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◇ドライブ*圭
朝起きたら、結構な土砂降りで。
ご飯を食べ終わっても全くやむ気配がないので、高瀬が車を出してくれる事になった。
「プラネタリウムが入ってるビルの駐車場が広いみたいだから、もうそこに入れるから」
「うん。ありがと」
「ん」
高瀬の運転姿がまた見れる、と、内心大喜びで。
助手席に乗り込んで、シートベルトをして、ふ、と高瀬に視線を向ける。
シートベルトを斜めに掛けてる姿すら、もうそれだけで、カッコいい。
……何なのかな、高瀬。
ほんとに、カッコ良すぎる……。
かち、とシートベルトをはめたところで、高瀬は、ふとオレを見つめてきて。
ぷ、と笑った。
「何でそんなに嬉しそうに見てんの?」
「……え。……いや……」
「……なに?」
クスクス笑われて。
何でもない、と小さく答えて、真正面を向いた。
「――――……キスしたくなるんだけど」
「え」
咄嗟に、運転席に視線を戻すと。
高瀬が、優しく笑って。でも、ちょっと困ったみたいな顔をしてて。
「――――……そんな嬉しそうに見られるとさ」
「――――……」
「……すげーキスしたい」
そんなまっすぐ言われると。
恥ずかしすぎて、どーしたらいいか分からないんだけど……。
高瀬は、すぐ、ふー、と息を付いて。
「……さすがに自分のマンションの駐車場では、誰が通るか分かんないし、できないけどさ……」
手を伸ばしてきて、ぶに、と頬を挟まれて、唇を少し突き出される。
「……あとでキスさせて」
「……っ」
かあっと、赤くなりつつも。
うん、と頷く。
すると、ふ、と微笑んで。
親指で、唇に、最後に触れて、離される。
「……っっ」
――――……なんか。
キスのかわりみたい。
ますます顔、熱くなってしまう。
少し俯いてると、エンジンがかかって。高瀬が車を発進させた。地下の駐車場から外に出て少し走った所で、高瀬がワイパーを速めた。
「ほんとかなり降ってるな……」
「……うん」
「……? どした?」
運転しながら、ちら、とオレに視線を流してくる。
……どしたじゃないよ、もう。
……もうさ。オレ、ほんとに高瀬、大好きなんだよ。
もちろんさ、中身も好きだけど。でも。
普通に女の子にしか興味なかったオレが、一目惚れしちゃったくらいカッコ良すぎでさ。しかも……その人が、めちゃくちゃ優しい瞳で、オレを見てくれて、キスしたい、とか。それで触られちゃうとかさ。
……もう、オレだって――――………すっごい、キスしたくなっちゃうし。
……ていうか、昨日お風呂場も含めて、結構色々したし、
朝も、やたらキスされながら、家を出たのに。
はー。なんだかなーオレって……。
「……織田?」
高瀬の左手が不意に伸びてきて、オレの右頬に触れてくる。
目線は前なので、高瀬の横顔を、じっと見つめてしまう。
「――――……織田もキス、したくなっちゃった?」
すり、と撫でられて。
ゾク、と背筋に何かが走り。
何も答えられない。
そっと手が離れて、高瀬がハンドルを両手で持ち直した。
もうさ。だからさ。すっごいドキドキしちゃうんだけど。
――――……オレ、もう、また心臓が……。
高瀬にドキドキしなくなる日なんか、永久に来ないと思ってしまう。
はーもうだめだ。
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