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◇好きなとこ*拓哉 2

「高瀬、お待たせー。 あ、写真見てた?」 「ん。結構昔からの写真だな」 「うん。中学生くらいからかなー。気に入った写真、ぺたぺた貼ってるだけだけど。たまに入れ替えてさ。10年以上前のもあるかな」 「織田、楽しそう。何枚か写ってる女の子たちは、彼女?」 「うん。この子、中学ん時の彼女。初めて付き合った子」 「へえ」 「何もしてないけどね。付き合ったっていってただけ」 「ふうん……」 「あ、でもここら辺は彼女じゃないよ。ただ仲良かっただけの子も居るし」 「これって、スーツ着てるって事は、最近?」  端っこに貼ってある1枚を指して聞くと、織田が笑う。 「うん。これは、働き出してから、大学の仲間で集まった時の写真。スマホで撮ったのをコンビニでプリントしてる」 「マメだなぁ、織田」 「んー、でも、印刷すぐできるしね。楽しいとこ切り取った感じ。たまにこれ見てると元気になるから」 「ん。楽しそうで良いな」 「うん」  織田はにっこり頷いてから、突然はっとした表情でオレを見る。 「あ、ていうか、彼女の写真とか、見たくない……?」 「――――……」  急に落ちたトーンで聞かれて、笑ってしまう。 「楽しそうだなと思うだけ――――……こうやって過ごしてきて、今の織田がいるんだなーと思うよ」  そう言ったら、織田は、ん、と頷いて、なんだか嬉しそう。 「今度高瀬と撮った写真も貼るね」 「そうだな。貼って」  オレは、めちゃくちゃ笑顔の、中学生頃の写真を指さした。 「織田、可愛い、これ」  覗いてから、織田は、ふふ、と笑った。 「超子供の頃」 「あんまり笑った顔は、変わってないけど」 「え。そう? ……それはそれで、ちょっとどうかと思うけど」  織田は苦笑いしながら、写真を見てる。  その頬に手をかけて、オレの方に向かせる。 「ほんと、可愛いままだなー織田」  ちゅ、と頬にキスすると。  一瞬で、顔に熱をもった。触れてる頬が熱い。  ふ、と笑ってしまいながら、何度か頬にキスしてると。 「……っストップ、高瀬。……オレ、そろそろ心臓とまる……」 「――――……」  なんか織田、よく、心臓止まっちゃいそうになるよなあ。ドキドキしてるって事なんだろうけど――――……おもしろ……。  ぷ、と笑ってしまう。 「準備は終わった?」 「うん、終わった」 「じゃあ――――……オレんち、来てくれる?」  言うと。  織田は、何だかとっても嬉しそうに笑って。 「うん、行く!」  元気にそう言った。  ――――……はは。もう、ほんっとーに、可愛い。  一瞬、ぎゅ、と抱き締めて。ポンポンと頭を撫でて。  そのまま、そこに置いてた荷物のひとつを持つ。 「これだけ?」 「あ、うん。あとこっちのスーツ」 「じゃそっち持って」 「うん」  織田が嬉しそうに笑って、オレを見上げる。 「ん?」 「今みたいなの、なんか、嬉しい」 「そっか」  ――――……何だかなあ。ほんと。……かわい。  柄じゃない気がするけど、何だかものすごく優しい気持ちにさせられるんだよな。 織田と居ると。  よしよし、と撫でてしまいながら。  織田の家を、後にした。

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