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◇付き合い記念*圭1

 何だか物凄く、ポワポワと浮いてるみたいな気持ちのまま、シャワーを浴びて出てきたら、高瀬が色々作ってくれていた。 「織田、ちゃんとご飯たべてきた?」 「ううん。 太一先輩、呼び出されちゃって」 「呼び出された?」 「うん」  言いながら、高瀬の出してくれるグラスを受け取る。 「彼女との約束、忘れてたんだって。眠りながら約束してたみたいで。急いで帰ってったんだよ」 「なんか先輩らしいな」  クスクス笑いながら、高瀬が缶を開けて、グラスに注いでくれる。 「飲みながら、少し待ってて」 「うん」 「冷凍の焼きおにぎり、たべる?」 「うん」 「出てるの、先、食べてていいよ。あと少しで出来るから」  サラダや、焼き鳥や、お刺身とかがテーブルに並んでる。  こんな短時間で、ぱぱ、と作っちゃうんだな……。 「高瀬、料理もできるんだよね……」 「……ていうか、今おいてあるの、そこまで料理っていわねーけど。刺身は買ってきたやつだし。あとは冷凍」 「ちゃんと料理だよ。美味しそう」 「いつも、飲み会出てからそのまま泊り、だったからあんまり夜ちゃんと作って食べた事ないよな」 「……そうかも」 「今度はちゃんと作るから、家でも飲もうな」 「うん」  言われて、嬉しくなって、うん、と頷く。  少しビールを飲んでると、温まった焼きおにぎりと、だし巻き卵が出てきた。 「だし巻き、美味しそうー」 「いつも織田が喜ぶから、作った」 「わーい、ありがと」  言うと、高瀬はふ、と笑った。   「ん。食べよ」 「うん」  高瀬は、目の前の椅子に腰かけると、自分のグラスにも注いで。  少し飲んでいたオレのグラスにも追加してくれた。 「ん」  グラスを差し出してきたので、かちん、と合わせる。 「付き合い記念、な」  クス、と笑って、高瀬がオレを見つめてくる。 「……っ……」  今まで普通に話してたのに、一瞬なんて答えていいか分からず。  まじまじ高瀬を見つめてしまう。 「……っ……あのさ」 「ん?」 「――――……あの……オレの心臓が」 「心臓?」 「……もたないから、もうちょっと……」 「――――……」 「もうちょっと……緩めて」 「…………」  高瀬はしばし無言で。  クッと、笑いだした。

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