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◇絵奈ちゃん*圭 1

 ドキドキしながら、高瀬のマンションの鍵を開けて、中に入った。 「お邪魔します……」  誰も居ないのは分かってるのだけれど、何となく口にする。  とりあえずシャワーを浴びさせてもらった。  部屋着に着替えて、コンビニで買ってきたお茶を飲んで、ソファに腰かけた。  高瀬が居ないこの部屋に、1人で居るのは初めて。  だってないよね、家主が居ない、人の家にいる事なんて。  大体いつもは、楽しすぎて酔っぱらい、連れてきてもらって。  楽しく話した後、わりと早めに、寝ちゃう事が多くて。  で、週末は、高瀬とずっと一緒に居るし。  こんな夜の早い時間に、シラフで、しかも1人で高瀬のうちに居る。  ものすごく、不思議な気分。 「――――……」  なんか居心地が悪くて、テレビをつけたけれど、全然面白くなくて、数分で消した。  今、19時か。  さっきは鍵預けてくれて浮かれてたけど、やっぱり、一緒に居たいなあ、なんて思う。  早く帰って、こないかなあ……。  静かな部屋で、ぼー、と見回す。  いつ来ても、キレイな部屋。  ――――……几帳面なんだろうな。  高瀬って。ほんと、ちゃんとしてる。  オレの部屋……まあある程度は片づけてるけど、ここまではキレイじゃないし。そういえば、高瀬まだオレんち来た事ないな。……今度来てもらおう。  それまでに、もうちょっと、片付けとこ。  ここは、キレイすぎて、生活感、無い。  家具は、黒や白で統一されてて。  なんか、インテリアの見本にのってそうな部屋。  余計なものが、無い。  うちに、ごちゃっと貼ってある友達との写真とか、ちょっと可愛くて買った派手なクッションとか。面白い絵が描いてあるマグカップとか。  ……てか、オレの部屋にある物の8割位、高瀬にとっては要らないものなんじゃないだろうかと思ってしまう。  高瀬って……。  なんでオレを好きかなあ……?  ぼー、と高瀬の事を思う。  ぱっと見は……クールな超良い男。黙って立ってるだけで、人目を引く。  バカ騒ぎしたりするタイプじゃない、と思う。    人によったら最初は、冷めた口調が、苦手な人はいるかもしれない。  ……仲良くなると、全然違うんだけど。  優しいし。気が利くし。でもオレには最初から優しかった、かなあ……。  ――――……あんなに、可愛いとか、好きとか、言ってくれるとは思わなかったし。   高瀬の事を好きになる子は、これから先もいっぱい居るだろうし。  ……女の子、の方が、高瀬に似合うとは思うのだけど。  ……でも、オレ、ずっと高瀬と居たいと思っちゃってる。  高瀬にも、ずっとオレと居たいと、思っててほしい。  高瀬が、オレと居て、楽しそうにしてくれてるのが、嬉しい。  高瀬に抱かれるのは――――……まだ全然慣れないけど。  ……めちゃくちゃ丁寧に、大事に、してくれてるのが、分かるから……。  オレに――――……興奮、してくれるのも。  なんか、すっごい、恥ずかしいけど、嬉しいし。  オレの上にいる高瀬は、すごい、男っぽくて、かっこい……。  ぴんぽーん!  急にチャイムが鳴って、びくう!!と震えた。  ドキドギドキドキ。  うわ、オレ、何、思い出してんだ。  あやしい事考えていたので、もう、心臓が、壊れそう。  ……高瀬かな?  全然ドキドキが収まらないまま、インターホンを覗いた。  通話ボタンを押そうとしたけれど、映っている姿に、ぴた、と止まる。  女の子、だった。 「……だれだろ」  ……えっと。  ……か……彼女、とかじゃないよね……。うん、無い無い。  ……オレ、勝手に出て良いのかな…… どうしよう。  出られないで居ると、もう一度、ピンポンが鳴り響いた。  それでも戸惑ってると、再度ピンポン。  もう、仕方なく、通話ボタンを押す。 「……はい?」 「あたし。入れて?」  ……あたし。  で通じる仲なのは分かったけど……。誰かな。 「あの……今、高瀬居なくて」  オレがそう言うと、え?と不思議そうな顔。 「……じゃ、あなたは、どなたですか?」  そう聞かれて、何と言うべきなのか、本人居ないのに、ここに居るのおかしいし、とか色々考えた挙句。 「友達……なんだけど……」  そう言うと。 「えーと…… あたし、拓哉の妹です」 「え?」 「絵奈って言います。お兄ちゃん、いつ帰ってくるんですか?」  絵奈、ちゃん。  ――――……さっき、高瀬のスマホに名前が表示されてた子だ。

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