92 / 110
第92話
「指輪、返してください」
「何故?そんなに大事なもの?」
「はい」
「君には相応しくないよ」
「返してください」
架院さんは俺に指輪は相応しくないと言う、自分でもそうかもしれないと思う。
復讐のために力を返してくれなんて、皆に信頼されている今…する事ではない。
でも俺を狙っていたのなら、最後に終わらすのは俺の役目だ。
架院さんは真剣に見つめ返す俺に諦めたような呆れたようなため息を吐いた。
「そんなに森高学が好き?」と悲しげな顔で呟いてきた。
その言葉を聞き、俺と玲音は驚いて架院さんを見つめた。
「…えっと…え?」
「もういいよ、僕は指輪を持っていない」
「じゃあ指輪は…」
「櫻様が持ってるよ」
櫻さん…やっぱり会いに行かなくてはいけないのか。
架院さんが絡んでなければ大丈夫か、櫻さんの場所を玲音に聞こうと後ろを振り返ると架院さんに耳元で「櫻様は今この学院にいないよ、もう少ししたら帰ってくると思うけど」と囁かれた。
少し距離があったのに、もう距離がなくなり腕と首を掴まれる。
首を締められているわけではないけど、昨日の事を思い出して緊張が走る。
すぐに玲音が手を握ると黒いもやのようなものが出てきて黒い大剣が握られていて、俺達の方に近付いてくる。
しかし架院さんが手をかざして俺達と玲音の間に見えない壁のシールドが張られた。
一瞬止まったが、すぐに大剣を振り下ろしてシールドを破壊しようとする。
ヒビが入るが、壊すのに時間が掛かりそうだった。
「…相変わらず怪力だな、アイツは…」
「架院さん、離してください…俺は行かなくてはいけないんです」
「………玲音のところに?そんな事、許さない」
俺は櫻さんのところに行こうと思っていたが、架院さんは玲音のところだと勘違いしていた。
櫻さんが何処に居ても行くつもりだったが架院さんに掴まれていたら何も出来ない。
ガンガンッと玲音が攻撃を繰り返していて、ヒビが大きくなった。
架院さんは一歩後ろに下がると足元に魔法陣が広がった。
これってもしかして紅葉さん達といた時に架院さんが使ったワープ魔法ではなかったか?
今度は何処に行く気なんだ、早く櫻さんのところに行かないと…
「架院さん、俺は指輪を…」
「聞きたくないよ、そんな事…」
「んんっ!!」
唇と唇が触れ合い、くちゅと舌が侵入してきた。
ガラスのようなものが割れて玲音が走ってくるのが見えて俺の視界は真っ暗になった。
少し息苦しく感じながら目が覚めたらそこは見知らぬ部屋だった。
見た事のない古代文字が壁にぎっしりと書かれていた。
俺はベッドに寝かされているようで、手足には分厚い手枷と足枷が身に付けられていた。
少し引っ張るとジャラジャラと音がして、昨日と同じだなとため息を吐く。
そして昨日とは明らかに違う事が一つだけあった。
知った感覚は体を高ぶらせる、それは契約の時のものだった。
何故、今…こんなに興奮しているのか分からない。
「…瑞樹、目が覚めたようだね」
「か、いんさ…」
「ねぇ、森高学を始末したら君はずっとここに居てくれる?」
架院さんはさっきから何を言っているんだ?俺が学兄さんを好きとか……それじゃあまるで…
架院さんが俺の頭を撫でていて、そのあまりの優しさと残酷な言葉がちぐはぐでどれが本当なのか分からない。
体の反応を隠すように足を合わせようとしたら、架院さんに足を掴まれて広げられた。
反応しているソコを見られて羞恥心で顔を赤くする。
くすぐるように爪で軽く引っ掛かれるとビクッと腰が浮いた。
あの後、俺と架院さんは会っていないから心境の変化なんてなかった筈なのになんで心の底で求めているんだ。
「どうして興奮してるの?」
「…ふっ、ぅ…」
「この状況に期待してる?それとも…森高学となにしてたの?」
ぐっと少し強めに握られて痛みが走るが、萎えるどころかズボンを押し上げていた。
ずっと学兄さんについて話している架院さんが不思議だった。
今この状況とどう関係しているのか…架院さんは学兄さんの婚約者で好きだから…?
そう思うとズキリと胸が痛んで、より快楽が増していった。
俺の心には変化はない、だとしたら架院さんに変化があったのかもしれない。
櫻さんと架院さんを二人きりで置いてきてしまったが、何を話したのだろうか。
「櫻さんとなにか話したんですか?」
「君を誰のものにもならない、魔物にとっての宝だと言っていた」
「……櫻さんが」
「瑞樹に近付くなと言われたけど、これは瑞樹から近付いてきたから僕は悪くないよね」
「体が熱いんだ、なんでかな」と熱を持った声でそう囁かれた。
架院さんにも俺の熱が伝わっているという事か?
玲音と誓司先輩とした時はそんな事一度も亡かった。
なんでだ、初めての感じで恐ろしくて…でも熱はどんどんと上がっていく。
架院さんとすれば指輪は手に入るだろうが、感情が誤作動を起こしたようでするのが怖かった。
櫻さんはこうなる事を分かっていたから架院さんに近付くなと言っていたのか?
てっきり俺を攻撃してきたから危険なんだという理由だと思っていた。
そうだとしたら架院さんと契約するのは、この症状が何なのか分かってからがいいだろう。
早く復讐をしたいという気持ちと、こういう事は勢いでやるべきではないという気持ちがぶつかっている。
「…架院さんは、俺の事…好きなんですか?」
「……好き………そうだね、大好きだよ…他の奴を映す君の瞳をくりぬきたいほどに愛してる」
その瞳は冗談を言っているようには見えずに頬に触れて、下半身に手を這わせた。
すると軽く触れただけなのに、ビクビクと体が跳ねて下半身に違和感を感じる。
はぁはぁと息を吐きながらまさか、このくらいの刺激で…と顔を青ざめる。
触れていた架院さんも気付いたのか、ベルトを引き抜きズボンと下着に指を引っかけて一気に引き下ろした。
勢いよく出たそれは亀頭が濡れていて下着に向かって糸を引いていた。
イったのだと分かり、まだ治まらない熱にどうする事も出来ず架院さんにされるがままだった。
ほしい、ほしい…この男の欲望がほしい…無意識に腕を伸ばしていた。
「瑞樹、君…欲求不満だったの?」
クスクスと架院さんに笑われていたが、何の事なのかもう頭で考えられない。
いつもの脳内は、愛を求めていた…契約に反応する体だからだろう。
でも、今は愛ではなく…架院さんの欲望を全て吐き出してほしかった。
架院さんのズボンに触れて、前をくつろげる前に口を付けた。
これじゃあまるで飢えた獣のように架院さんを襲っている。
どす黒い感情が支配されていく、架院さんの手が手枷に触れるとパキッと外れた。
自由になった腕を伸ばして架院さんの膝に乗って抱きしめる。
本当はこんな事、したくない…話がしたいのに…
俺の感情は性欲という黒い感情で体を支配され、意識が上手く働けなくなる。
「架院様、抱いて…俺を気持ちよくして」
「…そうやって森高学も誘ったの?」
「学?…知らない、架院様だけだよ…俺の欲望は架院様だけのもの」
俺の瞳は真っ赤に染まり、それを見た架院様は熱い欲情した息を吐いた。
ともだちにシェアしよう!