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◇旅行*拓哉3

「スマホ貸してみな?」 「……ん」  手を伸ばして少し離れた所にスマホを持って、一緒に映るように軽く織田を引き寄せた。 「笑って?」  言うと、画面の中の織田が、ふ、と微笑んだ。シャッターを押す。  まあ、男同士でも別に変じゃない位の距離感で、  笑顔で。 「撮れたけど……これで送れる?」 「すごい。上手。……まさか彼女とかと撮り慣れてたり……」  ふざけた感じで言ってくる織田に、苦笑い。 「こんな撮り方した事ないけど」 「ならいいけど」  ふふ、と笑って、隣に座ったまま、織田がスマホをいじってる。 「……何て送ろう。 同期と?友達と……?」 「……恋人?」 「っっ無理無理」  案の定すぎなほどに、赤くなって焦る織田の反応は、ほんとに素直すぎて、不思議になる位。 「友達、ておくっとくね」 「ん、いいよ」  反応見てるだけで、笑ってしまう。可愛くて。  笑ってるオレの前で不意にスマホを握った織田が、ふとオレを見上げてきた。   「……? 織田?」 「……高瀬」 「ん?」 「……恋人って、送る?」 「――――……送ってもいいけど…… 覚悟、きまってる?」  そう聞くと、少しして、うーん、と困った顔をした。 「……ずっと、居たいと思ってるけど……今入れるのは……やっぱり無理かもーー……」  へなへなと沈んでいく織田の腕を掴んで、沈みこまないように支える。 「そりゃそうだろ……何、友達って入れた事、気にしてんの?」 「………」  うん、と小さく頷く。 「――――……」  その、何だかへにゃへにゃ情けない顔を見てたら、ふ、と笑ってしまった。 「そんなの気にしなくていいよ」 「……だってさっき高瀬、恋人?とかいってくれたのに……オレそれ、無理無理って言っちゃって……」  それを聞いて、ますます可愛く思ってしまう。 「――――……家族に言うとか、かなりハードル高いから、無理なの分かって言ってるし。 オレだって昨日絵奈に、恋人だとは言ってないよ」 「――――……うん……」  その時、織田の手の中でスマホがまた震えた。 「あ、美久姉だ……」  開いたと同時に、織田が固まってる。 「なにその超イケメンは、だって。 婚約解消するから、紹介してだって……」 「なんだそれ」  面白い姉さんだな、と笑うけれど。織田が眉を顰めて。 「……やっぱり恋人っておくとこうかな。 美久姉ちょっと本気かもしれない、すんごい面食いなんだよね、あの人……」 「織田??」 「ほんと、なんだろ、肉食っぽい姉さんなの。5人の中で一番、生存能力高いと思う」 「……ぷ」 「狙われたらおわりだよー、高瀬ー」 「いやいや待てって、オレがお前の姉さんとどーにかなる訳ないだろ」 「いやいやマジだからね、やっぱり恋人って……」 「落ち着けって」  ぎゅー、と抱き締めて、クッと笑ってしまう。  冗談なのか、本気なのかも、いまいち分からないけれど……。  半分本気か……??  腕の中の織田は、少しして、ぎゅ、としがみついてきた。 「―――……やっぱ、高瀬かっこいいもんな…… 美久姉が認めるって相当だからね……」 「……そりゃどーも」 「……きっとさー。これからもさー、高瀬の事好きな子は、いっぱい現れてさー……」 「――――……」  好かれたって、関係ねーんだけどな……。  ――――……オレ、こんなに好きになったの、織田が初めてだし。  そもそも、ちゃんと好きになったのが、初めてかもなのに。  そう簡単に、誰かにいく訳、ないんだけど。 「――――……いっぱいいっぱい可愛い子に好かれると思うんだけどさ……でもさ……」 「……織田?」  腕の中から、見上げられて。少し心細そうな、大きな瞳に見つめられて。 「……オレと、居てね、高瀬」  そう、言われた瞬間。  聞いた事のある、「胸がキュンとする」 ――――……なんて、可愛いものじゃなくて。  もうこのまま押し倒して、めちゃくちゃにしてやりたいような「衝動」が、胸の奥に沸き起こった。 「……? ――――……っ……ん……っ……?」  顎を捕らえて、その唇をふさいで。  さっきのキスみたいなふざけたのなんか比べ物にならない位。  深く重ねる。 「……っ……ん、ふ、ぁ……」  織田の手から、スマホが、滑り落ちた。  邪魔なので、片手で、少し離れた所に滑らせて。  そのまま、抱き込んで、その舌を絡め取る。  ぎゅ、と縋るように、服を掴まれて、余計熱くなる。  なんでこんな、可愛いんだろ。織田。

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