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第100話

「私はまだ瑞樹様と共にいたい、知りたい…お役に立ちたい…そう思っております」 貴斗さんの気持ち、ちゃんと伝わりました…俺も同じ気持ちだから… まだまだ未熟で、一人じゃ何も出来ない俺を支えてほしい…そう思った。 もし櫻さんがダメだと言うなら俺が櫻さんに言いに行こう。 俺はゆっくりと頷いて、貴斗さんの申し出を受けた。 玲音は「同室者は譲らないからね!」と言っていて、貴斗さんはあくまで俺を守るために傍にいるだけだからと頷いた。 そして貴斗さんと別れて、玲音と部屋に戻った。 パーティーといっても飾りつけをするわけではなく、今日は少し豪華な食事を作る…それだけだった。 「瑞樹、チェルシー堂行く?俺いっぱい持つよ!」 「ありがとう」 玲音と一緒に廊下を出て、歩いていたら廊下の先が何だか少し騒がしくなっていた。 そこにいたのは生徒会長と小柄な瓜二つの顔の少年二人だった。 今ここで関わるわけにはいかないから、他の生徒のように道を開けた。 すると、ポンと軽く肩を叩かれた気がして隣を見る。 でもそこには生徒会長と小柄な少年二人しかいなかった。 振り返らないその姿を見て不思議に思っていたら玲音に腕を掴まれた。 「瑞樹、行こ」 「…あ、うん…そう…だな」 なにか気になるが、俺はそれ以上振り返る事はなかった。 パーティーに玲音と飛鳥くんと英次と貴斗さんと誓司さんと鳳さんを呼んだ。 鳳さんはカレーを見つめていて、一口口に入れた。 目を輝かせていて、黙々と食べ続けて気に入ってくれて良かった。 誓司先輩は鳳さんが増えていて警戒心むき出しだった。 一応説明はしたが、仲間ではなくても信用出来ない相手を傍に置くのは危険だと言う。 「瑞樹様には仲間が必要なんです、心から信用出来る仲間が…学院の権力者を何も知らないうちに傍に置くのは反対です」 「じゃあ俺はどうすればいいん?おチビちゃん」 「てめぇ、ぶっ殺すぞ!!」 「誓司先輩!!」 誓司先輩が掴みかかろうと手を伸ばすから、腕を掴んで止めた。 人の事を知るには傍にいる事が一番だって思った。 玲音も初対面から一緒にいて、信頼関係を築いたんだ…きっと彼も… 挑発している鳳先輩は楽しそうにしているが、仲良くする気がないように思えた。 元々俺達と馴れ合いをするために仲間になりたいわけではないらしいからそれはまぁいい。 だけど俺は、仲間達を傷付けるというなら許さない。 「鳳さん、誓司先輩に謝って下さい」 「え?なんでなん?」 「誓司先輩は俺の仲間です、鳳さんが俺達仲間になりたいのなら同じ仲間の誓司先輩を傷付ける事を言ってしまったら謝るべきです」 「…仲良くしいって事?」 「仲良くは自由にしてください、ただ…仲間になりたいのなら酷い事は言わないで下さい」 まっすぐ鳳さんを見つめて言うと、ため息を吐かれた。 俺一人の判断で仲間になるかを決めるんじゃない、皆いるんだ…全員一致で仲間にする事に意味がある。 鳳さんは誓司先輩を見て「ごめんね」とニコニコしてだけど謝った。 誓司先輩は「もういい」と鳳さんから目を逸らした。 腕を掴んでいた俺の手に手を重ねて誓司先輩は笑った。 俺は腕を離して「ごめんなさい、痛かったですか?」と聞くと首を横に振った。 「痛くないですよ、でも瑞樹様がコイツを仲間にするなら姫の力をお使い下さい」 「……姫の?」 「それが明日の初めての櫻さんとの修行です」 そうか、もうバンドの練習は終わったんだ…脳内に残る紅葉さんの怯えた顔が焼き付いている。 謝りたいけど、また怯えさせてしまうよな…学兄さんは好かれていたから、こんなに人間が嫌われているなんて思わなかった。 姫の力って指輪とは違うのだろうか、よく分からないから明日櫻さんに聞いてみよう。 小声で話していたから鳳さんは会話内容が聞こえていない様子だった。 玲音の前髪を上げて「うぉっ、いっけめーん」とふざけていて手を思いっきり叩かれていた。 ちょっとした騒ぎがあったが、パーティーは無事に終わり…皆で後片付けをしたから特にする事がなくなった。 「玲音、先に風呂に入っていいよ」 「うん!じゃあお先にー」 玲音が風呂に向かい、俺はソファーに座ってなにもする事がなくて携帯道具を持って弄っていた。 するとメッセージを知らせる音がして、新着があった。 開くと櫻さんからのメッセージで今から外に出れるかという内容だった。 何だろう、誓司先輩は何も言ってなかったけど… 風呂場からシャワーの音が聞こえるから、玲音に大きな声で「今から櫻さんに会ってくる!」と言った。 するとシャワーを止めて、風呂場のドアを開けて上半身だけ出した玲音が出てきた。 「一人じゃ危ないよ、俺も」 「玲音は風邪引くから温まってきなよ、すぐそこだから」 「いやいや、ちょっと待ってよ!」 もう夜遅いし、あまり出歩く人もいないから大丈夫だろう。 玲音が腰にタオルを巻いた状態のほぼ全裸で風呂場から出てきた。 玄関を開けるところだったから本当に風邪を引くと玲音に戻るように言ったが付いていくと聞かなかった。 実は櫻さんに「玲音は置いてきてね」と言われているから連れていけない。 玲音に聞かせたくない内容だからだろうけど、何の話なのかな。 玄関前で会話をしていたら、ガチャとドアノブが回された。 出るつもりだったから鍵が開いていて、そのまま俺はよろけながらドアを開けた人物を見つめた。 「…玲音、なんて格好をしているの」 「げっ……」 「櫻さん」 部屋まで迎えに来てくれたのか、櫻さんが立っていた。 玲音に冷たい眼差しを向けられて、肩を震わせていた。 櫻さんに肩を掴まれて「行こう」と言われたから玲音にしっかり温まれよと伝えて部屋を出た。 玲音はしばらく動けなくなったとかならなかったとか… 櫻さんの後を付いていき、歩くと一つの部屋に到着した。 確か今朝までお世話になった櫻さんの部屋だ、まさかこの短時間でまた来るなんて… 「どうぞ」 「お邪魔します」 櫻さんの部屋に入り、リビングのソファーに座った…俺と玲音の部屋よりふかふかだ。 櫻さんがキッチンに向かい、飲み物を持ってきてくれた。 てっきり紅茶とかお茶だと思っていた、でも明るい黄色のそれはオレンジジュースだった。 最近じゃ飲まなくなったそれは、幼少期の頃好んで飲んでいた。 オレンジジュースのコップを手に持って飲むと酸味と甘味の絶妙な味を懐かしく思う。 櫻さんにとって玲音とそう変わらない俺は子供なのかもしれない。 「俺、昔これ好きだったんですよ」 「………そう、今は好きじゃなかった?」 「いえ、久々に飲んでまた好きになりました」

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