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◇両想い翌朝*圭
「――――……ン……」
光が、眩しい。目が、開かない。
なんか……すごくだるいなあ、なんて思いながら、少し目を擦る。
ゆっくりと目を開けたら、明らかに自分の部屋ではない天井。
あれ?と思った瞬間。
「……目、覚めたか?」
低い、聞き心地の良い声が、すごく近くで響いた。
声の主はすぐ分かった。
……あ、高瀬の声……。
ああ…… また、泊まりに来ちゃったんだっけ。
「おは――――……」
言いながら上半身、少し起き上がって。
高瀬の声のする後ろを振り返って。
瞬間。
ものすごい至近距離って事と、
しかも、起き上がってた高瀬は、上半身は裸で。
え。
それ以上話し続けられずに、すぐに顔を高瀬と反対方向に戻した。
――――……ん???
……何で、高瀬、裸??
しかも……近すぎ……?
……ちょっと待って。
……オレ達って、一緒のベッドで、寝たの?
泊まる時はいつも、高瀬のベッドの下に、高瀬が布団を敷いてくれて、そこで寝てるのに。
今自分が居るのは――――……高瀬の、ベッドの上。
……なんで?
そこまで、考えた時。
昨日の事が、不意に頭によみがえってきて。
硬直。
え。
この記憶って――――……夢?
……思い出せ。
……ちゃんと、しっかりはっきり、思い出せ。
でも、裸の高瀬と同じベッドに居て、混乱しすぎて、全然ちゃんと考えられない。
その後。数秒。
「――――……」
ギギギギギと、まるで音がしそうな程に強張った首を無理やり動かして、高瀬を振り返る。
「……たかせ……?」
「ん?」
ふ、と優しく笑う高瀬は、もう一度見ても、上半身は完全に裸で。下半身にかかっている薄い布団の下は見えないけど。いや、むしろ怖くて覗き見る事は出来ないけど。
しかも、オレはと、言えば。
……この、ものすごくすーすーする、この感じは。
――――……確認するまでもなく…… 全裸なのではないだろうか。
「……織田、寝過ぎ」
クスクス笑いながら、高瀬は強張ったまま動けないオレの頬に触れた。
「――――……昨日疲れただろうから……起きるまで待ってたけど」
触れた指が、頬を軽くつまんでくる。
優しい触れ方に、硬直するしかない。
そして。
そっと、優しいキスが、唇に重なった。
「体、大丈夫か……?」
ふ、と、優しく緩む瞳。
動かない頭が、さらに停止した。
今、頭に浮かんでるのは。
夢じゃなくて、昨日、本当にあった事……?
「――――……た……高瀬……?」
「ん?」
「――――……あの……」
何を言ったらいいのか、悩んで、動けないオレに、高瀬は首を傾げた後。
触れてた指を、そっと、オレから離した。
「――――……織田?」
「高瀬、あの――――……昨日……オレ達……」
「……もしかして、覚えてない……?」
「……というか……夢なのか、ほんとなのか、今――――……混乱してて」
素直にそう言ったら、高瀬は、ふー、と息を付いた。
「……分かった。とりあえず、朝ごはん、作ってくる。その間に、整理してみて?」
「――――……うん」
優しい高瀬の言葉に、頷いた。
立ち上がった高瀬は上半身裸で、下にズボンをはいてて。
あ、よかった。全裸じゃなくて、と思ったオレを見下ろして。
目が合うと、オレの頭をクシャクシャと撫でた。
「どうする? ご飯の前に、シャワー、浴びてくるか? すっきりした方が良いだろ?」
優しい声に、ドキドキしながら、言われるままに頷くと。
高瀬は、クロ―ゼットから、いつも置いてくれてるオレの服を取り出して、ベッドの上に置いた。
「バスタオルはいつもんとこから出して」
「……うん」
頷くと、ふ、と笑んで。
高瀬は部屋を出て行った。
優しい。……朝からカッコ良すぎるし。
ふわふわ喜んでたけど、はっと、気づく。
それどころじゃない。
ええっと……落ち着け、オレ。
ちゃんと昨日の事、思い出せ。
「――――……」
オレ、昨日――――……。
高瀬と――――……?
……そんな訳、無いよね?
――――……いやいや、でも、さっき、高瀬、オレに、キスした。
この記憶全部、ほんとなのかな。
リアルだけど……。
高瀬が、オレの事をずっと好きだったとか。
オレに都合が良すぎて。
――――……ていうかオレ……。
めちゃめちゃ、好きって言いながら、高瀬と――――……。
そそそ、んなバカな…。
信じられなくて、夢な気がする。
ダメだ。
とりあえずシャワー浴びよう。
起き上がったら、全裸。
ベッドの下の方に遭った下着をはいて、昨日のお風呂の後に来ていた部屋着を、着た。
全裸、てことは。
高瀬と、一緒のベッドに寝てたってことは。
高瀬にさっき、キス、されたって、ことは。
この、夢としか思えない記憶、全部、本当なのかな……?
ぐるぐる頭がおかしくて、倒れそうな気分のままシャワーを浴び始めて。
キスマークに、叫びそうになる。
色んなとこに、残る跡と。
後ろも、なんか――――……違和感。
もう、夢だとか逃げようも無く、確信。
多分この記憶は、現実で。
高瀬が好きって言ってくれて。
オレも好きって言って。
――――……オレ、止めなくてもいいとか、誘うような事、言っちゃって。
最中もめちゃくちゃ好きって、言い続けて。
高瀬と――――……全部しちゃった。
かああああああああっ。
羞恥で、顔ばかりか、全身熱くなるって、あるんだ。
だめだ。恥ずかしすぎて。
無理無理。
まっすぐ立ってられなくて、鏡に、手をついてしまう。
酔ってたけど。
言ってた事は全部本気で。
酔ってたから言ったんじゃない。
全部、心で思ってた事で、嘘じゃない。
でもでも、絶対、酔ってなかったら言えなかった事だらけ。
酔ってなかったら、告白してすぐ最後までとか、絶対、そんな訳ないし……っ。
シラフの今。
――――……もうこのままどこかに隠れて、もはや高瀬の目に映りたくない位。
……恥ずかしすぎる…………っ
わーん、マジどうしようー!!!
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