46 / 235
◇
食事を終えて、一緒に並んで、食器を洗う。
それすら、めちゃくちゃドキドキする。
泡立てて食器を洗って、洗い桶に入れてるオレの手が、高瀬の手に触れてしまった。
「あ……ごめ、ん」
ドキドキが半端なくて、もう、手が震えそうな気がしてくる。
「――――……大丈夫だよ」
高瀬の、優しい声につられて顔を見て。
優しい視線に、どきん、と胸が弾む。
もう、なんか、息が出来なくなりそうなんだけど、どうしたらいいんだ。
本気で手がプルプル震えだしそうで、スポンジをぎゅーと握りながら食器を洗う。
すぐに洗い終わってしまったので、布巾を洗って、テーブルを拭きに移動。
高瀬と離れられて、少しほっとして。落ち着けーと自分に唱えながら、念入りにテーブルを拭く。その間に、高瀬が食器を流し終わった。台所に戻って、布巾を洗って、干す。
……洗い終わっちゃった。
うう。話さないと。一体、どこから……。
「――――……あのさ、織田」
「え?」
不意に呼ばれたと思ったら。
後ろから、ぎゅ、と、抱き締められてしまった。
「――――……っ」
ちょちょちょ、ちょ……む、むりっ!
思いながらも動けず、固まっていると。
「ごめん、なんか……すごい、戸惑ってる?」
「――――……」
「全然、目、合わせないし」
「――――……」
「……嫌だった? 昨日の」
「……っ」
プルプルプル。
思い切り、首を振る。
嫌だったなんて、ある訳ない。
嫌な訳ない。
大好きすぎて、すごい、嬉しい、けど。
戸惑いと、何でだろっていうのと、恥ずかしいのと、
なんかもう、どうしたらいいか分からないだけで。
「……嫌じゃ、なかった?」
「うん。 ごめん、いっぱいいっぱいな、だけで――――……」
高瀬の腕の中で、ゆっくり振り返って、高瀬を見上げた。
「――――……」
見上げた瞬間、かあっと血がのぼる。
だ、めだ、これ。
「…………っ」
でも、まっすぐすぎる視線から、外せなくて。
「また真っ赤――――……」
言った高瀬に、ぎゅ、と抱き締められた。
優しい感じで。
「可愛いなー、織田……」
「…………っ???」
だめだ、オレ、恥ずかしすぎて、憤死しそうなんだけど……っ。
「た、高瀬……?」
「オレ、織田が好きだよ。すげえ、好き。今まで会った中で、ダントツ、好き」
「――――……っ」
それは、オレも――――……。
オレも、そう、なんだけど。
強張っていたら。
ふ、と優しいキスを唇にされて。
ますます、赤くなってしまう。
「織田、ちょっと――――…… 平気??」
昨日、あんなことまでしたのに、キスごときで、死にそうになってるオレを心配して、高瀬がのぞき込んでくる。
「高瀬、あの、ね……あの……っ……」
「うん」
「――――……っ……ごめん、あの……高瀬」
「うん」
「……っオレ、……帰って、いい?」
「――――……」
「……まともに……話せない、から。一回、1人で……」
「――――……1人で考えたい?」
「……うん……」
「まあ……いいけど。 じゃあ、オレの話を聞いてからにして?」
そう言われて。オレは、高瀬をゆっくり、見上げた。
「昨夜、織田とキスしてさ、そのまま最後までしちゃってさ。……大事な事、言うのが、後になったんだけど」
「――――……」
大好きすぎる、まっすぐな瞳が、じっと、オレを見つめた。
「……オレ、織田の事が、本当にすごく好きだから――――……
オレと、付き合ってほしい」
「――――……」
オレも、好き。
――――……すごく、好き。
「あ、の……」
「いいよ、今答えなくて。1人になって、昨日の事とか、ゆっくり考えて、――――……オレのこの答えも、考えてきて?」
言いかけた返事を止められて、高瀬にそう言われた。
「オレも、ちゃんと考えておくから」
「……」
うん、と頷く。
「でも、落ち着いて考えるってだけで。 オレは、織田と付き合いたいのは変わらない。 織田の事が、大好きだから」
「うん。……オレも――――……高瀬、好き」
一生懸命、なんとか、それだけは伝えると。
高瀬は、ふ、と笑って。
オレの頭をくしゃくしゃ、撫でてくれた。
ともだちにシェアしよう!