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◇ばったり*圭

 プラネタリウムは、1時間。  まあ、結構長い。  高瀬にも言ったけど、結構ねむっちゃう子とか、ほんとに居た。  そういうの怒ったりはしないけど。  やっぱり、一緒に見たくて連れて行ってるから、寝られちゃうと、ちょっと残念。  高瀬は、優しく繋いでる手の親指を、なんだか、ずっと、オレの手に優しくスリスリしてて。  星座が、空いっぱいに描き出されたりすると、織田は何座?とか聞いてきてくれて。それあるの?とか。探してくれたり。  なんか。めっちゃ楽しい時間を過ごしてしまった。  プラネタリウム上で、朝日が昇ってきて。空が明るくなって。  明るくなる前に、指が、そっと、離れた。  音楽が流れて、終了。  アナウンスが流れて、非常口や、場内のライトが明るくなった。  背もたれから体を起こして、同じように起き上がった高瀬と、見つめ合う。  なんか暗闇で、ずっと手を繋いでたから。  なんか、すごく、気恥ずかしい。   「どうだった? 高瀬」 「――――……すげー綺麗だった」 「よかったー」  客が皆それぞれ立ち上がり出口に向かっていく。  それを何となく目に映しながら、オレは高瀬を見つめた。 「オレ、高瀬と見れて、すっごく嬉しかった」 「――――……」  ほんとにすごく嬉しかったので、まっすぐ見つめたまま、そう言ったら。  高瀬は、ちょっと驚いた顔をして。  それから、ふ、と微笑んだ。 「……オレも」  高瀬がそう言ってくれて、まっすぐ見つめてくれる。  今まで何人も連れてきたけど。  高瀬と見てるのが、一番楽しくて、幸せだった。   「出よっか、そろそろ」  そう言いながら立ち上がって、んー、と背伸び。 「ブラブラしながら、お昼食べるとこ探す?」  高瀬を振り返ってそう言うと、一緒に立ち上がった高瀬も、そうだな、と笑って。ふ、と不思議そうな顔で、少し下に視線を向けた。 「ん? どうし――――……」 「……圭ちゃん??」  え?  ――――……圭ちゃん?  急に聞こえた可愛い呼び方。  咄嗟にその方向を見下ろしたら。 「圭ちゃん」  え。この、顔。 「くるみ……??」  名前が口をついて、零れた。 「わー、圭ちゃんだー!」  思わずしゃがんだら、わあい、と抱き付いてくる。  すると、すぐに脇からもう1人。 「圭ちゃん!」 「まひろ――――……て、ことは……」  来海(くるみ)真宙(まひろ)に抱き付かれて、それを受け止めながら、周囲に目を向けると。 「おー、圭! 偶然だな!」 「わー、俊兄だー」  兄の、俊也(しゅんや)と、娘の来海と、息子の真宙。 「麻理(まり)さんは?」 「麻理が今日でかけててさ。2人をプラネタリウムに連れてきたんだよ」 「そうなんだー、2人もプラネタリウム好きなの?」 「そう」 「俊兄の子だもんね――――……あ、ごめん、高瀬」  突然現れたちびっこと、俊兄。  ちびっこ2人を見下ろしていた高瀬に呼びかける。 「オレの一番上の兄貴で、俊也兄と……その子供で、来海5才と、真宙4才。で、俊兄、こっちは――――……えっと、会社の同期の、高瀬、だよ」  どちらも紹介すると、高瀬と俊兄が、どうも、と笑顔。 「圭ちゃんのお友達?」  来海が、高瀬を見上げている。  高瀬は、ふ、と笑うと。  しゃがんで、来海をまっすぐ見つめた。 「そうだよ。よろしくね」  なんだかものすごく、優しく、笑う。  来海は、ほわわーーーん、としばし、高瀬を見つめた後。 「だっこ」  と言った。高瀬に。 「「えっ?」」  オレと俊兄は、びっくりして、同じ言葉。  高瀬は、ふ、と笑うと。  ひょい、と来海を抱きあげて、立ち上がった。 「た、高瀬?」 「オレ妹もいるし、親戚の子も結構いたんで……なんかよく抱っこせがまれてたんで、慣れてます」  妹って……絵奈ちゃんは、2.3こ下だから、さすがにだっこはしてないよな? 子供になれてるってことか。  なんか、意外過ぎる……。  ていうか、来海……。 「――――……ねー、俊兄」 「あー」 「来海ってさあ…」 「んー……」 「……イケメン好きだっけ……」 「そー……なんだよなー……」  ひしっと、高瀬に張り付いてはがれそうにない。 「けいちゃん、だっこ」  お、真宙はこっちに来た。  ひょい、と抱き上げる。  変な空間。  オレと高瀬が1人ずつ子供抱っこして、俊兄が手が空いてて、笑ってる。 「すみません、外におねがいします」  係の人に言われて、周りに人が居なくなってる事に気付く。 「とりあえず外で話そう」  俊兄に言われて、高瀬と、ちびっこ抱っこしたまま、並んで歩く。  目があって、ぷ、と笑ってしまった。

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