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◇両想いのキスと…。*拓哉

 織田が滑り落ちて行ったソファの下で膝を抱えて、座って。  ちら、とオレを見上げた。 「……オレと、したい? ほんとに?」  顔は赤いまま。  可愛くて、ふ、と笑ってしまった。 「したいって言ったろ?」  まっすぐ見つめてそう言ったら、織田は返事も無く、また膝に顔を埋めてしまった。 「……なんか、くらくらしてきた……」 「くらくら?」 「……結構飲んじゃったし……なんかもうさっきからいっぱいいっぱいだし……」 「織田、眠い?」  さっきすごく眠そうだったもんな。  くす、と笑ってしまいながら、そう言うと。 「……さっきまでは眠かったけど……もう今は、覚めちゃった。なんかびっくりすぎて、さ……」  少しして、顔をあげた織田が、オレを見つめて、にこ、と笑った。 「――――……高瀬がさ、オレの事、そういう意味で好きなんて……」 「――――……」 「……絶対ないと、思ってたから……」 「――――……」 「……うれしーな」  ふわふわ笑ってる顔を見てたら。  ――――……なんだか、たまらなくなってくる。  ソファから降りて、織田の隣に膝をついた。 「――――……織田、キスしてもいい?」 「え」  織田は、ふ、とオレをまっすぐ見つめて。  少し後、ほんの少しだけ唇の端を上げて、にこ、と笑った。 「いいよ。……ていうか、オレも、したい」 「――――……」  肩に触れて、少し引き寄せて。  オレをじっと見ていた織田の瞳が、重なった瞬間に、ぎゅ、と閉じた。  ――――……可愛いな。  重ねて、離して、また、重ねる。  触れるだけのキスが、すぐもどかしくなって。 「――――……織田、もっと、キスしていい?……」  そう聞いたら、目を開いて、ぱちぱちさせながら、オレを見つめて。  ふ、と瞳を緩めて笑った。 「……うん……したい」  赤い顔を、手で挟んで引き寄せて、少し深く唇を重ねる。  マジで。  ……可愛いんだけど、どうしようか。 「……ふ……」  小さく声を漏らした織田を、自分に密着させるように、片手で腰を抱き寄せた。 「――――……ん……っ……」  少し深くキスすると。織田が眉を寄せて、くぐもった声を出す。  可愛くて。止められなくなっていく。 「たか、せ……くるし……」  頬に触れてたオレの手首に、織田の手が触れて、きゅ、と握られる。    「――――……悪い……急すぎた?」 「――――……うー……」  咄嗟に謝ると、織田はぽふ、とオレの胸に顔を押し付けてきた。  ――――……何してんだ、それ。……可愛いな。 「……織田?」 「……高瀬、オレ……」 「うん?」 「――――……好きすぎて、困るんだけど……どうしよう……」  どうしようって――――……。  ――――……どうしようって、こっちのセリフだ。 「――――……はー……」 「……?」 「これ以上可愛い事言われると――――……止まんなくなるから、やめて」  そう言うと。  織田は、また恥ずかしそうに、俯いた。 「――――……いよ」 「え?」 「……良いよ」 「……何が?」 「――――……止めなくて、良いよ……?」  腕の中から、じっと、見上げてくる。 「だってオレ――――…… 高瀬、大好きだし……」 「――――……」 「――――……だから……高瀬なら、なんでも、良いし……」  何なんだ。  ――――……何で、こんなに、可愛いんだ。  言ってから恥ずかしくなったみたいで、俯いてしまう。 「……織田」    頬に触れて、そっと上げさせて、キスして。  抱き締めた。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「――――……」  不意に、目が覚めた。  もう夜が明ける頃みたいで。  カーテンの隙間から漏れる光で、部屋が少し明るくなってきていた。  腕の中に、眠っている織田の存在を確認して。  愛しさでいっぱいになって。  ぎゅ、と抱き寄せる。  結局、あの後、めちゃくちゃキスして。  ――――……とろん、としてる織田に、触れて。  手探りで、触れながら。  ――――……結局、最後まで、出来てしまった。  恥ずかしがり方はすごかったけれど、どこまでも受け入れてくれる織田が可愛くて。「高瀬大好き」と、うわごとみたいに繰り返されて。  まさか、最後までするなんて、思わなかった。  ――――……というか、抱き合える日が来るなんて。  ――――……抱き合ってる間。  自分がどれだけ織田を好きかを、死ぬほど実感した。    好きだとは思っていたけど、絶対拒否られると思っていたし、ある程度、自分にブレーキをかけていたんだと、思う。  男同士だって事も、少しはそのブレーキに、拍車をかけていたと、思う。  けれど、好きでいても、愛しても、良いんだと思ったら。  セーブしていた感情が、あふれ出したみたいに。  急激に、愛しさがこみあげてしまって。  自分でも、触れながら少し戸惑う位に、男の体に抵抗が無くて。  織田が乱れるのが、可愛くて、めちゃくちゃ、愛した。  抱いてる間、ずっと可愛くて、ずっと、幸せで。  気を失うみたいにふっと、眠ってしまった織田をタオルで綺麗に拭いて。もうそのまま布団でくるんで抱き締めた。  それから、しばらくずっと、寝顔を見ていた。  どうしても。どう引き締めようとしても、口元が綻んで、緩む。    生きてきて初めて、こんなに執着して、好きだと思った人間と。  ――――……しかも、相手は男なのに。  両想いに、なれるなんて。  しかも、お互い、ほとんど、一目惚れ。  ――――……奇跡に近いんじゃないかと思って。  幸せをかみしめながら、いつの間にか、眠りについたのを、思い出す。 「――――……」  眠った時と変わらない体勢で、織田は眠っていた。  全然動きもしないで、ぐっすり眠ってるみたいで。  ……結構酔ってたし。  ――――……最後、結構、無理させたし。  まだ当分、起きそうにないな……。  ――――……もう少し、寝とこ……。  織田の顔を、これ以上無い位、  超至近距離で眺めて。  可愛いな、なんて、  我ながら、ドロドロに脳みそ溶けてそうな事を考えながら。  またいつの間にか、眠りに、ついた。

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