「そーいえばさ」 　高瀬が話し始める。 　……まだ何か恥ずかしいこと、言うのかな。 　これ以上翻弄されないようにと警戒しつつ、じっと見てると。 　高瀬は、笑いながら。 「さっきの話だけどさ？」 「うん」 「織田って、オレが振られないとか、思ってるの？」 「うん」 　思ってる。 　頷くと。高瀬は、ちよっと呆れたように笑った。 「はは。なんで、そんな即答？」 　笑いながら聞かれるけど。 　なんでって言われたって……。 「え……だって。振られないよね？」 「振られた事あるよ。つか、結構あるってば」 　えー。 　ほんとかなあ。 　いやでも、それってさ。 「それって、高瀬は別れたくないって思ってた？」 「え？」 「高瀬が別れたくないってすごく思ってるのに、フラれたの？？」 「――――……いや、思ってない、かなあ……」 　何かを思い出すようにしながら、高瀬がそう答えてくる。 「それじゃ、なんか違う気がする……」 　んー。良く分からないけど……。 　もぐもぐ食べながら、悩む。 「じゃあさ、高瀬が大好きな人に振られた事ある？」 「――――……」 　あれ。黙った。 　珍しい。 「……たかせ……？？」 　沈黙に耐えられなくなったのは、オレの方だった。 「覚えてないならいいよ？」 「あー……ちがう。　覚えてないんじゃなくて」 「なくて？？」 「――――……大好きな人、で、あんま思い浮かばないなーと……考えてた……」 「――――……」 　それにはちょっと驚く。 　大好きな人で、思い当たる人がいないって事？ 　まじまじ見てると、高瀬は苦笑い。 「さっきも言ったろ、そんなに真剣に付き合ってないって。見た目とか告られたタイミングとかで、付き合う事が多かったからさ。そこまでいかなかった」 「――――……」 　オレの事は、大好き、に入るのかな。 　……オレの事も、まだ、「大好き」には入ってないのかな。 　……真剣……には付き合ってくれてる……ような気はするけど……。 　 「なんか修羅場がどーとかも言ってたよな？」 「え。あ、うん。言った」 「ほんと、あんまりモメて別れたとかも、無いから」 　そう言う高瀬に、うーん、と考えて。 「高瀬と別れたくないって泣く子は居なかったの？」 「……何人かは居たかな。でもそんなに揉めたりはないし。結構冷めてたかな、別れる時は」 「……不思議すぎ……」 　高瀬が苦笑いで、オレを見つめる。 「なんかほんとに……お前の中のオレってどんななのか見てみたい。変な眼鏡かけて見てそう」 　え。だから、ほんとに、そのまま、カッコいいまま、だけど？？ 　何となく言ってもまた笑われそうなので、心の中でそう言いながら。 　食事を進める。 「ね、高瀬から告白する事って、多かった？」 「全然。した記憶、あんまりない、かも」 「え。いつもされてたの？」 　高瀬、考えながら、そーかも、と、呟いてる。 　さすがだなー。 　ほんとにモテるって、こういう人の事をいうんだろうなー……。 　なんて、ぼー、と考えていると。 「……だから、織田に好きって言ったの、かなりドキドキしたよ」 「え。――――……っ」 　ぼぼっ。 　今は、高瀬がドキドキしたって話なのに。 　どうして、オレが赤くなんないといけないのかは、謎すぎるけど。 　そんな風に言われて、　 　一瞬で真っ赤になるオレって。 　何なの……。