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第103話
『彼は彼女だ、それ以外の何者でもない』
「アイツははっきりそう言ったんだ、アイツは森高学じゃなくて昔愛した女の面影を追っているだけなんよ」
「…だから、鳳さんは助けたいって言ったんですか?」
「うん、そう…アイツにとっては余計なお世話だったみたいだけどね」
鳳さんが何故生徒会長を助けたいのか、分かった。
俺に出来る事ならしたいけど、本人がそのままで幸せなら学兄さんに洗脳されているわけでもないし、俺に出来る事あるのかな。
やけくその理由も、知りたい……自分で選んでる事なのになんであんな不安定な顔をしているのだろう。
きっとあの顔で鳳さんは何度も拒絶されてもほっとけないのだろう。
生徒会長に直接話を聞くのは学兄さんが許す筈もないし…
かといって、生徒会に知り合いがいるわけでもない。
「俺の話はもうアイツの耳には届かない、だから君に協力してほしいんよ…人間なのに魔物と互角の力がある不思議な君ならきっとアイツも心を開いてくれると思う!」
「…いやいや、俺…魔法使いじゃないんですが」
「えーそう?吸血鬼の王と王子も仲間に引き入れてるからてっきりそうかと…」
玲音と櫻さんは初対面から悪い印象ではなかったから仲良くなるのも早かっただけだ。
生徒会長は今の俺が好きな人の敵としか見れていないだろう。
そんな中、仲良くなるのはかなり難しいだろう。
さすがの鳳さんも分かっているからとある提案をしてきた。
それは「アイツの周りから落とそう!」という内容だった。
周りって生徒会のメンバーではないのか?全部学兄さんの親衛隊ではなかっただろうか。
「生徒会のメンバーなら生徒会長を落とすのも変わらないと思います」
「違うって、アイツの傍に補佐の双子がいるんよ、あの二人は森高学の親衛隊じゃないから話せる相手だよ」
そういえば廊下ですれ違った時も双子が傍にいたな。
あの双子から仲良くなれば確かに生徒会長の事聞けるかもしれないが、双子はローズ祭の時も廊下の時も一緒にいたけど離れる時なんてあるのだろうか。
それに学兄さんの親衛隊じゃなくても、人間の俺と会話をしてくれるか自信がない。
俺ともう一人誰かを連れてくれば少しは警戒されないかもしれないな。
鳳さんは生徒会長の知り合いだから双子も話を聞いてくれないそうだ。
双子だけになる時、鳳さんに聞いたら即答で答えた。
「そりゃあアイツと森高学の密会の時以外ないね」
「………みっ!?」
「知らんの?結構有名よ、森高学は親衛隊の奴らと気持ちいい事してるって」
「……姫、だからですか?」
「さぁ知らん、淫乱姫だからじゃないん?」
鳳さんはクスクス笑っていた、俺は学兄さんの事知らなかった。
親衛隊の人達と……でも学兄さんは姫じゃないから契約は出来ない筈だ。
バレたりしないのだろうか、櫻さんの方を見ると「上手くやってるみたいだよ、誰の入れ知恵か分からないけど」と言っていた。
学兄さんに入れ知恵をしてる人がいる?それって学兄さんの親衛隊の中に学兄さんが姫じゃないって知ってる人がいるって事なのか。
それも心配だけど、淫乱姫という言葉が深く胸に突き刺さった。
…俺も二人としたし、契約とはいえ淫乱……なのかな。
気持ちよくなったのは確かだし、落ち込んでいたら櫻さんが俺の頭を撫でた。
「さてと、鳳くんはもう大丈夫そうだね」
「ありがとね、みずっちゃん」
「みずっちゃん?」
「親しみだって、可愛いやん…みずっちゃん」
初めて言われたあだ名にびっくりはしたが少しだけ歩み寄ってくれて嬉しかった。
鳳さんが人間の俺が平気だったのは、きっと人間の姫を愛していたからなのかもしれない。
玄関まで鳳さんに付いていくとここでいいと言われて別れた。
櫻さんに「玲音が心配してるよ」と言われて、部屋に帰る事にした。
※有栖視点
甲高い声で艶かしく俺の上で跳ねる小さな体をボーッと見つめる。
脳内では、アイツの声が何度も何度も再生される。
『アイツは魂が一緒でも俺達が愛した女じゃねぇ!!目を覚ませや有栖!!』
「……そんな事、言われなくても分かってる」
「…はぁはぁ、え…?」
俺の呟きを拾った姫が俺を見下ろして濡れた瞳で俺を映す。
腰を軽く動かすとまた何も考えられないほどに乱れる。
何も考えたくない、何も…もう戻れないんだ…姫を手にしてしまった俺は…
姫がイって、俺の体の方に倒れていった…肌が密着する。
今日もイけなかった…またこの後一人で自慰をしなきゃな。
姫の後処理を済ませて、シャワーを浴びて風呂から出る。
洗面所の前に立って今の自分を見つめて苦笑いする。
「俺は、いつからこんな汚い体になったんだろう」
銀色に降るあの凍るような寒さの冬の日を思い出す。
あの日に戻れたら、俺はなにか変われただろうか。
もう涙もあの日に渇れてしまって、涙もろくに出ない。
自分では抜け出せないところまで来ているんだ。
唇を噛みしめて床に崩れ落ちる、助けられるものなら助けてくれよ……理生
ーーー
※瑞樹視点
帰ったら玲音が寝ていたから、翌日鳳さんの過去は話さず、鳳さんが生徒会長を助ける作戦を玲音に話した。
皆にも話すがまずは玲音だ、玲音は学兄さんが密会している事にドン引きしていた。
「あのうるさいのとよく出来るよなぁ」
「…お、俺もちょっと喘ぎがうるさかったかな」
「瑞樹は可愛いからいいの!もっとあんあん言ってほしいくらいー」
ぴとっと体をくっつけて甘えてくる玲音が可愛いくて微笑む。
とりあえず学兄さんの性事情は置いといて、生徒会長の留守を狙って双子に話しかける作戦を考えなくてはいけない。
飛鳥くん達も部屋にやってきて、学院に向かう道の中、皆で作戦を考える。
俺の他に誰かを連れていくと考えてるが、誰が一番警戒されないだろうかと考える。
大人数で行くと警戒されるからやっぱり二人だよな。
玲音なら人懐っこいし、警戒されないかもしれないな。
「玲音はどう?」
「俺?行く行くー!!」
「図体デカイやつ二人が行ったら警戒されまくりやろなぁ」
理想は双子と同じくらいか少しだけ高いくらいだと鳳さんが教えてくれた。
この中で小さい身長と言えば、誓司先輩だけど誓司先輩に悪いかなと思って言い出すのためらっていたら、その前に鳳さんが「彼は姫騎士だから間違いなく怯えられるねぇ」と言われた。
じゃあ誰もいないんじゃないか?あの双子と同じように小さい身長の子はいない。
誰か仲間以外に探すとなっても人間だと知られた今、簡単にはいかないだろう。
飛鳥くんは少し考えて「いるかもしれない」と答えた。
皆いっせいに飛鳥くんの方を向いて、期待に満ちた顔をする。
「飛鳥くん、本当?」
「お、おう…俺の友人だけど小さな体の奴がいる、童顔だから警戒もされねぇだろ」
飛鳥くんの友達か、それなら信用出来るかもしれない。
でも人間は受け入れてくれるか分からないから、飛鳥くんも絶対とは言えないようだった。
とりあえず聞いてみるという事で飛鳥くんの友人に頼る事になった。
※飛鳥視点
瑞樹が困ってるから瑞樹のために友人を紹介する事にした。
琉弥なんだが、半端者の俺を受け入れてくれた琉弥ならきっと…
そう思っていたんだ、教室にいた琉弥に会うまでは…
「あー、人間だって言われてた子」
「…俺の兄なんだよ」
「姫の弟だからそうなるのか…でもちょっと怖いな」
琉弥は瑞樹の事知らないから当然の反応かもしれない。
……けど、何も知らないのにそう言われるのがとても腹立った。
琉弥は兄貴の事を怖がっているから瑞樹もだと思いたい。
このままだと瑞樹のために役立てない、どうするか。
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