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第44話
そうか、確かに紅葉さんいろいろと悩んでいたし迷惑メールとかあったのかもしれないな。
じゃあフルネームを知ってても無駄だったかもしれないな。
俺が紅葉さんの事を玲音に話した、昨日話せなかったバンドの話だ。
架院さんの事はあまり関係なさそうだったから紅葉さんの話だけをした。
玲音は真剣な顔をして聞いていた。
明るい玲音の事だからてっきり賛成してくれると思っていた。
「……ダメだよ瑞樹」
「で、でも紅葉さんはいい子だったし」
「その子はそうでも他のメンバーは?バンドならいるんだよね、瑞樹は会ったの?」
「…そ…れは」
「罠じゃないとも言い切れない、瑞樹はもっと人を疑わないと」
玲音の心配はもっともだが、あの人達は悪い人じゃない…いくら玲音でも悪く言ってほしくなかった。
俺は玲音も一緒に来てくれたらとても心強いと思っていたがそれどころではなさそうだった。
でも引き受けたのに断るなんてしたくない。
玲音は本当はこんな否定的な事を言いたくないのだろうが心を鬼にして言ってくれているんだ。
手を見ると薬指に光る指輪が見えた。
玲音は確か婚約指輪とか言っていたな。
「玲音」
「…瑞樹、ちょっと言い過ぎた、ごめん」
「いや、玲音の気持ちも分かるよ」
俺は玲音の手を取り握った。
お互い薬指に嵌めてある指輪が共鳴するように輝いた。
少し手が暖かく包まれた。
「…玲音、俺っていったいなんなんだ?」
「瑞樹は瑞樹だよ」
「……そっか」
玲音は俺になにか隠し事をしている。
しかもそれはきっと俺にとってとても大切なものなのだろう。
紅葉さん達に頼まれた事だ、最後までやると決めている。
…でも、玲音をまた心配掛けては悪いという気持ちもあった。
どうすればいいのか、俺には分からない。
その日、俺達は四人で料理を作った。
それぞれの役割分担をこなして美味しそうな餃子を作る事が出来た。
でも、思ったより楽しい夕飯ではなかった…俺がいけなかったな…夕飯が終わったら話せば良かった。
玲音はいつもの元気さはなくて黙々と作業を進めて黙々と食べていた。
俺が玲音に声を掛けても「うん」と返事をするだけだった。
飛鳥くん達も流石に可笑しいと気付き、俺を気遣ってくれていた。
大丈夫だと笑ったが少し顔が暗くなっていなかったか不安だ。
二人が片付けを終え早々に帰ってしまった。
いつもならまだ残ると言ってくれたのに居づらくしてしまったな。
風呂に入り、自室のベッドで寝転がる。
どうにかしたいがこの場合、どうしたらいいのか分からない。
飛鳥くんとは喧嘩みたいな事はした事がないし、英次とはあるが気まずくなる前に英次が謝っていた。
俺も謝ればいいのかな、玲音は許してくれるだろうか。
起き上がり、自室を出た。
玲音は確か自分の自室に戻った筈だがらまだいるよな。
コンコンとノックする。
「…玲音、いるか?話がしたい」
返事は返ってこない、もう寝ているのか?
もう一度…今度は控えめにノックした。
やはり返事はなかった。
これ以上やると起こしてしまうから諦めて明日の朝、話し合おう。
謝るだけじゃなく…紅葉さん達の事を話したい。
俺は明日のために寝る事にした。
ーーー
ふと目を覚ました。
昼間寝てしまったからだろうか、寝ようと思って浅い眠りの中を行ったり来たりしていたら目が冴えてしまった。
携帯道具で時間を確認する。
夜中の2時か、変な時間に起きてしまった。
また寝たら朝起きられるだろうか不安だった。
それにもう眠気は何処かに吹っ飛んでしまった。
暗い室内で携帯道具の画面だけが明るく部屋を照らしていた。
そこで俺は異変に気が付いた。
「あれ、なんだこれ」
メール機能のアイコンの上に「New」と書かれていた。
検索に使った時はこんなものなかった筈だ、いつからあったんだ?
携帯道具はまだ分からない事だらけだから分からない。
とりあえずメールアイコンをタッチしてみた。
すると画面が切り替わり、普通のスマホのようなメール画面になった。
そして受信ボックスに1と書かれていた。
メールが来ている?誰からだろう、飛鳥くん達だろうか。
紅葉さんには俺が携帯道具を持っている事を知らせていないから来ないだろう。
飛鳥くんか英次しか分からず受信ボックスを開いた。
見覚えがない名前が送信者の欄に書かれていた。
誰でも俺にメール出来るんだった、まだ検索除外の設定にしてないし…俺の事を恨んでいる誰かの仕業だろうか。
メールになにか変なウイルスがあったら嫌だけどこの携帯道具は学院が用意したものだから大丈夫だよな。
メールを開き、俺は目を見開き固まった。
そこに並べられた言葉は誹謗中傷などではなかった。
『君がこの学院にやってきた理由を教えてあげる、皆が寝静まった真夜中の寮の裏庭で君を待つ』
「……俺が、この学院にやってきた理由?」
それは俺が一番知りたい内容のメールだった。
俺がこの学院に来た理由、それはきっと俺のこの内股にある模様にも繋がる…そう思っていた。
でも、罠じゃないなんて思えなかった。
嘘かもしれない、俺をこの学園に呼んだのは誓司先輩だ…だけどメールの名前は違う名前だ。
俺はメールに返信してみる事にした。
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