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◇金曜飲み会*圭 2

「まあいーじゃん、内緒って事で」 「酔っぱらったらお前、ほいほい話しそう。もっと飲め飲め」 「やだよ、何それ」  そんな言いぐさに笑ってしまう。 「今日は、高瀬居ないしな。酔っぱらっちまえば?」 「……なんで高瀬が出てくんの?」 「だってあいつ、織田に超過保護じゃん。 お前酔っぱらってくると、止めてる気がする」 「――――……そんな事、ないんじゃない?」 「……あるって、お前、覚えてないの?」 「うーん。 無いんじゃないかなあ……」 「嘘だろ。 記憶なくなる奴か、お前。これは高瀬も止めに来るか……」  いやいや。確かにいい気分になって飲んではいるけど、記憶はそこまで無くなってない。  まあ確かに、いつも飲み会の時に、高瀬が大丈夫かって言いにきてくれるのは覚えてる。大体フワフワしだした頃、絶妙なタイミングで。  ていうかそれを過保護とか表現されるとは思わなかった。  なんか恥ずかしいので、覚えてない振りで突き通す事にした。 「織田と高瀬ってほんと仲いいよな。いっつも一緒じゃね?」 「同じチームで同期2人だから。そうかも」  ふふ、と笑って普通にそう答えていると。 「今話してる高瀬くんって、あの背の高い、超イケメンくんの話?」  オレの隣の女の子が、そんな風に言って、会話に割り入ってくる。 「高瀬の事知ってるの?」  この子は誰だろう? フロアーにはいない……かな?? 「その子、1階のイベント企画の会社の子だって」  加藤のプチ情報が入ってくる。  ビルが同じだけで、全然会社も違う子なのに、何で高瀬の事……思ってたら。 「高瀬君はね、入ってきた時から有名なんだよー。女子は情報早いから。何階の人で何の仕事してる人かとか、すぐ回るもん。高瀬君の情報は、回ってくるの早かったな~」 「何でって……聞くのもムカつくな」  加藤がそんな風に言ってて、笑いを誘ってる。 「超カッコイイって、ざわついたもん。大げさじゃなくて」 「へえ……」  さすが、高瀬……。  ………何でオレ、そんな人と付き合えてるんだろう?  付き合ってるよね、オレ。確か。ちゃんと付き合ってるはず。  若干、不安になってくる。  いや、付き合ってる。……はず。  ……はずはずって、おい、オレ。自信もっとけー。  と、1人で脳内でツッコミを入れていると。 「織田くんの情報も一緒に回ってきてるよ」 「え?」 「高瀬くんと超仲良しのイケメン情報って言って」 「……オレ別にイケメンじゃないし?」 「つか、織田、喧嘩売ってるだろ」  加藤が隣から突っ込んでくる。  ……まあ昔はそう言われる事もあったけど。  あれだけイケメンの側に居ると、もはやオレは、超普通の一般人としか思えなくなってて。 「おまけで話ついてってるだけかな」  そんな風に言うと、クスクス笑われる。 「織田くんはね、少し上のお姉さん方が、超可愛いって、言ってるよ」 「……可愛い?」  会社のビルの女子がざわつくような超イケメンに、なぜか毎日のように「可愛い」と言われてるから、正直、「イケメン」と言われるよりも聞き慣れて来てる気がする…… そんな自分に、ちょっと、首を傾げる。  そっち聞き慣れて、どうする……。 「今日高瀬くんが来るかもって情報があって、激戦乗り越えて皆ここに いるんだけどさ」 「そうなんだ。……ていうか、激戦ってなに??」 「定員があるからって、うちはあみだだった。じゃんけんだったとこもあるみたいだよ」 「そうなんだ」  ぷ、と笑ってしまう。面白い。  高瀬が居るから皆来たかったんだとか聞くと、もう、ヤキモチとかじゃなくて、すごいなーさすがだよなーと感心してしまう。

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