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◇
高瀬といつも、近づくと。
高瀬のつけてる香水が微かに香る。
それ位、近づいたんだって、そう思った瞬間もまた、どき、とする。
勝手に反応する心臓に焦るけど、高瀬に気づかれないように。
「ここらへん……」
「うん。あ、これ、焼き鳥屋の人に撮ってもらったやつか」
「うん、そう」
頷くと、高瀬が、ふ、と微笑む。
「ああいうの頼むの、織田、得意だよな」
「ん? 得意?かな?」
「頼むのも得意だけど、頼まなくても向こうから撮ろうかって話しかけられるとか。もう、特技だよな」
「え。そう?なのかな??」
そんな特技ってある?と、正直、良く分からないけど、高瀬がクスクス笑ってて、楽しそうだから。
まあ、いっか。と流してると。
「そういうのオレは出来ないし――――……すごい好きなんだよね」
「――――……」
…………ん?
……すごい、好き? て、言った?
「全部送っといて?」
「え、あ。 うん。全部――――……オレの1人のも??」
高瀬はマジマジと、オレを見つめて。
ぷ、と笑う。
「ん。織田のも。送って?」
「――――……っ」
赤面。
しないなんて、無理。
――――……好きとか言うし。
もう。高瀬って。ほんとに。
「……送るけど、落書きとかしないでね」
なんだかとっても照れくさいので、ふざけてそう言ったら。
面白そうにクスッと笑って。
「しないよ。――――……あ、でも。壁紙にしていい?」
「……………」
ブルブルブルブル。
言葉が出せず、ブルブル首を振ると。
高瀬はもう可笑しくてたまらない、という感じで笑う。
からかってばっかり、高瀬……。ほんとに。
もう、なんて返したらいいのやら。黙っていると。
「怒んないで、織田?」
クスクス笑いながら、高瀬が隣から覗いてくる。
「……怒ってる訳じゃないけど。……高瀬って、オレからかうの好きだよね」
写真を全部選択して、送信ボタンを押す。
「送ったよ?」
「ん」
高瀬がスマホを出して、確認してる。
「織田、楽しそう」
「うん。楽しかった。ていうか、高瀬も楽しそうでしょ?」
「――――……ん。そうだな」
ふ、と笑って。
オレに視線を向けてくる。
「――――……??」
見つめられて、内心めちゃくちゃドキドキしていると。
「………織田と居ると、ほんと、楽しいから」
「――――……」
…………だから、ほんとに。
何て答えたら……。
「あと、オレ、からかってる訳じゃないよ。まあ……壁紙は、やったら怖いだろうからしないけど」
「……やっても怖くなかったら、やるの?」
なんかもう。
ドキドキしすぎて、茶化すしかできないオレに。
「織田が怖くないなら、織田が壁紙に居てもいいけど?」
おかしそうに、クスクス笑う高瀬に。
――――……なんかもう。
…………もう無理だ。
コーヒーを飲んで誤魔化していると。
「んー……なんか、仕事する気、しないなー?」
「え?」
「なんかまだ祭りの余韻、ない?」
「……すっごい、ある」
「だよなー?」
クスクス笑いながら、高瀬が背伸びした。
「――――……まあしょーがねえか。仕事するか……」
「うん」
立ち上がった高瀬に頷いて、オレはコーヒーを飲み終えて、紙コップを捨てる。
「なんか美味いランチ、行こっか?」
「うん、行く行く」
「それ楽しみに、仕事しよ」
高瀬が言ってくれた言葉に、嬉しくなって頷きながら、高瀬の隣に並ぶ。
なんか、いっつも、隣に高瀬が居て。
いっつも、優しくて。
居てくれるだけで、なんか、頑張ろうって思えて。
こうして居られるの。
いつまでかなあ。
まあ。職場だけなら、異動が無い限り、居られるかも。
社外でも、今みたいに、ずーっと、一緒にとか。
…………無理だとは分かってるんだけど。
やっぱり、少しでも長く、居れたらいいな。
最近色々考えていると。
結局たどり着くのは、いっつもいっつも、同じ事、だなあ……。
ぼんやり考えながら。
隣の、大好きな人を、見つめてしまうと。
ふ、と笑われて。
すぐ嬉しくなって。
うーん。
もう、意志の力じゃ、どうしようもないな、これ。
なんて、思った。
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