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◇旅行*拓哉2
旅館に戻るとちょうど、食事の準備が始まった。手際よく食事が用意されて、仲居が出ていくと、織田が嬉しそうに料理をのぞき込んだ。
「わーなんかすっごい、料理キレイ。写真撮っていい?」
「聞かなくていいよ」
クスクス笑って言うと、織田が楽しそうに写真を撮りだした。
「焼き鳥があるー美味しそう」
「あ、別でつけてもらった」
「そうなの?」
「焼き鳥の美味しい店にいこって言ってただろ? あん時は飲み屋かなって思ってたんだけど、ここに来たくなったから、焼き鳥だけ追加で」
「高瀬、ありがと。すごい美味しそうー」
嬉しそうに笑う織田に、ん、と頷く。
頼んどいてよかったなー、と思ってしまう。
「写真、兄弟ラインに自慢しとこ」
と、笑いながら、織田がスマホを操作して、「送っといた」と、顔を上げた次の瞬間。
ひこん、と返信音。
「ずるい、どこにいんの、だってさ。加奈の返信、早や……」
織田が楽しそうに笑って、箱根の旅館だよ、と言いながら打って、「ごめんね、たべよー、高瀬」と言った瞬間。織田の手でまた返信の音。
「……誰と行ってるの? お友達?写真送ってーだって。……これ、絶対彼女だと思ってるな…… 加奈が一番、オレの彼女とかにうるさいんだよね」
「織田のこと好きなんだろ」
「まあ。可愛がっちゃったからな、年離れてて」
その光景が目に浮かぶようで、なんだかすごく穏やかな気持ちになる。
そういうのを経て、こういう性格ができあがったんだろうなー、なんて思うと、ついつい微笑んでしまう。
「オレと写真撮って送る?」
「え、いいの?」
「いいよ」
「じゃそっち行くー」
立ち上がって、織田がオレの隣に並ぶと、カメラを自撮りの向きにして。
「んー? どうやればうまくはいんの、これ」
「離れてるからだろ……こっち来いよ」
「わ」
肩を抱いて引き寄せると、織田が、固まった。
「――――……っ……」
急に近くなると、まだ、この反応。
「……こ、れだとオレ、変な顔になるから無理」
少し離れようとする織田が、余計可愛くて。
「たか――――……」
肩、そのまま引き寄せて、キスしてしまう。
「……っ」
見つめあったまま、キスしていたら、耐えられなくなったみたいで、ぎゅ、と瞳を伏せて、オレの腕に、きゅ、と捕まってくる。
――――……あーもう……可愛いな。
何なんだろ、織田って。
舌を入れると、くぐもった声が漏れる。
「――――……ん……ン」
ゆっくり、離して、そっと開く瞳を見つめる。
頬に触れて、すり、となぞる。
「……このままする?」
そう言うと、織田は、え、と固まった後、プルプル首を振った。
「……っっしない、しない! ご飯……!……っっ」
真っ赤になって、藻掻く織田に、ぷ、と笑ってしまう。
ほんと、可愛い。
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