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◇おそろい*圭
「……明日プラネタリウム見て、なんか美味しいもの食べて……」
「うん」
オレの髪の毛、さらさら撫でながら、高瀬がゆっくり喋ってる。
……こんな幸せって、あっていいのかなー……。
しかも話してる事が、明日の、デートの予定とか。
もうオレ、今この瞬間、世界中で間違いなく一番幸せって、言えるかもしれない……。
「……織田、何かしたい事ある? 買い物したい、とか」
高瀬と居れればなんでもいい。
咄嗟に思うんだけど、さすがにどうかと思うので、んー、と考える。
「……なんだろ。んー…… 何でも、いいけど……」
「ん」
「買い物……あ。高瀬と、おそろいの何かが、欲しい……かな」
「――――……」
あ。お揃いとか、重い??
そういうの嫌かな、高瀬。 クールだからな。お揃いだーわーい、とかは絶対言わない気がする。
「……あ。あの。コップとかさ。何でもいいんだけど。 なんかあの……なんだろ。……ちょっと今、急に思って言っただけなんだけど」
無言の高瀬に、ちょっと焦って、言い訳してると。
高瀬が、ごめんごめん、と笑った。
「可愛くて固まってただけ。 しかも、何をお揃いにしようとか、咄嗟にすんごく考えてて、それで黙ってただけだから」
可愛くてって。めちゃくちゃ普通に言われたけど。
恥ずかしい……。
ぎゅ、と抱き寄せられて、額にキスされる。
「――――……ていうか、そんなの焦って言い直さなくていいのに。 オレが、織田とのおそろい、嫌がると思う?」
「……んーと…… ていうか、なんか黙っちゃったから、咄嗟に、言い訳しちゃっただけ」
「バカだなー……。……織田ってさ、まだまだ、オレがお前の事を大好きなの、分かってないよな」
さらさらとそんな事を言われてしまうと。
すごく恥ずかしい。
……だいすき、だって。
………………大好き。
じーんと、密かに浸っていると。
「お揃いか……。 何がいいかなー…… 考えながら寝よっか……」
優しい声が、そう耳元で囁く。
「――――……うん」
よしよし、と撫でられて。ふふ、と笑ってしまう。
瞳を伏せると、額に、高瀬の顎が触れてて。
男にこんな風に抱き締められて寝るとか。
……それがこんなに幸せとか。
高瀬に会うまで考えた事なかったけど。
――――……今は、ほんとに、これが、幸せで。 ……不思議だけど。
――――……高瀬 ……あったかいなー……おそろい。
……何がいいかなあ……。
「身に着けるものとかは?」
「……んー……でも会社につけてけないし……」
「普段使うものかなぁ……」
「そうだねぇ……なんだろうね。って自分が言ったのに、何も決まってなくてごめん……」
言うと、高瀬はクスクス笑って、オレをぎゅ、と抱き締めてくる。
「明日、色々見て回ろうな」
「ん……」
どーしてこんなに優しいんだー。
もう……高瀬と居れなくなったら、もう寂しくて死んじゃいそう。
……って、うさぎか、オレ。
……あれ?
……うさぎって、寂しいと死んじゃうって……都市伝説なんだっけ……?
……んー……うさぎ……。…………。
何故かうさぎの姿を思い浮かべながら。
瞳を伏せて、暖かさに包まれていたら、
そのまま、眠ってしまった。
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