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◇高瀬の居ない飲み会*圭
今日は、久しぶりに学生時代の友人達と飲む事になっていた。
午後の休憩時に話した時、高瀬もそうだと知った。
「高瀬は何人位で飲むの?」
「んー……10人位って言ってたかな。ちゃんと聞いてない」
「何の集まり?」
「ゼミの仲間」
「へえ。じゃあ、プログラムとかに詳しい人達?」
「まあそうだな。 同じような仕事についてる奴らも多いよ」
「……飲みながらそういう話すんの??」
「どうだろ……前は授業の話とかになるからしてたけど。卒業してから初だから」
「オレそこに居たら、酔えないかも……頭使いそう」
なんて言ったら、高瀬は、ぷ、と笑った。
「なんか、オレ、織田が居ない飲み会が久しぶりかも」
急にそんな風に言われて、そういえば、オレもそうかも、と思う。
同期、同僚、チーム……何にしてもいつも高瀬は一緒だから。
「オレ居ないんだから、あんまり飲むなよ」
「……今日は、高瀬、連れて帰ってくんないもんね」
オレ、何となく苦笑い。
「でもオレ、高瀬に会うまでは、ちゃんと自分でどうにかしてたよ?」
「――――……まあそうだろうけど。 とにかく飲みすぎんなよ?」
ふ、と笑いながら高瀬に言われ。
うん、と頷いた。
「高瀬はどこで飲むの?」
「新宿」
「あ、オレも。やっぱり皆が出やすいとこってなると、そこになんのかな?じゃあいっしょに新宿まで行ける?」
「集合何時?」
「18時って事になってる。遅れたら店に直行」
「同じようなもんだな……じゃ一緒に行こうぜ」
と、そんな会話をしてから、仕事に戻って、定時に無事仕事を終えた。
高瀬と一緒に新宿まで出て、別れて。
その後集合した、友人達と、店に入った。
「圭、仕事どう?」
「プログラムなんて、よく未経験で飛び込んだよなー」
「うん。オレもそう思う」
あはは、と笑うと、皆、苦笑い。
「出来てんの?」
「うーん……同期がすごいできる人でさ、助けてもらって何とかできるようになってきたかも。 先輩も良い人だしさ」
そんな風に話してたら、ふ、と高瀬を思い出して。
いつもこういう飲み会の時、必ず居る高瀬の姿が無くて、ちょっと寂しいと感じる。
もちろん、仲の良い奴らで、話してて楽しいし、顔を見れて嬉しいし。
でもなんか、高瀬、居ないなー……。
なんて、思ってしまって。
あぁ。オレ、どんだけ……。
なんて、思ってしまう。
いやいや、だめだ。
どんだけ依存して、のめりこんでるんだか。
高瀬に彼女とかできて、オレとあんまり居てくれなくなった時、ほんと、どーするんだ。
もうちょっと他にも目向けて楽しまないと。いや、楽しまないとってそもそもおかしい。 もちろんほんとに、皆と騒ぐの、楽しいものなんだし。
「なあ、メニュー貸して、なんか美味しいの飲みたい」
「あまいやつ?」
「うん、甘いやつ」
「これうまいぞー」
「え、どれどれ??」
皆でわいわいとりとめもなく、話していると。
やっぱり、これはこれで、すごく楽しいとも、思う。
「彼女できた?」
なんて、話題を振ってきた奴がいて、皆それぞれ話してく。
学生時代から付き合いが続いてる、最近別れた、新しく好きな人がいる。そんな皆の話をうんうん聞いていたのだけれど。
「圭は?」
話さずにいたら名指しで聞かれて。
「オレは…… うーん、気になる人はね、居るんだけど」
「え、珍しい。今彼女居ないんだ。 なに、アタックしないの?」
「……そう、だね。しない、かな……」
「彼氏持ち?とか?」
「いや……」
「……すごい年上とか?」
「……いや」
「バツイチとか? 何か問題ありな人?」
「……問題かー……」
……男、て事??
さすがに言えないけど。
「おいおい、変な女にひっかかんなよー?」
「圭、心配だな……」
むぎゅ、と左右2人に抱きしめられてしまう。
「マジで、やめて」
笑いながら引き離す。
「可愛がられて、すごい上の女とか――――……急に結婚しますとか無いよな?」
「いや、それはない……」
……女じゃないからなあ……。
「何かあったら言えよー」
「そうそう、オレらはずっと友達だからなー」
「うん。……ありがと」
「男が好き」って言っても、そう言ってくれるかなあ、なんて、少し思ってしまう。やっぱり、年上でも彼氏持ちでも、女の人だったら、言えるんだろうけど。男って、やっぱり、簡単には言えないなー……。
「……まあでも、毎日、楽しいんだけどね」
「なら良いけど」
「だよなー、好きな人いると、毎日なんか楽しいよなー」
「……うん、そうだね」
ふ、と笑う。
――――……どうしても 高瀬が浮かんできてしまって。
なんだか少し、胸の奥が、痛かった。
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