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◇電話の約束*圭

   今週は、ずっと最悪だった。  何がって。  …………オレの態度。 高瀬への。  もう。今までどう接してたのかすら分かんなくなって。  返事もしないとと思うのに、考えれば考える程、分からなくなって。  まともに、話せなくなって。何気なく、避けちゃって……。って絶対不自然だったと思うし。  どうしよう。  ……今日金曜で。  高瀬とこのまま別れて帰ったら、土日、死んでしまうかもしれない……。  どうしよう、高瀬に、今日空いてるか、聞こうかな。  でも、1週間、話せてないのに、急に誘ったら……嫌かな。  どうしよう。  そわそわしながら、隣の高瀬に話しかけるタイミングを計りながら、午後の仕事をしていて。 「高…」 「なあ、織田」  オレが、やっと声を出して、高瀬がこっちを向いてくれた、同じ瞬間。  太一先輩に、話しかけられた。 「あ。……はい?」  咄嗟に、太一先輩の方を振り返る。 「なあ、織田、今日暇? ちょっと話しがあるからさ、付き合ってくれない?」 「あ……今日、ですか?」 「うん。今日が良いな。約束あるなら、いいんだけど」 「あ、いえ、無いです。約束は」  ……高瀬と、話したかった、けど。  でも今週、仕事に身が入らなくて迷惑かけたし。  その話かもしれないし。  ――――……断れないな……。 「付き合います。って、食事ってことですか?」 「ん、どっかうまい飲み屋行こうぜ」 「はい」  笑顔の先輩に、頷く。  高瀬とは、今日は話せないか……。  ――――……明日とか……空いてるかなあ。  聞きたい、けど。  なんかずっと避けてたのにここで、急に誘っても……。  何だかすっかり臆病になってて。 「――――……織田、さっき呼んだ?」  高瀬が言ってくれる。 「あ、の……」 「ん?」 「……あの、さ」 「うん?」  高瀬が、ふ、と笑ってくれる。  まともに話せてなくて。かなり避けてて。  それなのに。  全然変わらず、優しい、感じで。 「……夜、電話、して良い?」 「ん。――――……もちろん」  ――――……あ、良かった。  すごく、ホッとして。    先輩とご飯食べ終わったら、あとで、電話しよう。  電話に出てくれた高瀬なら、明日とか明後日とか、なんとか誘える気がする。そうしよ。うん。  それまでに、考えとかないと。  ――――……付き合いたいって言ってくれた事も。  めちゃくちゃ嬉しいんだけど。  ――――……ほんとにオレなんかと付き合って、いいのかなあ?とかさ。  高瀬、女の子に超モテモテなのに。  高瀬が、オレをそんなに好きな理由が、全然見えなくて。  そりゃ友達としてはさ。仲良かったけど。  それと、そういう意味の好きは、別だもんね……。  いいのかなあ、高瀬。ほんとにオレと付き合ったりして。  そこらへん、信じてないとかじゃなくて、  本気で、いいのかなあ??と思ってしまう。  あんな事してしまって、顔まともに見れない位恥ずかしいけど。  ……あれも。  高瀬、今は、ちょっと後悔したりしてないかなあとか。  ……色々思っちゃうってことも。  …………ちゃんと、話せたら、聞いてくれるかなあ……。  って、オレ、ちゃんと高瀬の顔見て、話せるかなあ。  ……とりあえず、電話する約束は、何とかできたし。  電話で、色々話してから、会うっていう約束を……。  悶々と考えていた時。 「織田、今日残業した方がいい?」 「あ、残業、ですか??」  太一先輩を見て首を傾げると。 「もう定時過ぎてんだけど。残業してく必要ある?」 「あ、いえ、来週で平気だと思います」  ……高瀬の事考えてたら、定時になってた。  びっくり……。  ……もう、来週、がんばろ……。 「じゃ行こうぜ」 「はい」  まだ残ってる高瀬と渡先輩に、お先に、と告げて。  オレは、太一先輩と、退社して、居酒屋に向かった。

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