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◇妄想よりも*圭

「変な心配しなくていいのにな」  クスクス笑われて、見つめられてしまうと。  もうそのまま素直に頷いてしまいたくもなるけれど。 「んー……でもさ? すっごい高瀬好みの、すっごい可愛い子だったらとかさ。電話番号くらい交換しといてもいいかなーって思って。 そしたら、連絡が来てさ。それで、まあ少しくらい会ってもいいかーってなってさ、そんで、そこから……少しなら、とかさ。そういうのならあるかも……とか……」  途中からもう、面白そうな顔をしてオレを見ながら聞いていた高瀬。 「はは。すごい妄想、長いな?」  そう言って、可笑しそうに笑うと、オレにキスしてくれる。  柔らかく触れて、ゆっくりと、離れる。 「――――……オレ、バカみたいに、織田に好きって言ってるだろ?」 「――――……」    ……バカみたいに好きなのは、オレの方だと思うんだけど。 「……オレが、織田の妄想みたいにしたら、嫌だろ?」 「……うん」 「もしそれ、オレがしたら、んで、それがお前にバレたらさ」 「……」 「泣く? ――――……別れるって言うか?」 「――――……」  黙って、見上げてると。 「どっちにしても、オレが、織田とまっすぐ向かい合えなくなるのは絶対に嫌だし」  ちゅ、とキスされる。 「絶対しないよ」 「――――……」  こんな事言ってしまって、なんでも許されるとか思われたら悲しいから、言わないけど……。  ――――……もしさっきの、妄想通り、高瀬がたとえばご飯とか、行っちゃっても。それで、その先までもしかして、進んじゃったとしても。  ……オレ、別れるとか……言えないと思うんだけど。  そんな簡単に、別れたいなんて……絶対、オレ、言えない。  離れたくないもんなー……。    そんな風に思いながら、高瀬を見上げていると。 「ていうかさ。 ずーっとオレんちに居させて、土日も一緒に居て、出社も一緒で、ランチも一緒で、仕事中もずっと隣だし、帰りも一緒で、帰ってきたら、オレお前に触るのにさ」 「――――……」 「お前のその妄想、どこに入る余地があんの?」  ……確かに。  ……どこにあるんだろ。 「……無いだろ?」  高瀬にクスクス笑われて、うん、と頷く。    確かに。  少なくとも、今は無さそう。  無さそうって、思える位。  高瀬はいつもオレを大事にしてくれている、気がする。 「――――……高瀬」 「ん?」 「……すっごい、好き」 「――――……」  言った瞬間、ん?という顔をしてから。ふわ、と笑う。  ああ。ほんとに。全部カッコいい。  なんなら、オレに触れてくる、その指すら、綺麗で本気でカッコいいと思ってしまう。 「……なに、急に?」 「――――……なんか急に思って。 変な心配してるより、大好きって言った方がいいかなって」  じ、と見つめて、そう言ったら。  ますます、目を細めて笑ったと思ったら。 「こっちおいで」  言われて、腕を引かれて、抱き締められてしまった。  すごい密着して、よしよし、と後頭部を撫でられる。 「ほんと――――……その方がいいな」 「うん」 「オレも、そうする事にする」  笑いながら、そんな風に言ってくれる。

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