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◇金曜飲み会*圭 8

 なんかあれだなー。  皆って、高瀬がオレを構ってるって、すごい言うんだよな。  ……そういえば、太一先輩にもなんか言われたしな。  でもほんとは、むしろ大好きすぎて近寄ったのは、オレなんだけど。   高瀬が目立つから、高瀬の方ばっか言われるのかなあ。  そんな事を思いながら、ふと気づくと、隣でメニューをまた見てる須長。思わず苦笑とともに、「まだ飲むの?」と聞く。 「なんか一緒に飲む?」 「もういいよー。つか、強いなぁ、酒」 「織田だって、眠いのは疲れてるだけで、強いんじゃないの? 結構オレと同じくらい飲んでる気がするんだけど」 「昔から、なんかよく飲まされたから。強くなったかも……」 「はは、分かる。飲ませたくなるよね、織田」 「……分かんなくていいし」  苦笑いしながら言うと、須長が可笑しそうに笑う。   「……さっきから聞いてるとさ。高瀬とそんな仲いいの?」 「んー……まあ同期で唯一、同じチームってのもあるけど」  んでもって、一目惚れの相手で。  ……今は、付き合ってるから。とっても、仲良しだけど。 「ふうん。ていうか、そういうのさ、モデルの頃のあいつと、なんかイメージ違うんだよね」 「ん? なにが?」 「そんな。男の世話やくようなタイプじゃなかった。とにかくすげー女にモテてたけど」 「……そうなんだ」  ……まあそうだと思うけど。  ――――……会ってみたかったなあ、高校生の高瀬。  絶対カッコいいに決まってる。  でもなんか、このままだとまた、高瀬がモテてた話になってしまいそうで、ちょっと聞きたくないので、逃げる事にして、立ち上がった。 「……ごめん、オレ、ちょっとトイレ、行ってくる」  立ち上がった途端。 軽く、くら、と揺れる。机でちょっと支えると、須長が見上げてきた。 「大丈夫? 織田」 「うん、へーき……」  須長に答えて、トイレに向かう。  用を済ませて、鏡の前に立つ。  はー……顔、ちょっと赤いな。  ――――……結構飲んだかもなあ。まあ。久しぶりで楽しいけど。  もうすぐ22時か。お開きんなるな……。  22時になったらタクシーで帰って、お風呂入って、早く寝よ。  で、明日は高瀬に会える。  ――――……席に戻ろうと思った瞬間。くら、と視界が揺れた。  うわー、ちょっと……いや、かなりクラクラする。  だめだなこれ。戻ったら、水、がぶ飲みしとこ。  鏡の前に手をついて、は、と息をついてると。  トイレのドアが開いた。 「織田、大丈夫?」 「……? ……あ、須長……」 「さっきふらふらしてたし、戻ってこねーからさ」 「ありがと、大丈夫」  ――――……あ。そうだ。  2人になんないで、て言われてたんだった……。 「平気だから。席、戻ろ」  と、急いだせいで、また、ふらついた。 「……わ……」 「っと……」  真正面から、支えられてしまって。 「……っと――――……マジで、ごめん……」  腕に手をかけて、まっすぐ、立ち上がろうとした、その時。   「なあ、織田ってさ」 「……?」 「……高瀬と付き合ってたりしてんの?」 「――――……は?」 「違う?」 「何それ、どこから、そんな……」  びっくりしすぎて、間近の須長を、ただ見つめてしまう。 「その反応って、どっち? ただびっくりしてんのか、当てられてびっくりしてんのか」 「……そんな事を聞かれる事に、びっくりしてる」  言ったら、須長は、ぷ、と笑って。  固まってたオレの腕を取って、よいしょ、とちゃんと立たせてくれた。 「悪い……」 「いーけど。 そんな風になるから、高瀬が心配するのか?」 「……はは。 そうかも。最近酔うと、足に来る…… 年??」 「年って。高瀬と同じ年だろ? てことは同じ年じゃねえの? え、留年とかですごい年上だったりする?」 「……んな訳ないじゃん。そう見える?」  そう言うと、須長は可笑しそうに首を振った。 「見えねー。つか、年下に見える」 「何だよ、それ……」  ぷ、と笑いあった瞬間。  トイレのドアが開いた。  何気なく、そっちを見て、固まる。 「――――……え」  すごくすごく、会いたかった人が。  ……高瀬が。  すごく、急いできた、みたいな態で、立っていた。   「……たか、せ……?」 「織田――――……」  オレを見た瞬間、高瀬は、ほっとしたように、笑った。 「……高瀬……? なんで……」  一歩、進んだ瞬間、がく、と足から力が抜けて。  次の瞬間。  ――――……高瀬の腕に、抱き止められてしまった。

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