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◇キス*圭

 ……雨、ほんと、すごいな……。  窓に打ち付ける雨を、ぼんやりと眺めていたら。  ハザードランプの音がして、車が路肩に止まり、不思議に思って、高瀬に顔を向けた。かちん、とシートベルトを外した高瀬に引き寄せられて、え、と思った瞬間、唇が重なった。 「……ん、ぅ……っ……?」  舌を絡められて、ぎゅ、と目をつむる。 「……ン……っ…… ちょ――――……たか、せ……」  唇を離して、車外に目を向けると。 「大丈夫。雨で中、見えないし。人そもそも歩いてないし」 「――――……」  ……確かに、そうかも。  ワイパーも、止まってるし……雨がフロントガラスを流れていく。 「……――――……キスしよ、織田」  高瀬が、オレのシートベルトを外した。  すっごいドキドキする中。  本格的に引き寄せられて、唇を塞がれた。 「――――……っ……ん……」  あ――――……もう。 「……たかせ……」  ……好き過ぎて、オレ。  ………やばい。 「……た、かせ……」  高瀬の首に手をかけて、ぐい、と引いた。  いつも勝手に奪われてく舌を、自分から高瀬の口に挿し入れて。  熱い舌と絡めてみると。  すぐにめちゃくちゃ深いキスで、返される。  長いキスが離れて、高瀬が、ふ、と瞳を優しく細めた。 「……珍し、織田」 「……だって……」  ……すげー好きなんだもん……。   「……なんか――――……たちそう。やばい」 「たちそ……って…… え」  高瀬の突然の言葉に一瞬呆けて、繰り返した途中で気づき、その後、かああっと赤面して俯く。  わーばか、何でオレ、今繰り返したんだ。恥ずかしすぎ……。 「はは、ほんと ――――……その反応、やばいなー……」  笑いを含んだ声がして。  顎を取られて上向かされて、またキスされる。 「――――……オレ達、もっとヤバい事、いっぱいしてンのに」 「……っ……」 「――――……なんで、こんな一言で、そんな恥ずかしがるかなー……」  もっとヤバい事、て言葉にすら、ますます恥ずかしくなっていく。  何でって。……何でって決まってるじゃんか。 「……織田、も少し――――……」 「……っ――――ン、ン……」  めちゃくちゃキスされる。  大好きすぎるから、だし。 「――――……っ……」  ……雨の音がすごいし、  外からは見えないかな……とは、思いながらも。  でも、のぞき込まれたら分かんないし……とも思うんだけど。  だめだ。  ……好きで。……キス、止めるの、無理。  何で、そんな一言で、恥ずかしがるかって、決まってるし。  顔も、声も、手も、ていうか、高瀬のどこもかしこも全部好き過ぎて。  ……見つめられただけで、恥ずかしいのに。  たちそう、とか。  オレ、ちゃんと成人の男だし。  今迄だって、そんな冗談言う奴いくらでも居たし。  どーでもいい奴が、何かのタイミングでふざけて言ったって、  赤くなんか、なったりする訳ない。  耐性がない訳じゃ、全くない。  なのに。  高瀬が相手だと、無理なんだよー……。  マシで、無理。    高瀬、もうちょっと自分の色んな破壊力を分かってから、言ってほしい。  特に、オレに対しての、破壊力……。  思わず恨めしく思っていたら。  ゆっくりキスが、離された。 「……すげー好き、織田」  くしゃくしゃと頭を撫でられて。  最後に頬にキスして、離れていく。 「これ以上したらほんと無理だから、やめとく」 「……っ」  オレ……正直、今、無理だけど。  体、むちゃくちゃ熱いし。  すげー好きって何。  ……ああもう。  何か、冷める事考えよう。  冷める事……。  なんだろ冷める事……。 「――――……」  ……すげー好きって。恥ずかしいけど。  ……嬉しいなあ。    ……とか、もう駄目だ。全然冷めない。

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