ……しかしほとんどの木が枯れていて、朝なのに道は薄暗く…まるで肝試しをしてるみたいだ。 英次なんて玲音に強がってた時とまるっきり違い怯えている。 昨日も通ったけど、時間も時間だったから暗いと思っていたが元々暗かったのか。 「瑞樹の友達は顔色悪いけど瑞樹は平気だね」 「幽霊は信じてないからな」 「…でも魔物はいるよ」 玲音は怖がらせようとわざとねっとりした喋り方をして、なんか微笑ましくて頭を撫でたらガーンと自分で口で言いショックを受けている。 年上だけど何だか玲音は年上に見えなかった。 でも玲音は年上で男だからな。 さすがに友達とはいえ年上に失礼だったよな。 慌てて謝るが時既に遅かった。 玲音は下を向きプルプルと震えていた。 「…わ、悪い」 「うぅっ…瑞樹にプライド傷付けられたぁ!!」 玲音はそのまま叫びながら学院に向かって走っていった。 そんなに嫌だったのかと俺もショックを受けていた。 今すぐ追いかけたいが飛鳥くんに腕を掴まれて止められた。 飛鳥くんに心配掛けたくないから今はやめとこう。 …後で謝りに行こう……クラスが違うとすぐに会えないから不便だな。 飛鳥くんが小声で「………気持ちは分かるけどな」と言ってたのは誰も知らない。 二回目の学院の校舎……相変わらずお化け屋敷みたいだな、まぁ吸血鬼とか魔法使いにはイメージピッタリだけど… 入り口に向かおうとしたら飛鳥くんが俺達の方を見た。 「じゃあ俺行くから、英次…ビビってんじゃねーぞ」 「……うるさいな!」 英次の言葉を無視した飛鳥くんは俺達が行こうとしていた校舎の裏庭に向かって歩いていった。 飛鳥くんを見ていた一部の生徒がキャアキャア言っていた…やっぱり飛鳥くんも学兄さんほどじゃないけどモテるもんな。 兄弟の中で一番女の子にラブレター貰っていたからな。 兄の俺が見ても優しいしカッコいいと自慢できる弟だ。 ……あれ?ここ男子校だよな? 周りを見ても可愛い顔の生徒はいるがズボン穿いてるから男だよな。 「ほら行こうぜ瑞樹!!」 「あ、おいっ……そんな引っ張んなっ…」 英次にいきなり腕を引かれたからバランスを崩して誰かとぶつかってしまった。 肩に軽く触れただけだけど相手に不快な思いをさせてしまったかもしれない。 俺は慌てて相手の顔を見て謝った。 学ラン…吸血鬼の生徒だ。 確か吸血鬼は魔法使いよりも好戦的ではなかったか? 皆が皆、玲音や飛鳥くんみたいだとはさすがに思わない。 「ご、ごめんなさい!!」 「……チッ」 ………舌打ちされてしまった。 顔を見た瞬間驚いてしまったからさらに気分が悪かったのかもしれない。 ……けど、とても綺麗な顔だった。 黒髪に青いメッシュをしている少年で整ってる繊細な顔だ。 ……不愉快そうに歪められた顔が全て台無しにしてる気もするが… 少年は俺をもう一度睨み付けて校舎裏の庭の方に向かって歩いていった。 あそこはブラッドクラスの校舎があるのか、学ランの生徒はだいたい行き先は同じだ。 「……」 「瑞樹、気にすんなよ…吸血鬼ってアレだろ?血ばっか吸い過ぎてカルシウム足りないんだろ?」 英次は俺の事を心配して言ってくれていたんだろう…俺は英次に「ありがとう、行こう」と言い校舎に入った。 もう会う事はなさそうだけど、もしまた会ったら改めて謝ろう。 きっと俺から探したら鬱陶しがるとそう思った。 下駄箱に自分の名前が書かれた場所を見つけて開けると上履きが入っていた。 真新しい上履きを履くと壁に貼ってある案内図を頼りに職員室に向かう。 案内図はマギカクラスの校舎のみが描かれていたがそれだけでも広そうだと思った。

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