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◇高瀬がご機嫌*圭

 なんか。高瀬がめっちゃご機嫌だ。  ドライヤーを掛けてくれながら、鼻歌、歌ってる。  ……歌ってるなんて、珍しいなー……。  笑ったら止めてしまいそうなので、オレは黙って、目を閉じていた。 「ん、おわり。オレも乾かしたらすぐ行くから、織田は先行って水飲んでて?」 「オレも、高瀬の髪乾かしたい」 「今度でいーよ。結構飲んでたのに風呂であんな事しちゃったからさ。ちょっと心配だから、水飲んで座ってて」 「……ん、分かった」  どうやら本当に心配してるっぽいので、素直に聞く事にした。  先にリビングに来て、コップ2つ。氷を入れて、水を入れた。  テーブルに置いて、椅子に腰かけた。 「――――……はー……熱い……」  ぱたん、とテーブルに伏せる。  なんか、体の中が、まだ、熱い。  ――――……久しぶりに、高瀬に会って。触れられて。  頭ん中、しびれたまんま、なんか、ぽわぽわ浮いてるみたいな。  ……絶対、酒のせいだけじゃない。ていうか、ほぼ高瀬のせい……。  顔を起こして、冷えた水を喉に流し込む。  ……おいしー……。  はー、と息をつく。 「オレのも水入れてくれたんだ」  高瀬が現れて、隣に座った。 「ありがと」 「うん」  隣で水を飲んでる高瀬を見つめて。  あんまり見すぎも変かな、と、自分も水を飲んだ。 「――――……やっぱり泊まらないで、帰ってきて良かった」 「……うん。帰ってきてくれて、良かった」  ふ、と見つめあって。なんだか嬉しくって、ニコニコしてしまう。 「高瀬が会社に居なくて、ほんと、なんか、つまんなかった」  そう言うと、高瀬はくす、と笑った。 「……オレも。すごく、会いたかった」 「――――……大変だった?仕事」  そう聞くと、高瀬は苦笑い。 「うん。結構大変だったね……。経験もある出来る人達ばっかり集められててさ。オレなんか、話についてくのに必死」 「高瀬がそんなんだと、オレ絶対行っても 役に立たなかったよね」 「そんな事はないよ。来てたらやる事はあるんだよね。ただ、何をどーするっていう話には、なかなか参加できないってだけ。指示は飛んでくるから、やる事はかなりあったよ」 「そーなんだ……」 「織田が居てくれたら、オレもうちょっと、和んで出来たと思うから。オレの為だけでいいから居てほしかったなあ」  そんな風に言われて、思わず笑ってしまう。 「――――……なにそれ。オレがいるとそんなに和む?」 「織田が隣に居るだけで、どんな大変でも、和むから」  なんか嬉しくて、ますます笑顔になってしまう。 「……まあ、織田が来て和むのは、多分オレだけじゃないけど」 「……ん? 何それ? 他に誰が和んでくれるの?」 「んー……結構色んな人かな」  クスクス笑ってる高瀬に、「そうかなあ……オレが居たらうろたえてて、イライラされそうだけど……」と、首を傾げつつ。 「あ。高瀬、またモテてた?」 「――――……またって……」  高瀬は苦笑いしながら、オレの頬を、ぷに、とつまんだ。 「……心配しなくてほんとに平気なんだけどね……」  優しく言われるんだけど。  頬をぷにぷにされるがままにしながら、続けて聞いてしまう。 「食事誘われたりした?」 「……まともに食事してないのに? 食べて戻る、みたいな感じだし、夜は渡先輩とさっさと食べてすぐホテルだったし」 「あ、そっか。 ……じゃあ、連絡先聞かれたり……」 「あー……連絡先は聞かれたけど」 「むー……」 「教えてないよ。うまく断ったし。ていうかさ」  クスクス笑いながら、頬から顎に手がうつって。  顎をくい、と引き寄せられた。 「――――……それって、本気で心配してんの?」  じ、と見つめられる。 「……んーと。……少しだけ……心配してる」  ぷ、と笑った高瀬に、ゆっくりと、キスされる。

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