78 / 110
第78話
紅葉さんが俺の前に出て架院さんにそう告げていた。
架院さんはため息を吐いて、手を俺達に向けていた。
何をする積りなのか見ていたら、何もなかった手のひらが光り細長く鋭く光る剣が握られていた。
さすがの紅葉さんも「…架院?」と驚いていた。
初めて二人と知り合った解きはとても仲がいいと思っていたのに、これはどういう事なんだ?
紅野さんは怖くて腰が引けていたが、何とか紅葉さんを守ろうと両手を広げて俺達の前に立っていた。
「退いてくれる?邪魔するようなら、その自慢の腕を切り落としてしまおうか」
「…ぐっ、紅葉の命には変えられん!!」
「お兄様っ」
「待って下さい」
架院さんは俺を呼んでいる、だったら俺が行くのが普通だ。
二人に迷惑は掛けられないと紅葉さんと紅野さんの間を通る。
紅葉さんは俺の腕を掴んで止めてくれたが、優しく手を重ねて外した。
「玲音をよろしくお願いします」と一言だけ告げて架院さんの元に行くと、架院さんは俺の頬に触れて満足そうに笑った。
何故俺に用があるのかは分からないが穏便に済ませるためにはこれが一番いい。
光の剣を消して、架院さんに腕を引かれると俺と架院さんの足元が光り出して…光に包まれて俺達はその場から姿を消した。
※玲音視点
チェルシー堂で夜食を買って早く瑞樹に会いたい気持ちで早足で向かう。
この時間ならまだ練習しているだろう、そう思うほどに買い物は早く終わった。
今から戻ると瑞樹にメッセージを送ろうと携帯道具を片手に持つ。
もう一度、瑞樹としたいなぁ…一度と言わず何度でもしたいと思うのは恋人として当然だと思う!
契約だけじゃなくて、瑞樹を愛したい…俺の全身で…
今夜誘ってみようかな…と頭の中でピンクな妄想をしていたからいつもなら気付く反応に遅れた。
校舎の入り口付近にある誰も使われてない空き教室の前を通ったら、いきなりドアが開き誰かの手が伸びてきて腕を掴まれ思いっきり引っ張られた。
「っ!?」
いきなりの事で受け身が出来ず、床に仰向けで倒れた…携帯道具が床に転がり落ちる。
頭がジンジンと痛みが走り、眉を寄せて暗い教室の中を睨む。
そしてすぐに誰かが俺の上に馬乗りになり、覆い被さってきた。
見えなかった室内が月の光で明るく照らされ驚きで固まった。
ソイツは俺を見て不気味なほど嬉しそうに笑っていた。
覆い被さってきた奴は俺の両手を恋人繋ぎで握ってきた。
「…会いたかった、僕の王子様」
見覚えがあるヘドが出る顔があり、嫌悪感で顔を歪ます。
もう二度と会う事がないと思ってたのに、なんで学院に通っているんだ。
ずっと俺に見つからないようにして隠れて過ごしていたのだろうか。
……俺に復讐するために…
俺は抵抗しようと両手を思いっきり振るとあっさり手を離してきた。
それだけだったら良かったが、すぐに腰に下げていたクマの形の入れ物から注射器を取り俺の首筋に挿し中の液体を流す。
あまりの痛みに顔をしかめて首筋を抑える。
ドクドクと心臓が激しく脈打つ。
ソイツは嬉しそうに顔を赤らめて俺を見て中身がなくなった注射器を床に投げ捨てた。
「…な、にした?テメェ」
「貴方があんな事をするから、そろそろ僕も限界だったんですよ」
何を言ってるのか分からないし、理解したいとも思わない。
それに今は両手を拘束されてるわけじゃないのに、まるで意思がないみたいに体がピクリとも動かない。
……それだけじゃない、苦しい。
この感覚が酷く覚えがあり、顔を青ざめる。
体が熱を持ったように熱くなり、下半身を見るとズボンを押し上げているのが見えた。
そんな俺の反応を見つめていて余計に笑みを深くさせた。
「…貴方があのバカ姫のものになるのは我慢出来ませんでしたけど、人間など簡単に殺せる…それより貴方に会えるという気持ちが強かったのです……それなのに」
だんだんトーンが低くなり俺の頬を愛しげに触れていた。
チラリとシャツをはだけさせて、俺の唇に首筋を押し付けた。
それだけで目を見開き、喉が余計に渇く。
血が……ほしい…
「あの忌々しい顔は今でも覚えています、僕達を引き裂いた男……何故アイツが次期王を名乗っているんですか?下級従者の分際で」
Yシャツを脱いで、俺の下半身に手を這わせて軽く刺激を与えてくる。
こんなもの反応する筈がないのに、薬の力で嫌でも快楽に変わってしまう。
嫌だ、俺は瑞樹でしかイきたくない…瑞樹だけだ………瑞樹。
唇が触れてしまいそうなほど至近距離で俺の顔に顔を近付けた。
瑞樹、瑞樹の気配を感じる……今、君のところに行くよ。
「……あの時のように僕の血を飲んで、玲音様」
「ぐっ…あぁぁっ!!!!!」
俺は獣のように心の底から叫んだ。
むき出しの首を掴んで、逆に押し倒した。
穢れすぎたお前と瑞樹はあまりにも違いすぎる。
ともだちにシェアしよう!