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第31話

「あの、F組の担任の先生はいますか?」 「……F組?寿(ことぶき)先生の事かな?」 「はい!」 名前を言われても分からないがF組ならまず間違いないだろう。 眼帯の先生が後ろを振り返り寿先生を探してくれていた。 さっきの第一印象は間違ってたんだな、凄くいい先生みたいだし… 隣にいる英次を見たらなんかそわそわしたような落ち着きない感じだった。 英次、どうしたんだ? 職員室に眼帯の先生の声が響いた。 「あ、寿先生~人間くんがお呼びだよ~」 眼帯の先生は見つけたのかちょっと職員室に身を乗り出して緩そうな喋り方をして、大声で嫌味のように言う。 ……やっぱり、そんなに人間臭いのか? くんくんと分からないがニオイを嗅ぐ。 俺は職員室の外にいるが、外まで分かる……職員室からピリピリしたオーラが溢れている。 きっとこの先生は俺の名前を知らないから人間と分かりやすく呼んだのだろう。 …名前を名乗れば良かったかな。 「……何しに来た、人間」 少しすると寿先生は入り口にやって来て俺をジロッと見た。 やはり俺が探してた寿先生にホッとしたが、寿先生は不機嫌オーラを隠しもしなかった。 まぁ見る度に不機嫌だからこれが寿先生なんだなと思う。 眼帯の先生が寿先生の横を通り過ぎて職員室を出る。 何処かに行こうとしていたから俺はお礼が言いたくて引き止めた。 これを逃すといつ会えるか分からないから言うなら今しかないと思った。 「あ、待って下さい!さっきはありがとうございました」 「……人間にお礼なんて言われたくないよ」 眼帯の先生は俺の方に一度も振り返らず、そう言った。 その声は鋭い刃のように冷たかった。 ……あの先生も俺が嫌いなのだろうか?じゃあやっぱり負のオーラは勘違いじゃなかったんだな。 暗い気持ちになってたら寿先生が「人間臭い」と言って問答無用で消臭を掛けられた。 目的は達成出来たから、寿先生にお礼を言い校舎前に向かった(最後の寿先生が不審な顔をしていたが、もしかして虐められて喜ぶ性癖があると思われてないよな?) 校舎前に着き、英次と別れた。 壁に寄りかかり英次を待つ。 校舎から出てくる生徒達にジロジロ見られて居心地が悪い。 …….早く英次来ないかな。 しばらくぼーっとしてると、前から誰かが走ってくる。 「助けてっ!!」 「え…うっ」 いきなり腰にタックル(というか抱きつき)をしてきたから息が一瞬止まった。 何だか今日は腰を集中攻撃される日だな。 女の子は俺の後ろに無理矢理割り込み隠れて周りを警戒している。 そう…女の子だ。 今日で二回目の疑問だが、あれ…?此処は男子校じゃなかったか? 此処の生徒とは違うやたらヒラヒラレースが付けられた可愛い女子の制服を着た金髪が腰まで長い美少女がいた。 俺がなにか声を掛けようとしたら何処からか声がした途端に美少女の体が跳ねた。 「こんなところまで逃げてきたの?紅葉」 「…う、うぅ…」 女の子はなにかに怯えた様子だった。 そして次に現れた人物を見て驚いた。 正直これほどまでの美形は見た事がない。 銀髪に蒼い瞳の美しい少年も困った顔で俺の後ろにいる女の子を見ていた。 制服はマギカクラスのものだが、他の人とは違う…この人が着ると高級なスーツのように感じるほど優雅だ。 手の甲に不思議なアクセサリーが見えた。 「いや、いやなの!」 「わがまま言わないでよ、君にしか出来ないんだよ」 銀髪の少年はなにか説得してるが、女の子が本気で嫌そうな顔をしている。 何の話かは当然知らない、巻き込まれただけだから… 俺の制服を小さく可憐な手がギュッと握る。 この子もきっと人じゃない、でも周りの攻撃的な奴らとは違う。 守ってあげたくなるようなか弱さを持っていた。 お節介だと思うが銀髪の少年に向き合った。 「彼女嫌がってますし無理強いは良くないですよ」 「……彼女?」 銀髪の少年は俺の存在に気付いていなかったのか、今気付いたようで俺と目が合い首を傾げている。 ……俺、なんか変な事言ったのだろうか。 そして銀髪の少年は綺麗な笑みを向けて笑った。 さらりと銀色の髪が揺れ細長い指で耳に掛ける。 血のような真っ赤なピアスが見えた。 なんか分からないが急に恥ずかしくなった。 「ふふっ、彼は女じゃないよ…そもそもこの学院に女はいないよ」 「えっ!?でも…」 女の子の方を見ると、女の子もキョトンとした顔で俺を見ていた。 まさか…男!?でも女子の制服だし…こんな可愛い男見た事ない。 いや、可愛い男なら教室にもいたけどあれはあくまで少年的な可愛さだ。 でもこの子は女の子の服を着ても違和感ないほどの美少女だ。 目が大きくて睫毛が長くていいにおいがしてドキドキする。 俺は失礼な事を言ったから慌てて頭を下げた。 「あ、ごめん…俺…てっきり」 「良いよ、この格好は趣味だし…まぁ私を女の子だと思ってる生徒はほとんどいないけど…貴方新入生?」 優しく可愛い笑みを向けられた。 コクコクとロボットのように頷く。 女の子と至近距離で会話した事ないから女の子じゃないと思ってもなんか照れてしまう。 そして女子の制服を着た少年はなにか思い付き、俺の腕に腕を絡ませて目の前の銀髪の少年を見た。 胸はないはずなのに何だか柔らかい感触がして固まる。 …俺、変態になった気分だ。

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