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第27話

※瑞樹視点 昼休みになってるからか、廊下は多くのマギカクラスの生徒で溢れていた。 いくら人間のニオイがしないとはいえ、まだ制服が出来てないから前の制服のままで周りにジロジロ見られる。 俺は少年達に連れられるままに教室を出た。 まだ何処になにがあるのか分からず何処に向かっているのかさえ分からない。 質問しても答えないから口を閉ざした。 そして渡り廊下に入った時違和感を覚えた。 何だろう、目の前の彼らではなく…もっと別の嫌な気配を感じた。 それにこの渡り廊下、昨日俺達が理事長室に来た場所ではないのか。 それじゃあもしかしてこの先は… 「…あの、もしかしてブラッドクラスに行こうとしてないか?」 「なんだ、知ってるんだ新参者のくせして…安心しなよ…吸血鬼はここを通れないから」 いや、吸血鬼が通れなくても俺達から出向いたら意味ないだろ。 首を掴む爪さえ外してくれればこのくらいの小柄な少年なら何とかなるのに… 渡り廊下を渡り終わると肌を突き刺す冷気を感じた。 嫌な寒気だ。 マギカクラスとは違う、異様な空気が充満していた。 ……これは、殺気か? 廊下を進むと生徒達が見えてきた。 やはりマギカクラスと雰囲気そのものが違う。 マギカクラスは俺にこういう事をするが雰囲気全体では上品な育ちのよさを感じた。 …しかし、ブラッドクラスは違う。 明らかに異端者な俺を敵視して、今にも襲いかかろうとしている危ない雰囲気がする。 人殺しの目をしていてゾクッと顔が青くなる。 少年の一人がある人を見つけて駆け寄っている。 不良と呼ばれる外見のガタイのいい強面の三人の男がこちらを見て嫌な笑みを向けていた。 周りは勿論止める奴なんていない、俺は下手に動けない今…逃げられそうになかった。 「ねぇちょっとそこのおにーさん、迷子かな?俺達が連れてってあげるよ♪」 事情を話したであろうから俺が何故ここにいるのか知ってる筈なのにそんな事を言う。 一応自然に連れていこうとそういう事か。 返事をしない俺の背中を首を掴んでいた少年に押された。 首から爪が離れたが、今度は男達に両手を掴まれ逃げる事が出来なくなった。 足で蹴っても俺の倍はある体には何の痛みも感じてはいないようだった。 そのままずるずると何処かに連れてかれた。 最後に見たのは渡り廊下まで走る俺を連れてきた少年だった。 「…っ」 かなりの怪力だったのか、引きずられてる時ずっと掴まれてる手がミシミシ悲鳴をあげていた。 やっと解放されたと思ったら、リンチでは定番の裏庭で放り投げられた。 此処はまだブラッドクラス側の裏庭で、周りには誰もいなかった。 俺は痛む腕を庇いながら立ち上がろうとすると男の一人に足蹴りされて地面に仰向けに転がされ腹を踏まれた。 息が一瞬止まり、噎せた。 それをいやらしい笑みで見つめる三人の男達。 「ぐっ…ごほっ」 「おいコイツ、本当に好きにしていいんだな」 「アイツも性格が悪いな、自分が気に入らない奴は同族でも売るってか?…まぁ、じゃないと俺達がアイツを喰うって脅してんだけど」 「……なんか良いニオイしね?コイツ…」 男の一人が欲情したような気持ち悪い顔で牙を見せるように舌で自身の唇を舐めながら俺を見下ろす。 その鋭く尖った牙を見てゾッとした。 ……俺はこのまま殺されるのか? 獲物に狙われる草食動物になった気分で相手を見る。 ……なにか身を守る盾があれば… 痛みに耐えながら上半身だけ起こして辺りを見渡すが、使えそうなものはなかった。 男が一歩近付く度にジリジリと後ずさる。 腹は痛いが、ジッとしてるのは明らかに危険だ。 まともに走れるか分からない。 でもやらないわけにはいかず死ぬ気で逃げようと立ち上がろうとした途端に男一人が覆い被さってきて、再び地面に倒れた。 連れの男達がニヤニヤ見ていて気持ち悪かった。 俺は驚いて必死に抵抗するが人間と吸血鬼の差は大きくびくともしなかった。 「おいっ、何するんだ!!」 「ははっ、お前マジかよ!!そんな奴とヤル気か?」 「平凡だし、もっとマシな相手にしとけよ」 コイツらが何を言ってるのか分からないが、俺に襲いかかった男は理性が失ったように俺の抵抗する両手を片手で拘束する。 吸血鬼にとっての人間の抵抗なんて無抵抗と変わらないのだろう。 男が俺のネクタイを外し、力任せにシャツのボタンを引きちぎった。 怖いというより、自分が情けなく惨めに感じた。 俺にもコイツらに対抗出来る力があったなら… 男は首筋に顔を埋めようと近付いた。 「いっただきまーす」 「くっ…」 目を瞑り痛みに堪えようとした。 数分…いや、数秒だったのかもしれない。 すぐに来ると思ってた痛みがなく…しかものし掛かっていた重さがふと消えた。 なにが起きたか確認しようとゆっくりと目を開くと俺を嫌な笑みで見ていた男達が状況が呑み込めない顔をして俺の横を見ていた。 俺は男達の視線の先を見ると木にぶつかって倒れている俺を襲った男がいた。 かなり太い木が折れていたのを見るとかなりの力でぶつかった事になる。 「…はぁ、全く何をしてるのかなぁー君達は」 倒れてる男を見ていた俺と男の仲間達は声がした反対側の横を見る。 そこには真っ赤な髪をした小柄な生徒がダルそうに立っていた。 面倒そうに欠伸をしながら立ってるこの少年の面影に見覚えがあった。 ブラッドクラスの男達も彼を知ってるのか気だるい感じの少年を見て一気に顔が青ざめていた。 欠伸をする口から覗くキラリと光る牙を見れば彼も吸血鬼である事が分かる。 首に手を当ててジッと真っ赤に染まった瞳でこちらを見つめてくる。 「じっ…ジョーカー!?」 「なんでガーディアンが此処にいるんだよ!!」 「…ただの通りすがり?」 焦る男達に簡単に答えるジョーカーと呼ばれた少年は焦る男達の方を向く事はなく、まっすぐ俺を見ていた。 男達は通りすがりだと分かり、安堵していた。 しかしそれも一瞬の事で俺の乱れた服の姿を見て明らかに顔色が変わった。 ちらりと男達を見て今度は見ていた男の一人に向かって腹に蹴りを入れて倒れたところでそのまま潰すように頭を地面に踏みつけた。 男はぴくりとも動かず気絶していた。 残った男は可哀想なほど顔が真っ白になり、逃げる事も忘れ腰を抜かしたのか地面に座り込んだ。 少し失禁したのか股間が濡れていた。 残りの男に目線を向けるとヒッと情けない声を上げた。 「な…な…」 「通りすがりなんだけどー…ちょーっといただけないもん見ちゃったんだよねー」 そう言う少年は顔から足を退けて残りの男のところまで行き胸ぐらを掴んだ。 ニッと口元をつり上げて笑っているように見えるが空気は寒く重い感じがした。 あの時を思い出すような、圧倒的な力の差を感じていた。 男は可哀想なほどガクガク震えていたが少年は問答無用で男の頭を鷲掴みした。 ギリギリと聞こえてきそうなほど強く握り男の顔が歪む。 そして二人しか聞こえないような小さな声で耳元で囁いた。 「俺の大切なお姫様を汚い手で触ってんじゃねーよ、殺すぞ」 そしてそのまま地面に叩きつけようとするジョーカーを見て我に返り止めに入った。 腹がズキッと痛くなったが数歩駆け出し少年の腕を掴んだ。 ……このままじゃ、死人が出るような気がした。 この少年が敵か味方か分からないから俺なんかの言う事に耳を傾けるか分からない。 …しかし俺は、彼を知っている。 彼は条件付きとはいえ英次を助けてくれた、俺は彼の心の中の少しでもある優しさに賭けてみる事にした。 俺がされた事はただの喧嘩のようなものだ、もう十分だ。 「もうその辺にしてくれないか?お願いだ」 「………………姫が言うなら」

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