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◇幸せモード*圭 2
昼食に向かおうとして2人でエレベーターホールで待っていたら、同期の|加藤 雄一《かとう ゆういち》と会った。
同じフロアには居るけれど、チームが違うと仕事で絡まないので、話す機会も少ない。昼食時間もぴったり決まってるわけじゃなく、業務の進捗次第なので、チームが違う同期と食事に出る事はほとんどない。
たまには一緒に食べようぜと言われて、オレがちら、と高瀬を見ると、高瀬も目を合わせ。ふ、と笑んでくれるので、2人で同時に了承。近くの定食屋に3人で入って座る。オレと加藤が並んで、オレの前に高瀬。
「加藤んとこのチーム、忙しい?」
「んー、先週まで死んでたけど、きついのが終わったから、今週は落ち着いてる。お前らは?」
「オレは少し遅れてたのがやっと大分追いついたとこ」
午前中頑張って良かった。なんて思って言ったら。
高瀬が、ふ、と笑って、目が合って。
なんかますます嬉しい。
「高瀬は?」
「オレは金曜色々変わった分の追加の処理が……今日明日で終わるかなって感じかな」
「そっか。……じゃあ、お前らって、今週金曜って落ちついてそう?」
加藤の言葉に、「ん、なんで?」とオレが尋ねると。
「飲み会するんだけど、来ない?」
「飲み会?同期で?」
「うん、同期もくるし、その知り合いも来るかもだけど」
「ふーん……」
「とりあえず保留でいいか? まだ金曜は分かんねえかも」
高瀬がそう言ってるので、オレも一緒に頷いておくと。
加藤は、ん、と頷いた。
「場所とか色々決まったら連絡するからさ。予定大丈夫なら、一緒飲もうぜ」
「うん、わかった」
ちょうど返事をした所で、食事が運ばれてきた。
◇ ◇ ◇ ◇
コピー機の所でスタートボタンを押して、終わるまで待っている間。
なんとなく視線をあげると。
自分の席の隣の、高瀬が立ち上がったのが目に入る。
手に持ったファイルを、部長の所に持って行って、何か説明してる。
ただ、歩いていくだけなのに。
なんで、あんなに、さまになっちゃうんだろう。
モデルやってた経験があると。……まだ写真見せてくれないけど。
歩き方とか、立ち方とか――――…… 普通とは違うのかな。
どうしよう、なんかほんとに、カッコイイ。
……つかオレ、ダメすぎない?
仕事中に、何考えてるんだ……。
しっかりしなくてはと、高瀬から目を敢えてそらして、コピー機から出てきたプリントを取って、とんとんと揃えていると。
後ろのコピー機から、隣の課の女の子たちの声が、聞こえてきた。
「ね、高瀬さん、今日もカッコいいー」
「ほんとー、なんであんなにカッコいいのかなー?」
……分かる。
死ぬほど分かる。
カッコイイよね……。うんうん。
男のオレが、常識とびこえて惚れちゃうくらいだもんな。
女子だったら。余計だよね……。
あ、高瀬、女の子に話しかけられてる。
――――……女の子、書類持ってるし、仕事の話、なんだろうけど……
絶対あの女の子は、高瀬の事、カッコイイと思って話してるよなあ。
……うん、分かる。
……カッコいいもんね。
なんだろ、嫉妬とか、そういうのの前に、
分かる、って思っちゃう……。
……オレ、高瀬よりカッコいい奴、
この世に居ないんじゃないかと、思っちゃってるよな……。
ルックスもなんだけど……
声も、動きも、出来る事も、話す事も。使う、言葉も。
――――……オレ、高瀬と別れたら、
誰かと付き合えるかなあと、心配になるくらい。
高瀬に会うまで、 恋愛対象が、女の子だったのが、
もはや遠い記憶過ぎて、嘘みたいで。
今可愛い女の子を見ても思うのは、高瀬が好きにならなければいいなあ……みたいな。
……オレ、本気でヤバいな。
毎日毎日、高瀬が好きすぎて。
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