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◇いい奴*圭

 プラネタリウムを出ると真宙はオレの腕から下りて、展示物の方に小走りしていって俊兄は後をついていった。でも、来海は高瀬の腕から下りようとはしない。 「来海、オレも抱っこしたいなー」 「圭ちゃんには後でだっこしてもらうー」  はは。……高瀬がお気に入りか。  さすが、小さくても、女子。イケメン好きかな。 「平気? 高瀬」  来海、ずっと抱いてると結構重いけど。  思いながら聞くと、高瀬は、ふ、と笑った。 「まだ大丈夫だよ」  そこへ、走っていった真宙を捕まえて抱っこしたまま、俊兄が戻って来た。  そこで、ふっと気づいたように、俊兄が高瀬を見て、笑った。 「ああ、君、あれか。圭と旅行に行ってた?」 「あ、はい」 「なんかどっかで見た事あるなーって思ってたんだけど、あの写真か。美久が騒いでたやつ」  旅行先から兄弟ラインに入れた高瀬とのツーショット。 「良く覚えてたね」 「美久が騒いでるから、うちでその写真見て、ああなるほどって、笑ってたから。そういやそん時も、来海は、カッコいいお兄ちゃん、て言ってたな。好みなのかな、君の顔」 「ていうか、高瀬の顔、好みじゃない女子いるかなあ」  と、ついつい本音で言ってしまうと、俊兄が、オレを見て、ぷっと笑った。 「お前も好みなんだな、高瀬くん」 「え、いや、そういうことじゃなくて……一般的に……」  もごもご言い訳してると、俊兄の腕の中が我慢できなくなった真宙が、またちよっと暴れて、降ろしてもらい、また展示の所に走っていく。俊兄が行ってくれて、ほっとしてると。 「織田……」  高瀬が、今のやり取りに、クスクス笑ってる。 「ごめん……」 「別にオレ、織田がいーなら、言ってもいいけど」 「――――……ありがと。でもまだ……」  心の準備がなー……。  そう言うと、高瀬は「オレはどっちでもいいから」と笑ってから。 「来海ちゃんも、あっち見に行く?」  高瀬が聞くと、めちゃくちゃ嬉しそうに頷く。 「うん!」  来海、まあ、いつも可愛いんだけど。  ……なんか、女子の顔してる。気がするのは、気のせいか?  もうちょっといつも暴れまわってる気がするのに、なんか高瀬の腕の中で、ちょこんとおとなしくしてる。  来海を抱っこしたままの高瀬とともに、展示コーナーを進むと、俊兄と真宙を発見。 「高瀬くん、ごめんな。来海、分かるけど、そろそろ降りろよ?」  クスクス笑って、俊兄が言うと、来海はぷるぷる首を振ってる。 「来海ももうおっきくなってるんだから、高瀬お兄ちゃんが、疲れちゃうぞ?」  そう言うと、来海は、んーーー、と一生懸命考えてる顔をして。  よいしょと、降りる格好をした。 「来海、良い子だなー」  しゃがんで、よしよし撫でてやる。 「優しいなあ、来海」  笑顔で言ってやると、うん、と嬉しそうに笑って、来海はオレと手を繋いだ。そのまま、もう片手を、高瀬に差し出す。  高瀬は、くす、と笑って、その小さな手と、手を繋いだ。  来海を真ん中にして、オレと高瀬が挟んで。  その姿を見て、俊兄が可笑しそうに笑う。 「来海、こないだ圭に会いたいって言ってたんだよ。大好きだからな、お前のこと」 「でも今日は高瀬に抱っこしてたけどね」  ぷぷ、と笑ってそう言うと、俊兄は、「一目惚れかな、来海」とクスクス笑う。 「良いの、父親として。娘の一目惚れとか」 「んー……」  と言いながら、俊兄は高瀬を見て。 「まあ、見る目があるなーと、感心はする」  クックッと笑いながら言い、オレに視線を向けてくる。 「圭が旅行いったり、プラネタリウムに来たりする程仲良いってことは、いい奴なんだろ?」 「……うん」  ふ、と笑んで、頷く。  ほんとはもっと、うんうん頷きたいんだけど。  ちょっと高瀬の前だから、恥ずかしい。  

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