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◇特別に*拓哉

 どうしてこんなに。  ――――……可愛いんだろ。 ◇ ◇ ◇ ◇  織田が行くなら行く。  そんな風に言って、参加を決めてしまった。 「オレが行くなら行くの?」  と、織田が驚いたように聞いてきた。  前の花見の時、高瀬が行くならと言われたから、なんとなくその流れで言ったのだけれど。  ――――……なんか自然と言ってしまったけれど、やっぱり、おかしいか?  戸惑っていたら、じゃあ行く、と笑った織田に少しほっとした。  急に決まった飲み会だったのに、同期のかなりの人数が参加するらしい。かなり店を探したらしいけど、広い座敷の店が取れたとスマホに連絡が来た。  一緒に終わった織田と何人かと一緒に、店に向かった。  皆、研修で詰め込まれて考え尽くして、相当鬱憤がたまってるんだと思う。  しょっぱなからかなり飛ばしてて、あまりにうるさくて、2階が座敷だけの貸切状態の店で良かったと思ってしまう。 「織田、唐揚げ来た」 「ありがと」 「焼き鳥もきた」 「ん」  店員から受け取ったものを、織田の前に並べてると、織田がぷ、と笑い出した。 「自分で取るから、良いよ、高瀬ー」 「ん?」 「さきからオレの世話ばっかしてるし」 「……そうか?」 「オレの好きなもの、オレの前に並べてくれてるでしょ」  クスクス笑う織田に、まあたしかに、と苦笑い。 「飲んでるかー!」  織田の肩に手をかけながら1人がなだれ込んでくる。 「おお……つか、かなり出来上がってるし」  クスクス笑ってる織田。だけれど。  かなり近く、肩を抱いたままの手に、若干イラっとする。 「織田もっと飲めよ~」 「うん」 「好きなお酒、何?」 「んー……レモンサワー」 「オッケー」  注文用のパネルで、レモンサワーを入れて。 「ぶどうサワーは?」 「好きだけど……」 「梅酒は?」 「飲めるけど……」  はいはい、と、ぽちぽち押していく。 「え? 何全部頼んだの?」 「たまにはお前も羽目はずせー、なんかいっつも可愛いキャラでいないでさ」 「可愛いキャラって何だよ……」  ぷ、と笑いながら、織田は目の前のビールを飲んだ。 「研修中もさ、お前っていっつもニコニコしてんじゃん。あの辛い研修で、一体何が楽しくてあんなにニコニコしてられんの?」 「え。 あー……いや、そんな事ないよ、唸ってる時だって結構あるし」 「いや、無いね。 オレの席からお前ってすげーちょうど良く見えるんだけど、いつも楽しそうすぎて、ほんと不思議」  西田の言葉に、あー……と言いながら、織田は苦笑い。 「絡むなよ、西田」  オレがそう言うと。「あ?」と振り返り。  今度は、オレの肩をがつっと掴んでくる。  ……果てしなく、迷惑。  でも織田から手が外れたから、まあいっか。 「お前も、いっつも涼しい顔しやがってー」 「涼しい顔?」  聞き返すと、織田が後ろで、ぷ、と笑ってる。 「何なの、高瀬って。そのルックスで、新入社員代表で、研修のテストの成績もダントツでさー。ひどくねえ?」 「ひどくないし。高瀬に絡むなー」  織田が西田の向こうでそんな事を言ってる。  何だか周りも巻き込んで、ほめられてるんだか、文句を言われてるんだか良く分からない時間が流れる。    更に、あれやこれやとアルコールを頼まれて、オレも結構飲まされた。    結構強い方なんだけど、さすがに熱くなってきたな。  なんて思いながら、ふと、気づくと、織田が赤くなってて、何だか随分、トロトロしだしていた。  眠そ。ていうか、結構飲まされたか。 「織田、平気か?」  まだ織田の隣に陣取ってた西田をどけて、織田の隣に座った。 「水頼む?」 「あー……うん、ありがと、頼んでくれる?」 「結構飲まされた?」 「うん? あー……飲まされたっていうか……まあ、自分で、飲んだけど」  あははははー、とか、笑ってる。  ……あ、これ、結構キテるな。  苦笑いしながら、水と、ウーロン茶を頼んだ。 「高瀬も、結構飲んだ?」  じ、と見つめてくる。 「少しだけ赤ーい。 かわいー、高瀬」  クスクス笑いながら、じっと見つめてくる。  ……可愛いって。  ――――……何だそれ。  ――――……これは、かなり酔ってんな。

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