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第34話
きっとこの二人との関係もローズ祭が終わるまでなんだろうな……そう、思ったらとても悲しかった。
友達が英次と玲音しかいないからか友達になれたらいいと思うが、俺が人間だと知っても一緒にいてくれる人なんていないかもしれない。
今その事を気にしても仕方ないから気持ちを切り替える。
携帯道具はないから、平日の放課後はバンドの練習場であるブラッドクラスとマギカクラスの渡り廊下の近くにある音楽室に来るようにした…だいたいそこに紅葉さんがいるらしい。
ギリギリマギカクラスにあるというから大丈夫だろうが、念のため誰かに言った方がいいだろう。
そして俺は二人にお辞儀をして、英次が待つ校舎前に向かった。
それを懐かしそうな顔で眺めていた架院さんがいた。
「……懐かしい気配がした…いや、まさかね」
「英次っ!!悪かった」
「瑞樹!!大丈夫だったか!?怪我はないか!?」
校舎前に行くと部活見学を終えて心配そうな顔の英次が急いで駆け寄ってきた。
俺の周りをうろうろしてくるくる回された。
おかげで目が回り気持ち悪くなった。
心配してくれてるのは分かるが、まずは行動に出る前に話させてほしい。
回される手を止められ壁に寄りかかった。
視界が回って見える。
「…うっ」
「わ…わりぃ、大丈夫か!?」
さすがにやり過ぎたのを反省している英次を見て、大丈夫だと笑いかけた。
結果、英次に抱きしめられて暑苦しくて逆効果になった。
数分後落ち着いた英次と共に寮に戻り、今日も自炊するつもりだから飛鳥くんに伝言するように頼み、部屋に向かう。
今日は何を作ろうか、飛鳥くんの好物のハンバーグもいいけど…玲音は何が好きなんだろう。
オムライスを知らなかったし、人間の料理を食べないのだろうと悩みながら部屋の前に到着した。
鍵がないから開けられなくて、部屋の襖を叩くと奥からバタバタと音がした。
「瑞樹っ!!遅かったけどどうしたの?大丈夫!?」
「平気だよ、ちょっと人と話してて」
「……瑞樹が何もないならいいけど…誘ってくれれば瑞樹と一緒に帰ったのに」
「いや、でも今日玲音用事あったんだろ?」
「……え、今日はないけど?」
キョトンとした顔で見つめ合う。
英次が飛鳥くんにメッセージを送ったのは俺も画面を見ていたから確実だろう。
もしかして飛鳥くん言ってなかったのか?
でも飛鳥くんからはっきり玲音は用事があるって言ってたけどどういう事だろう。
話がかみ合わず苦笑いする俺とよく分からない玲音…それぞれが違う反応をしていたが、とりあえず自室に入った。
リビングには大きなダンボールが二つあった。
玲音のかと後ろを振り返る。
「玲音、これは?」
「あぁ、そうそう!これ瑞樹のだよ!!」
俺宛の荷物らしく、なんだろうと思いながらダンボールのガムテープを剥がす。
玲音も興味津々で横から覗き込み、ダンボールの中身を取り出した。
そこには白いマギカクラスの制服があった。
他にも教材などがぎっしり入っていた。
一日で俺の分も用意したのか、早いなと感心する。
なにか小さな四角い箱があり、中になにがあるか分からないから丁寧に開けるとスマホが入っていた。
「これ瑞樹の制服だね!!携帯道具もあるし、これで瑞樹は大丈夫だね!」
「……あぁ、そうだな」
制服やスマホ型の携帯道具、他にもいろいろ入っていた。
携帯道具については玲音に使い方を教えてもらった。
画面とかは普通のスマホと変わらないが、変なアイコンが並んでる。
ドアのアイコンが部屋の鍵を開ける。
アンテナのアイコンが電話やメールの通信機能。
これで紅葉さんとも連絡が取りやすくなるな。
「俺のID教えるね!!いつでも掛けてきていいからね」
「ありがとう、えーっとこれは…」
慣れるまで時間が掛かりそうだな。
一旦携帯道具をテーブルに置き、ダンボールを自分の部屋に運んだ。
そしてまたリビングに戻り夕飯を作るためにキッチンに入る。
昨日のオムライスの残りでチャーハンでも作ろうかな。
また買い物に行くのも悪いし、ハンバーグはこの次にしよう。
俺の携帯道具に自分のIDを登録してくれている玲音を見た。
「玲音、今日の夕飯手伝ってくれるか?」
「うん!分かった!!」
玲音もキッチンに入ってきて、冷蔵庫から取り出した卵の割り方を教える。
そういえばバンドやる事を伝えた方がいいよな…明日でいいか。
そんな事を考えながら飛鳥くん達が来る前に作っちゃおうと二人でオムライスを作った。
オムライスが出来る頃に部屋の襖が叩かれた。
襖を開けると走ってきたのか、少し息を乱した飛鳥くんと英次がいた。
なんか今朝にも同じ事があった気がするな。
「英次から聞いた、瑞樹大丈夫だったか?…コイツに任せた俺が悪かった」
「はぁはぁ…おい、どう言う意味だコラ」
「あ、飛鳥くん!瑞樹が先に帰ったって俺に言ったよね!?」
二人の声に飛鳥くんが白けた顔をして、自室に入る。
不満そうな玲音と英次は飛鳥くんの後を着いていく。
思ったより皆に余計な心配掛けてしまったな、襲われた後だから当然か。
でも飛鳥くんはなんであんな嘘を付いたのかよく分からない…何だか俺から玲音を遠ざけようとしてるみたいで…よく分からなかった。
皆のぶんのチャーハンを盛り付けた皿をテーブルに並べる。
そして飛鳥くんがテーブルに置きっぱなしにしていた携帯道具を見つけた。
「これ、瑞樹のか?」
「うん…帰ってきたら届いてたんだ」
飛鳥くんと英次にもIDを教えた。
…これでやっとこの学院の生徒になれた気がして嬉しくなった。
玲音はチャーハンを食べながら笑い合う俺達を見ていた。
玲音がずっと無言だったのでもしかして楽しくないのかもしれないと不安に思う。
玲音はいつも明るいから黙っていると心配になる。
俺の視線に気付いた玲音は首を傾げていた。
「瑞樹どうしたの?」
「あ、いや…口に合ったか心配で」
「美味しいよ?」
「そうか、良かった」
そう言って玲音は再び飛鳥くん達を見ている。
玲音は無表情で何を考えているのか分からない。
俺と話した時は普通だったけど……もしかして飛鳥くんの事、怒っているのだろうか。
気になって仕方なくてチャーハンが無味に感じてくる。
…ちょっと薄味だっただろうかと考えながらチラチラ玲音を見る。
一人で悩んでたって仕方ないからはっきり聞いてみようと玲音に向かって口を開く。
「玲音、どうかしたのか?」
「どうって?」
「…なんかボーッとしてる」
「え?…あぁ」
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