119 / 235

◇幸せモード*圭 2

 昼食に向かおうとして2人でエレベーターホールで待っていたら、同期の|加藤 雄一《かとう ゆういち》と会った。  同じフロアには居るけれど、チームが違うと仕事で絡まないので、話す機会も少ない。昼食時間もぴったり決まってるわけじゃなく、業務の進捗次第なので、チームが違う同期と食事に出る事はほとんどない。  たまには一緒に食べようぜと言われて、オレがちら、と高瀬を見ると、高瀬も目を合わせ。ふ、と笑んでくれるので、2人で同時に了承。近くの定食屋に3人で入って座る。オレと加藤が並んで、オレの前に高瀬。 「加藤んとこのチーム、忙しい?」 「んー、先週まで死んでたけど、きついのが終わったから、今週は落ち着いてる。お前らは?」 「オレは少し遅れてたのがやっと大分追いついたとこ」  午前中頑張って良かった。なんて思って言ったら。  高瀬が、ふ、と笑って、目が合って。  なんかますます嬉しい。 「高瀬は?」 「オレは金曜色々変わった分の追加の処理が……今日明日で終わるかなって感じかな」 「そっか。……じゃあ、お前らって、今週金曜って落ちついてそう?」  加藤の言葉に、「ん、なんで?」とオレが尋ねると。 「飲み会するんだけど、来ない?」 「飲み会?同期で?」 「うん、同期もくるし、その知り合いも来るかもだけど」 「ふーん……」 「とりあえず保留でいいか? まだ金曜は分かんねえかも」  高瀬がそう言ってるので、オレも一緒に頷いておくと。  加藤は、ん、と頷いた。 「場所とか色々決まったら連絡するからさ。予定大丈夫なら、一緒飲もうぜ」 「うん、わかった」  ちょうど返事をした所で、食事が運ばれてきた。 ◇ ◇ ◇ ◇  コピー機の所でスタートボタンを押して、終わるまで待っている間。  なんとなく視線をあげると。  自分の席の隣の、高瀬が立ち上がったのが目に入る。  手に持ったファイルを、部長の所に持って行って、何か説明してる。  ただ、歩いていくだけなのに。  なんで、あんなに、さまになっちゃうんだろう。  モデルやってた経験があると。……まだ写真見せてくれないけど。  歩き方とか、立ち方とか――――…… 普通とは違うのかな。  どうしよう、なんかほんとに、カッコイイ。  ……つかオレ、ダメすぎない?  仕事中に、何考えてるんだ……。  しっかりしなくてはと、高瀬から目を敢えてそらして、コピー機から出てきたプリントを取って、とんとんと揃えていると。  後ろのコピー機から、隣の課の女の子たちの声が、聞こえてきた。 「ね、高瀬さん、今日もカッコいいー」 「ほんとー、なんであんなにカッコいいのかなー?」  ……分かる。  死ぬほど分かる。  カッコイイよね……。うんうん。  男のオレが、常識とびこえて惚れちゃうくらいだもんな。  女子だったら。余計だよね……。  あ、高瀬、女の子に話しかけられてる。  ――――……女の子、書類持ってるし、仕事の話、なんだろうけど……  絶対あの女の子は、高瀬の事、カッコイイと思って話してるよなあ。  ……うん、分かる。  ……カッコいいもんね。  なんだろ、嫉妬とか、そういうのの前に、  分かる、って思っちゃう……。  ……オレ、高瀬よりカッコいい奴、  この世に居ないんじゃないかと、思っちゃってるよな……。  ルックスもなんだけど……  声も、動きも、出来る事も、話す事も。使う、言葉も。  ――――……オレ、高瀬と別れたら、  誰かと付き合えるかなあと、心配になるくらい。  高瀬に会うまで、 恋愛対象が、女の子だったのが、  もはや遠い記憶過ぎて、嘘みたいで。  今可愛い女の子を見ても思うのは、高瀬が好きにならなければいいなあ……みたいな。  ……オレ、本気でヤバいな。  毎日毎日、高瀬が好きすぎて。

ともだちにシェアしよう!