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◇勝てない*圭1

 目の前の高瀬が、ビールの栓を抜いて差し出してくれるので、コップを持って入れてもらう。 「ありがと。……入れるよ?」 「ん」  瓶を受け取って、高瀬のコップにもビールを注いで。  2人でコップを合わせた。  一口、飲む。    ――――……ドキドキドキドキ。  弾んだ心臓が、戻らない。   なんで、高瀬、あんな風に、急にキスするかな……  もう ――――…… 無理。  なんかもう……キツイ。  ……なんでだろ、もう、どうしてあんなにキスうまいかな。  受けるだけで精一杯って、情けないけど。  ――――…… もー……。  あやうく、反応するとこだった。  ……もうギリギリ。 キスされただけで、なんて。もう。  でも、オレがわるいんじゃない……。  高瀬のキスがエロイからいけないんだー!  心の中は色々叫んでる。  でも、なるべく普通に、箸を進める。  美味しいけど。 すごく美味しいけど、  ――――……もう、体熱いし……顔もまだ熱いし。 「――――……焼き鳥うまい?」 「え…… あ、うん、すごく美味しい」 「たれと塩、どっちが好きなんだっけ?」 「どっちも好きだけど……塩の方が好きかな……」  何とか答えられてる。はず。  ……もう。……高瀬のバカ―!  もうもう、オレ、なんか、背筋が、ゾワゾワするし。  落ち着け。――――……早く、ご飯、食べて……風呂いけるかな……温泉入りたい……。  せっかくのご飯に集中できなくて辛いので、なんとか意識を体から背けようとしてみる。 「高瀬、後で露天いこ? さっき行かなかった方」 「ん、いーよ」 「星、見えるかな」 「たぶん見れるよ。船でも割と見えてたし。さっきよりもっと暗くなってきたし」 「……オレ、星見るの好き」 「ふうん。そうなんだ」  くす、と笑う高瀬。 「プラネタリウムとか、好きでさ。よく行ってた」  星の話をしていたら、やっと、体から意識を離せて。ほっとする。  ……てか。  高瀬は、あんな風にキスしといて、全然平気な顔って。  ……ずるい……。 「――――……織田、これ食べた?」 「え?」 「その緑のお皿」 「まだ。なに?」 「鶏肉。うまいよ。織田好きそう」  ふ、と優しく笑う高瀬に、どき、と弾む胸。  こんな事言ったらおかしいから言わないけど……。  今……オレの事、まっすぐ、見ないでほしい。  なんかオレ。  ――――……見られるだけでドキドキすんの、ほんとやばい。 「あ。ほんとだ。美味しい」  すっごい、美味しい。  口に入れた料理が、思ったよりももっと美味しくて、もぐもぐ味わってたら。高瀬がふ、と笑った。 「プラネタリウム、今度連れてって」 「――――……え、あ。 プラネタリウム?」 「ん。オレ行った事ないから」 「――――……ん、いいよ。連れてく」  なんか、なんか。  ……連れてってって。  ……可愛い、高瀬。  連れてく連れてく。絶対連れてく。 「来週いこう、来週」  乗り出して誘ったら、高瀬が「いいよ」と、楽しそうに笑う。  楽しいな。  ――――……なんかもう。ほんとに、高瀬が大好きすぎだよな、オレ。 「織田、酒頼む?」 「……ううん。もういいや」  酔っぱらうと、ろくな事がない気がする。 「――――……高瀬、飲みたかったら飲んでもいいよ、頼む?」 「んー……オレもいいや。 眠くなりたくないし」 「うん?」  ……て。眠くなりたくないって。  ……眠らずに、何するか……。  …… っ。  わー、もう何も考えるな、オレ。  高瀬ってば、完全に普通なのに。  ぐるぐる色々考えていたら――――……。  高瀬が、ぷ、と笑った。 「ごめん、わざと言ったけど――――……そんな、混乱されると」 「――――……」 「……そっち行きたくなるから、やめて」 「――――……」  クスクス笑われて、もう、何も言い返せない。  ――――……く……っ。高瀬、ひどい……。  オレで遊ぶのやめて欲しい。  まだ笑ってるし。  …………だめだな、この笑ってくれてるのだけでも好きとか。  からかわれて笑われてんのに、好きとか。  ヤバいよね、オレ。  ヤバいの分かってても、好き過ぎて。   「織田のそういうほんと素直ーな反応が、オレすっごい好きなんだけど」 「――――…………」  そんな事言って、優しく笑ってるし……。  ……勝てる訳ない……。  

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