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◇付き合い記念*圭3

「なー、織田?」  嘘みたいな、幸せな現実に、心の中でウキウキしていた所に、高瀬が呼び掛けてきた。 「うん?」 「……お前、何でオレのことが好きなの? 顔が好き?」  そんな風に聞かれて、びっくりして、高瀬を振り返って、まじまじと見つめてしまう。くす、と笑っているのを見ると、本気でそれを言ってるんじゃないみたい。 「……ていうか、オレ、高瀬、好きじゃないとこなんてないよ」 「――――……へえ……?」  高瀬の瞳が、ふ、と優しく細められる。  ――――……そういう笑い方も、すごく、好き。 「織田って、恥ずかしがるくせに、そういうのは平気で言うよな……」    そんな風に言われると、確かに恥ずかしい事言ってるとは思うのだけど。  ……だって顔だけがなんて、一ミリも思われたくないし。 「……一目惚れしたのは顔だけど…… 今は、全部だよ?」 「こっちがはずかしいって……」  ふ、と笑われて。  まっすぐ高瀬を見上げると、視線を外されてしまった。  あれれ……ちょっと照れてる……かな。    そんな風に思った瞬間。それは伝染してきて。  高瀬の比じゃない程に照れて。  顔に血が上りすぎて。 なんか耳鳴りまでしてくる。  だってなんか、高瀬が照れるなんて。  ――――……照れたりしてくれる位、オレの事好きで、いてくれてるのかな、なんて思ってしまったら、もう、無理だった。 「……織田?」  ぷ、と笑われる。 「言っといて、そんなものすごい照れるなよ」  なでなで、と頭をまた撫でられる。  ああ、もう。  ――――……なんでオレ、こんなに好きなんだろう。  じ、と見つめてると。  黙った高瀬に、急に引き寄せられて、腕の中に収まって。  そっとキスされる。 「――――……そっぽ向いたかと思ったら、そんな見るし……」 「……っ……」 「――――……可愛くて、無理」  舌、奪われて。  優しい、キス。上向いて受け止めて、応える。 「――――……織田?」 「……?」 「オレ、お前が頑張ってるとこ、好き。 楽しそうにしてんのも、好き。いっつもオレの事、好きって顔して、そばに居てくれるのも、すげえ好き」 「――――…………」  ぼぼぼっ。  またしても、激しく赤面。 「……っっっ」 「はは。 ……真っ赤すぎ」 「――――……っっっわざと、やってるでしょ」 「うん、まあ。 可愛いし」 「――――……っっ」 「言ってる事は、全部ほんとだけど」 「――――……っっ」    あ、もう無理。  何も言えなくなったオレを。  クスクス笑う高瀬が、ぎゅー、と抱き締めてきた。

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