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◇新入社員研修*拓哉

 その翌日。  集合研修の初日の、朝。  新入社員の集合研修の会場である本社の研修室に着くと、資料が手渡されて、席を指定された。何人かずつグループを作るらしい。  何だか朝から張り切っていて、すごく早く着きすぎてしまった。  何だかな。オレ。  すげーやる気とか。  ……おかしい気がする。  まだ人もまばらな中、周りを見渡しながら指定された自分の席へと向かった。  決められた座席に座って、配られた書類を読んでいると、近寄ってきた誰かが「あ」と声を出して、オレのすぐ近くで立ち止まった。  ふ、と目をやると、昨日の、「織田圭」。 「あ――――……織田?」  言うと、織田は、嬉しそうな顔をして、にっこり笑った。 「うん。席、また隣だね。織田 圭だよ、よろしく」 「オレは、高瀬 拓哉」 「うん、覚えてるよ」  織田が、嬉しそうに、笑う。  やっぱり何だか――――……。  素直な笑顔が――――……ちょっと可愛いなと思ってしまった。  ……つか、こいつ、男だっつの。  女が少ない職場とは言え、でも同期に女も居るんだから、せめて女を見ろよ、と自分に対して思うのだが。  勝手に感じる気持ちは、どうする事もできず。  ……隣同士か。  1カ月位続く集合研修。もしかしてずっと隣か?  ……縁があるな。  素直な、嬉しそうな笑顔を見て、ふ、と笑ってしまいながら。 「よろしくな、織田」  そう言って。  さらに嬉しそうに緩んだ瞳を、オレが見つめると。  また息を飲んで、数秒固まってる。  ……はは。  ほんと、かわい……っと。  だから、織田は男。  ……少しオレ浮かれすぎ。  ――――……気、引き締めねーと。    なんて思うのだけれど。  かくかくおかしな動きの織田を見てると、ぷ、と笑ってしまう。 「とりあえず座ったら?」  ――――……昨日も同じようなセリフを言ったような?  なんて思いながら。  微妙な動きの織田を見つめつつ。  ――――……微笑んでしまう自分が、やっぱり不思議だった。

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