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第24話

「外がアレだから中も身構えてたけど、普通だな」 「そうだな、まぁ…英次はそっちの方が良かったんじゃないのか?」 「……べ、別に?」 からかうように含みを込めて言うと目を逸らし小さいながら声を出した。 普通と言っても中は普通の学校より広い……二種類の魔物がいるから当然と言えば当然だが… 昨日はいろいろ見る余裕がなくて、周りを見てみる。 窓が全てステンドグラスになっていて、少し高貴なような感じがした。 廊下のこれは…レッドカーペット?なんで学院に…? さっき校舎の入り口には大きなシャンデリアがあった。 外装といい凄いセンスだな… 学ランの生徒がいない事からもしかしたらブラッドクラスの生徒は入れないのかもしれない。 昨日は理事長室がマギカクラスとブラッドクラスの間にあったから二種類の生徒がいたのか。 マギカクラスの校舎の隅にある職員室に着きノックする。 …良かった、職員室はまともだ。 勝手に入っていいのか迷いしばらく待ってみるとドアが開いた。 そして現れた教師(?)に驚いた。 ……強面のヤクザみたいな人が俺達を鋭い眼光で睨んでいる。 「…あ?誰だお前ら」 生徒の前でタバコなんて吸ってて良いのだろうか。 鋭い瞳で俺達を睨みドアの前に立っている。 服装もスーツだがネクタイを緩めて着崩している。 髪はクリーム色でオールバックしている、あまり教師には見えない。 しかも至近距離で顔を近付けるから煙を少し吸ってしまい噎せた。 英次は心配そうに俺の背中を擦っている。 幽霊以外には強気な英次はヤクザみたいな人を睨む。 「おいアンタ!瑞樹に何すんだよ!」 「…貧弱な人間だな、だから人間は嫌いなんだよ」 ヤクザみたいな人は元々寄ってた眉間のシワをさらに深くしてスーツの内ポケットから何かを取り出し俺の顔目掛けて噴射した。 ちょっと反応が遅れたから少し目に入った。 目が熱くなり、涙が溢れてくる。 目元を押さえてうずくまる俺を見て英次は必死に声を掛けるが、返事する余裕がない。 あれは、なんだ?人間が嫌いと言ってたから攻撃したのか? 教師も…味方じゃないという事か? 「っ…」 「瑞樹に何すんだよ!!お前誰だよ!いい加減にしろよ!!」 英次は教師でも問答無用で喧嘩腰になっているから返事の代わりに英次の腕を掴み止めた。 止めないと一人で突っ走りそうだと感じた。 ヤクザみたいな人が「目に害はないから安心しろ」と言ってたからホッとした………念のため後で目を洗っとこう。 俺を攻撃したわけじゃないのか?じゃああれはなんだ? やっと少し目を開ける事が出来て涙目で見づらいが、ヤクザみたいな人が持ってる女性が好きそうなピンク色の香水のような瓶が見えた。 …アレをかけられたのか。 「人間臭いから消しただけだ、俺に感謝しろ人間」 「…あ、ありがとうございます」 よく分からないが、臭かったならありがたい。 人間のにおいは人間には分からないだろう。 これでしばらくは人間だとバレずに過ごせると思っていいんだよな。 …敵か味方かなんて分からないが、少なくとも敵意はなさそうでホッとした。 なにがきっかけで敵意になるか分からないから油断は出来ないけど… 瓶を再び内ポケットに押し込み俺達を通り抜けてヤクザみたいな人は歩き出した。 何の説明もないから呆然と突っ立っている俺達にイライラしたようで一度立ち止まり振り向いた。 「テメェら編入生だろ!!五秒以内に来ねぇとぶっ殺すぞ!!」 「「はっ、はいっ!!!!」」 かなり先に行ってたから五秒以内は無理そうだったが全速力で走った。 ヤクザみたいだったし、絶対殺されると思った。 廊下を走っていいのかと一瞬思ったが、殺されるよりマシかと思い直した。 ヤクザみたいな人は担任だったみたいだ…初めに言ってほしかったな、臭いを消す前に… シャツもめっちゃはだけてるし、顔は強面の男前だし目付きがヤバイし……よく教師になれたなとは思う……魔物だからだろうか。 歩くこと数分で担任が足を止めて俺達を見た。 まだ目が痛い、早く洗い流したい。 「俺が入るまで絶対に来んじゃねーぞ」 そう言い乱暴に教室のドアを開けて入っていった。 教室にはF組と書かれていた。 そういえばパンフレットにも載っていたな。 成績順か分からないがSS,A,B,F組に別れている。 入試を受けてないから一番下のF組なのだろうか。 とりあえずすぐには来ないだろうと思い、目が痛いから近くのトイレに駆け込み洗面台で顔を洗った。 「……ふぅ」 「大丈夫か?」 心配で着いてきた英次はハンカチを貸してくれて顔を拭いた。 すっきりして目の痛みも引いていく。 洗面台の鏡を見つめる。 いつもと変わらない俺の顔。 それが突然ぐにゃっと曲がって見えた。 驚いて一歩引くと英次は「どうした?」と不思議そうに聞いてくる。 英次には見えなかったみたいだ、もしかしたらあれは俺の幻覚だったのかもしれない…涙が溜まる瞳で見たのかもしれないと気にする事はなかった。 英次に「大丈夫だ」と言って安心させる。 「ハンカチありがとう、洗って返す」 「……いや、別に洗わなくても」 英次がゴニョゴニョなにか言っていたが、担任の怒鳴り声を聞き慌ててトイレを出た。 担任は教室の前で仁王立ちで立っていて、駆け寄る俺達を見て睨んでいた。 凄む顔で「…俺をこんなに待たせるとは、随分偉くなったんだなぁ…テメェら」と言われ必死に頭を下げて謝った。 ……無事に学院を卒業すると宣言したが、今日が俺の命日になると本気で思った。 一秒も時間を無駄にしたくないのか担任に制服の襟を掴まれて教室の中に押し込まれた。 なんとか倒れずに体勢を整え教卓の前に行く。 後からやる気なさそうにだらけている担任が入ってきた。 「自己紹介とか面倒だから個人でやれ、席は適当に空いてるところな」 俺と英次は名前だけでも言わなくていいのかと思ったが、担任がさっさと行けと無言の圧力を掛けてきた。 空いてる席を見ようと教室の中を見渡す。

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