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◇金曜飲み会*圭 4

 オレを隣に座らせた女の子が、トイレに立った時。  その席に、違う誰かが座った。 「……何か用事でもあるの?」  不意に話しかけられて、顔を見ると。  なんか、すごいイケメンが座ってた。  ああ。さっき言ってた、高瀬と共にイケメンて呼ばれてた奴か。  うん、確かに、顔、整ってるなー……。 「別に、用事って訳じゃなくて……」 「ふうん? よく時計見てるからさ」 「……ここだけの話ね。……合コンだって聞いてなくて。ちょっと疲れた」 「合コン、嫌い? モテそうなのに」 「そんなモテないけど。今日は、同期の飲みで愚痴ろうと思って来たからさ」 「ああ、そうなんだ。いいよ、愚痴聞こうか?」  イケメンはクスクス笑う。  なんか、ちょっと高瀬っぽい。  なんだろ、座ってるだけだけど、姿勢が綺麗。 「――――……モデルとかそういうの、やってた?」 「え、何で?」 「……なんとなく姿勢が……」 「姿勢?」 「姿勢が綺麗かなーって思って。知ってる人となんか似てるから」 「ふうん…… 鋭いね」 「あ、やってた?」 「うん。高校から大学までね」 「……やっぱりそうなんだ」  おお当たった。  高瀬となんか似てるっていう理由だけ、だけど。   「オレ、|須長 翔真《すなが しょうま》。名前、なに?」 「んー、オレ、織田……」  ……はー、眠くなってきたな。  あくびをかみ殺してから、背伸びをする。 「ごめん、今週寝不足でさ…… 結構飲んだから眠くなってきちゃった」 「いいよ。さっき日下に、大変だったって聞いたし」 「あ、日下と友達なの?」 「まあ、ビル内の合コンで会って、だから今回も誘われたってかんじ」 「須長、でいい?」 「うん。織田、なんか飲む? 知り合った記念に飲もうよ」 「――――……はは、オレと知り合った記念?」 「うん」 「女子とやったら?」  クスクス笑って答えると、メニューを渡された。 「何飲む?」 「んー……ノンアルの……」 「ノンアル?」  突っ込まれて、苦笑い。  うーん、眠いんだけどなー……。 「――――……じゃあ、カルーア飲む」 「甘いやつ好き?」 「うん。たまに飲むと美味しい」 「分かった」  頷いて、店員に頼んでくれる。 「……須長は良い子居たの?」 「うーん……今回は無しかな」 「そうなんだ」 「織田は?」 「……オレもなし――――……あ。」  机に置いといたスマホが震えだした。  高瀬だ。 「ごめん、電話してくるね」 「ああ」  立ち上がりながら、電話に出る。 「……あ、高瀬?」 『ごめん、さっき話してられなくて』 「全然平気……今は大丈夫?」 『うん、大丈夫』  店の外に出て、店の壁にまた背をついた。  あー、オレ、大分回ってるかも。  疲れてるから余計かなー……。 『織田ちょっと酔ってるだろ。しゃべりかた、可愛くなってるけど』 「――――……なにそれ」 『可愛くていいけど…… オレ居ないから、もうその辺にしといて』  高瀬の声が、電話越しでもすごく優しくて、ふ、と笑ってしまう。 「高瀬ー…… すっごい、会いたい、なー……」 『――――……やっぱり、酔ってるだろ』  クスクス笑う、優しい声。ほんと、高瀬の声、好きだなあ……。  まあ、ちょっと酔ってるけど。  ……会いたいのは、ほんと。  声、聞いてると、めっちゃくちゃ、会いたい。

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