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◇お揃いのもの*圭

 高瀬の心地いい運転で、もう目的地のすぐそば。  高瀬とデート。  プラネタリウムでデート。  めちゃくちゃ幸せなんだけど、どうしたら……。  ウキウキしてる自分をどうにか落ち着かせないとと思っていたら。 「なあ、おそろい、何にする?」 「ん?」 「おそろいのもの、何がいいかずっと考えてたんだけど……」 「考えてくれてたの?」 「ん。何の店行こうかとか……考えてたんだけどさ……」  ……あぁ。嬉しいな。  ……オレが高瀬見て、ただウキウキしてる間に。  オレが言った事、ちゃんと考えてくれてたんだ……。 「織田はさ、身に着けるものが良い? 持つもの?」 「――――……」  身に着ける。  …………身に着けるもの。 「……ごめん、高瀬、身に着けるものって、もう1こしか浮かばないんだけど」  そう言ったら、高瀬は、ぷ、と笑った。 「それでもいいけど」  いいの? と高瀬の方を見ると。  その視線に気づいてて、こっちは見れないんだけど、高瀬は笑ってる。 「いいんだけどさ。つけれないじゃん? まだ皆に発表する気はないだろ?」 「そうだね」  発表って、と苦笑い。  会社で発表はちょっとなあ……。 「どうせお揃いなら、使いたいよな」 「うん。そうだね」 「ビルにたくさん店入ってるから、ぶらぶらしながら見てもいいけど」 「うん。そうしよう」 「――――……」  会話が途切れた時。  高瀬が、ふ、と静かに笑った気配がして、ん?と、高瀬の横顔を見やる。  ……笑った?? 「……あ、ごめん」  高瀬が左手で口元を抑えた。 「――――……??」  更に、クスクス笑って。 「なんか――――……自分がお揃いのもの、買おうとしてるのが」 「……?」 「……なんか可笑しくて」  ちょうど信号が赤になって、車が止まる。  高瀬が、クスクス笑いながら、オレに視線を流した。 「お揃いを買おうなんて、真剣に考えるの、初めてだからさ」 「――――……」  そ、そうなんだ。  ……でもまあ確かに、高瀬が、お揃いだーわーいって言ってる絵は、浮かばない。  オレ、女の子に言われるまま、キーホルダーやらタオルやら、なんかお揃いって今まで結構持ってきたかも。しかも、あの頃はそれなりに浮かれてたなー。学生の頃のノリだし。これは言わなくていいや。  ……オレも。気持ちは、あの頃とは、全然違うし。  なんかもう。  ――――……しみじみ大事すぎて。 「考えるのも楽しいとか――――……すげえ不思議」  何でそんな、優しく。  照れくさそうな顔しちゃったりして。  そのくせ、超カッコよく、流し目しちゃったり、してくるのかな。  もう、心臓が、鷲掴みにされたみたいで。  ドキドキして。  ……っ顔、熱いし。  ずっと言ってるけど。そろそろ、ほんとに、のぼせるとかで、  倒れるんじゃないかなー、オレ……。

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