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◇付き合い記念*圭2

  「何それ。心臓って」 「……高瀬と居ると、心臓バクバクして、痛いから」 「てか、オレ今、付き合った記念、て言っただけじゃんか」 「……っその後ずっとオレの事見てたでしょ」 「……そりゃ見てたけど……」  高瀬は、苦笑いを浮かべてる。 「……見てるだけでも、だめ?」 「……っだめとかじゃ、ないけど……」  焦ってるオレを、高瀬がまたじっと見つめてくる。  頑張って見つめ返していたけれど――――……。 「……あ、ちょっと、今、無理……」  ふい、と視線を逸らして。  体ごと、横を向いてしまう。  高瀬がオレの事好きとか、しかも、ずっと好きとか、  すごく嬉しかったけど、でも、そんなの聞いたら、高瀬の目、見てられないというか、もうどうやって向かい合ってたらいいのか……。 「つか、そっぽ、向くなよ」 「――――……ごめん、無理」  両手で顔を押さえて、俯いてしまう。  うー……落ち着け。  なんなんだ、オレ。  ほんとに、なんなんだ、これ。 「――――……っとにさ……」  すぐ近くから声がしたと思ったら。  高瀬がすぐ横に来ていて。振り仰いだ瞬間、キスされた。 「……可愛すぎ、なんだよ……織田」 「……っ……!」  触れ合った唇から、少しして、舌が入り込んできて――――……。  優しくて、めちゃくちゃ、甘いキス。  後頭部に触れた指が、する、と頬を撫でた。 「――――……っ……」 「……ずーっとキスしてれば、慣れる?」 「……慣れ……っないよ……むり……」  至近距離で見つめられると、もう無理。  かあっと血がのぼる。 「まあ。いいけど。――――……可愛いから」 「……っ」  だから、ほんとに、その、攻撃を緩めてって言ってるのに。  ……攻撃っていうのも変だけど。もはや、攻撃としか……。  ……一切、反撃できなくて、ちょっと悔しい。 「織田、そっぽ向くから、隣に座る」  言って、高瀬が隣に腰かける。 ベンチ型の2人掛けの椅子なので、すごく、近い。 「――――……織田って、さ」 「……なに?」 「オレの顔、好き?」 「……」  まあ……一目惚れだから……。  ……顔、めちゃくちゃ好きなのは、その通りだけど。  うん、と小さく、頷く。 「近くで見ると、いっつも、一瞬退くし」 「――――……あ、ごめん……」 「別に謝れって言ってないよ。 固まって退くの、可愛いって思ってるし」  頭を撫でられて。そんな風に言われて。  全然収まらないドキドキが、また強くなる。 「……高瀬、オレ、死ぬけど」 「え?」 「心臓が」 「また心臓?」  苦笑いとともに。 「慣れろよ。――――……今までも、結構ずっと一緒に居たじゃんか……」 「……てか、好き、て思ってくれてるんだって、思ったら……」 「――――……」 「……やっぱり、むり……」  また視線を逸らすと。  高瀬が、ちょっと呆れたように、笑う。 「……まあいいけど……。とりあえず、死ぬなよ」 「――――……うん……」 「せっかく恋人になれたのに」  クスクス笑ってる。  恋人。  そっか、恋人。  恋人なんだな、オレ達。  ……嘘みたい。

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